【情報収集】敏腕ストラテジスト「驚異の90分ノート術」

プレジデントオンライン / 2015年7月13日 14時15分

三菱UFJモルガン・スタンレー証券 参与 投資情報部長 藤戸則弘氏●1979年、早稲田大学卒。約20年にわたって生命保険会社で資産運用業務に従事。国際証券などを経て2010年より現職。

周囲よりも多く成果を挙げる人がいる。そのためには、日ごろから効率を上げ、結果につながるような努力を続けているに違いない。どんなことを心がけているのだろうか。

■海外の視点で日本市場を読む

投資戦略立案の専門家で、メディアでも引っ張りだこの藤戸則弘さんの1日は、朝5時、枕元に置いたiPadでの情報収集に始まる。

「目覚めてからベッドを離れるまでの10分程度、海外市況サイトを簡単に見ます。前日の予測に対して、イメージ通りだとか予想外な動きがあったなというのを、とりあえずざっくり確認するのです」

藤戸さんの業務は、個人投資家に向けて「どこに何を投資すればいいのか」情報を発信することだ。投資のベースとなる株価や為替、金利、コモディティ(商品)の数字を押さえておく必要がある。担当は国内株だが、朝一で確認するのは、海外におけるこの4つの数字だ。

「従来は国内情報で十分でしたが、今や東証の株式の売買は約6割が外国人投資家で、彼らが東証の動きを左右します。したがって、収集するのも6:4で海外の情報になります」

欧州市場は日本時間では夜中、米国市場は明け方にクローズする。そのため藤戸さんは朝起きぬけに海外市場のデータをチェックするわけだ。大雑把な流れを頭に入れた後は、世界のメーン放送局のニュースが流れるBS放送を流しながら、朝食をとり、出勤の準備をする。

「BSは、一般の地上波テレビでは放映されないような各国の政治、経済、社会、天災などの情報がタイムリーに拾えます。世界が向いている方向や、その国の庶民の関心事を掴むのは、マーケットを分析するうえでは欠かせません。

海外情報は国内ニュースでも放映される場合もありますが、どうしてもタイムラグがある。私にとって情報はスピーディであること、グローバルに見ることが重要です。現地に住んでいる投資家がどういう目で見ているか、つまり外国人の目で日本市場を見ることが必要で、BSにはそのヒントがあります」

■重要数字を頭に叩き込む

こうして自宅で全体的な情報を頭に入れ、6時半に出社してから本格的な分析に取りかかる。ここでもまず押さえるのは海外動向だ。例えばニューヨークダウの上昇値だけではなく、どういうセクターや銘柄が買われているか、あるいは各種経済統計を参照し、その数字がさらに米国の景気拡大を示唆するものなのか、一時的なものなのかなど深掘りしていく。株価であればチャートを確認し、現在の位置を頭の中に入れていく。

このとき、パソコン画面の数字を、大学ノートの見開きページに書き写すのが藤戸流。

毎朝数字を書き込むA4ノート●例えば製造業の景況感を示すISM製造業景況指数など、全体的な傾向がわかる指数はもちろん、業種ごとや個別銘柄ごとの動きをPCで確認しながら、それらを頭に入れるためにノートに書き込んでいく。

「英単語を書いて暗記するのと同じで、書くことによって頭に焼き付けます。あるメーカーの株価は130ドルなどと書きながら、チャートの形や業績の動向、そのメーカー関連のニュースを見て、そこの数字もどんどん書いていく。もちろんパソコンで見ればすぐわかりますが、見た数字が頭の中に入ってないと、具体的な相場観はつくれません」

世界の動向を踏まえた全体像が頭の中にできて初めて、外国人の目で日本企業の業績について具体的な予測が立てられ、そこからさまざまな投資のアイデアが出てくるというわけだ。

■家では一切マーケットを見ない

藤戸さんがこの「書く」ことにかける時間は、朝の約1時間半。ここで「世界の情勢と日本企業」を分析した結果は、各支店の営業担当者などの情報源となる。分析作業が終われば、それをもとに自社サイトに掲載するレポートや経済誌への寄稿原稿などの執筆に取りかかる。

分析や執筆をする午前中は、集中力が必要な時間帯だが、メディアからの問い合わせも多い。特に前日の相場が大きく動いた翌日は早朝から電話が殺到、分析作業と並行しながら対応するため、8時をめどにしている作業の終了がずれ込むこともある。

「執筆の時間は、集中できる環境を確保するようにはしていますが、取材にはできるだけ対応します。メディアを通じて自分の考えを述べることができ、より広く人の目に触れられますから」と情報発信の大切さを語る。とはいえ集中力はとぎれてしまわないのだろうか。

「それはもう、チャンネルを切り替えるのと同じように、強制的に切り替えるしかありません」

突然テレビ局に行くことになれば、どんどん終了時間がずれこむが、仕事は必ず社内で完結させ、家には持ち帰らない。原稿の依頼も、前倒しで受けるようにしている。

一方で、約20人いる部下の出勤管理や各人のレポートの最終チェックといったマネジメント業務もこなす。特に人事考課の時期や、テレビ出演や執筆依頼が増える年末年始は「しんどい」が、何とか時間を調整する。

午後はセミナーや企業訪問など外出が続き、分析内容を、今度は口頭でアウトプットしていく。

このように多忙を極める藤戸さんだが、自宅では、寝る前と朝以外は一切、マーケット情報には触れない。

「24時間気にしていたら、体も精神ももちません。以前は気になったら夜中にパッと見たりしていましたが、眠りが浅くて翌日の業務に支障をきたしました。テレビで株式市場が……と流れた瞬間、チャンネルを替えます。土日もマーケットに関することは一切、自分の頭の中からはずします。ただ日曜日の夕方からは、土日の間に世界で何が起こったのか分析に入ります」

休日は文学や美術など投資とは無関係のジャンルに親しみ、「オンとオフを意図的につくることが、バランスを保つ秘訣」と話してくれた藤戸さんは、最後にこうもアドバイスしてくれた。

「自分が放電ばかりしていてはいけません。インプットの時間も持つようにしましょう」

藤戸さんにとって執筆やセミナー、取材対応などは大事なアウトプットの時間。投資家に必要とされる質のいいアウトプットができるのは、早朝に始まる地道なインプットの時間があるからこそなのは、いうまでもない。

●藤戸さんの24時間

(上)A4ノート見開きに重要な数字を書き写し、頭に叩き込む(下)PRESIDENT誌の取材を受ける

5:00 起床→iPadで為替、金利、株式をチェック
5:15 朝食・出勤準備(NHK BS1「ワールドWave」)
6:30 出社→ノート書き写し、基本シナリオの策定
7:30 電話取材に対応(終日)
8:00 基本シナリオを社内外に伝える
9:00 資料作成、原稿執筆、マネジメント関連の業務
11:30 昼食
12:30 資料作成、セミナー講演、メディア出演、顧客訪問→分析&資料作成
18:00 早ければ帰宅
18:30 入浴→夕食→リラックス・タイム
22:00 iPadで海外市況の確認
22:30 就寝

(江頭 紀子 向井 渉=撮影)

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