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まず、目標を立てよ。逆算して達成する方法を見つけだせ

プレジデントオンライン / 2015年7月7日 16時15分

ローソン 玉塚元一社長

■背後にある真の姿を把握・理解せよ

1998年から2005年にかけて、私はユニクロ(ファーストリテイリング)にお世話になりました。この7年間は私にとって、柳井正さんのもとで彼流の経営について叩き込まれた時代でした。

出会いは、衝撃的なものでした。

旭硝子を退職し、日本IBMに転職した98年、私が経営コンサルタントとしてファーストリテイリングに、コンサルティング業務のプレゼンを行った時のことでした。逆に、柳井さんは私に、経営の本質について説明を始めました。

小売業の経営は、ひたすら現場を歩いて、できるだけ正確な情報を得ること、出てくるあらゆる数字から、その背後にある真の姿を把握・理解することを怠ってはならない。巷間でもてはやされている経営理論やセオリーで、経営がうまくいくなんてことはありえない──と、断言しました。

その迫力と説得力に私の心は揺さぶられました。結果、入社からわずか4カ月で日本IBMを退社し、ユニクロに入社することになったのです。

柳井さんは驚異的な読書家で、経営書を中心に毎月2冊くらい「これ、読んでおいて」と、私に手渡しました。ほぼ毎月です。その中の一冊が、ハロルド・ジェニーンとアルヴィン・モスコーの共著の『プロフェッショナルマネジャー』(プレジデント社刊)でした。私はむさぼるように読みました。本を汚してはいけないと思い、すべてコピーして読み込んだことを今も覚えています。

ジェニーン氏は自著の中で、成果こそがすべてであり、結果を出すことだけが「経営」という名に値するものだと書いており、そのためには現場の状況を把握し、上がってくる数字を読み解く努力を惜しんではならないと言っています。

また、本を読むときは、初めから終わりへと読み進むが、ビジネスにおける経営はそれとは逆で、終わりから始めて、そこに到達するためにできる限りのことをすることだとも言っています。

これは、まず目的を見据えて、そこに達するための目標を一つずつクリアしていくことが肝要だという意味です。

ジェニーン氏の『プロフェッショナルマネジャー』は、私にとって経営の指針を示す一冊であると同時に、柳井さんから学んだことを想起させる貴重な書物でもあります。そして、プロフェッショナルマネジャーとは、私が目指すべき永遠のテーマでもあります。

■積極性と素直な心を持ち続けること

私の大学時代は、明けても暮れてもラグビー漬けの毎日でした。卒業後、旭硝子に入社して10年が過ぎた頃のことです。社費留学の機会を得て、アメリカのケース・ウェスタン・リザーブ大学経営大学院に行く機会を得たのです。

目標はMBA(経営学修士)の資格を取得することでしたが、勉強だけに集中する機会があまりなかったこともあり、目にするもの、耳にするものがことごとく新鮮に思えました。そこで、経営学に限らず何でも吸収してやろう、何でも飲み込んでやろうという気持ちで臨むことにしたのです。

同時期に企業から派遣された人はたくさんいました。銀行員や商社マンなど、すでに多くの経営の知識を備えている人がほとんどで、「既に学んだことだ」「ネットプレゼントバリューなんて、本当に役に立つのか」といった感じで、斜に構えている姿の人もいました。

『プロフェッショナルマネジャー・ノート2』ハロルド・シドニー・ジェニーン著・玉塚元一解説(プレジデント社刊)

私自身は必死になって、疑問点は質問し、機会があれば躊躇なく発言するうちに、自然とさまざまな情報がまわりから集まるようになり、教授陣からの信頼を勝ち取ることもできました。

限りない積極性と素直な心を持ち続けること……まわりを巻き込み、ともに前進するためには、これこそが必須の条件なのです。

私は幼い頃は積極性に欠けたところがあり、自分に自信が持てませんでした。なんとか心身を鍛えてひとかどの人物になりたい……誰でも願うことです。そこで中学時代からラグビーを始め、慶應義塾大学在学中には肉弾戦の最前線の一つであるフランカーとしてレギュラーメンバーになりました。幼い頃の課題はラグビーを通じて解消することができました。

大学卒業にあたり、海外勤務のできる企業に就職することを決めました。国内で経験を積むのも一つの道ですが、若いうちにまず外国に出て見聞を広めたいと思ったからです。社員数や新卒採用数、どのような人材が集まる企業かを調べるうちに、旭硝子なら海外勤務も可能だとの結論を得て、1985年に入社しました。そして、89年にシンガポールに駐在となり、東南アジアの国々を駆け回る生活を送りました。まず、目標を立て、目標から逆算して、それをクリアする方法を考える……これは58四半期連続増益の企業をつくったジェニーン氏が繰り返し実践してきた手法であり、ユニクロの柳井さんに叩き込まれた考え方ですが、思い起こせば生来、私はそうしてきたと感じます。

目標に向けてチャレンジするのは苦しいことですが、そこにこそ学びがあり、新しい出会いがあります。そこにリスクを感じても、オポチュニティコストと受け止め、チャレンジするほうを選ぶよう心がけています。

■「事実をつかめば、勝負あり」

ジェニーン氏は、経営者の存在意義は成果のみだと言っています。そのためには、ハードワーカーになり、現場重視は当たり前のことなのです。ジェニーン氏は机上の空論に陥ることを恐れて、わざわざヨーロッパの現場に出向いて、現場の人と膝を突き合わせて議論し、現場の匂いや独特の感覚を把握しようと努めました。

ジェニーン氏は、経営は鍋の中でスープをつくるようなもので、ずっと見ていなければ思うようにいかないと言っています。確かに、日々発生する事実をつかみ、次の経営へと活かしていく……その積み重ね以外に、成功する経営法などないのです。柳井さんは、「事実をつかめば、勝負あり」といったことを、よく話していました。

かつて私がユニクロでお世話になっていた頃、柳井さんは、寝ても覚めても経営のことを考えていて、縦・横・斜めに数字を眺め、その背後にあるものを把握するための労を惜しみませんでした。こうした姿勢を私に見せ続けていたのは、「がむしゃらに仕事しろよ」というメッセージだったと思っています。徹底的に教えられたことは、「経営者は経営をしろ」ということです。

経験のみが成長を後押ししてくれる……まさに実感です。その意味で、柳井さんから薫陶を受けたことは、私の宝であり財産です。

※本連載は書籍『プロフェッショナルマネジャー・ノート2』(ハロルド・シドニー・ジェニーン著・玉塚元一解説)からの抜粋です。

(ハ-ツユナイテッドグループ社長 CEO 玉塚 元一)

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