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10年後のために、リーダーは「内なる旅」と「外への旅」に出なければならない

プレジデントオンライン / 2015年8月18日 13時15分

■リーダーは「内なる旅」と「外への旅」に出よう

【ハーバードビジネススクール教授 竹内弘高(司会・ナビゲーター)】テクノロジーの進化とグローバル化の中でレジリエンスを高めていくことが重要だという(リンダ)グラットンさんの指摘です。柳井(正)さんはグローバル化に向けてレジリエンスを高めるには何が必要だと思いますか。

【ファーストリテイリング会長兼社長 柳井 正】グローバル市場を相手にしようとすると、10年後には当社の幹部の3分の2ぐらいは海外に行っているでしょう。そういう覚悟を持って働いてほしい。外国人の幹部はまだあまりいませんが、10年後には本社の3分の2ぐらいが外国人で占めているでしょう。おそらくは確実にそうなるのだから、社員にはまず考える前に海外に行って仕事をしろと言っています。日本人のだめなところは前もって準備しようとするところですね。初めは失敗するかもしれないけれども、試行錯誤してこそ現場感覚や異文化を身につけられるのです。それを個人として身につけることが一番大事だと思います。

とくに僕が重視しているのは、社員に世界の現実を知ってもらうことです。日々の業務において、目の前のことしか見えていない人が多いように思います。見えない世界に対する好奇心を持つこと、社会性や感情的なものをもっと大事にしないといけない。

【竹内】ピーター・ドラッカーも将来は予測できないが、将来はつくれるんだと言っています。将来をつくるにあたってどのようなリーダーシップが求められていると思いますか。

【ロンドン・ビジネススクール教授 リンダ・グラットン】未来のリーダーは複雑化した世界の中でリーダーシップを発揮しなければなりません。しかし、矛盾も当然発生します。たとえばローカルな存在でありつつもグローバル化していく企業の姿も矛盾の1つです。そこで矛盾する世界を克服するためにリーダーは「内なる旅」と自分の殻を破って未知と出合う「外への旅」に出なければいけないと考えています。内なる旅は内省すること。自分自身は何者なのか、自分の価値観は何なのか、あるいは自分は何を大切にしているのかについて深く考え、声に出して表現することが必要です。内省の結果、今までと違うやり方をしなければいけないことを認めるには勇気が必要です。しかし、すばらしいリーダーになるための条件だと思います。

外への旅とは柳井さんも指摘されたように世界について知ることです。世界を知るには、いろんな国を見たり、仕組みを学ぶだけではなく、自分と違う何かを受け入れることです。つまり、世界の一員になる必要があるのです。内なる旅と外への旅を通じて自分なりの世界観を形成することがリーダーには必要なのです。

■リーダーシップだけではリーダーになれない

【柳井】僕は現実を知らない限り、リーダーシップは発揮できないと思っています。だから入社した人は全員が現場に入り、そこで働く人、我々の製品を使う人がどういう意味を感じて使っているのか、市場がどういうふうになっているかを肌で感じることが大事です。組織はリーダーばかりでは成立しません。僕はリーダーシップとフォロワーシップの2つを持たないと真のリーダーシップは発揮できないんじゃないかと思います。会社組織の中ではほとんどの人がリーダーであると同時にフォロワーです。優れたフォロワーシップのある人でないと人はついていかないでしょう。世界中の人と一緒に仕事をするうえでもリーダーシップとフォロワーシップを併せ持つことが重要です。

【グラットン】その通りだと思います。海外の人たちは日本企業といえば、常にピラミッド型を想像します。つまり、上のリーダーが指示し、その下は言われたことをするというイメージです。しかし、階層的な手法はグローバル化すると通用しなくなります。

【竹内】階層組織の対比としてあるのがフラットな組織ですね。ファーストリテイリングはどちらですか。

【柳井】組織をフラットにして大企業病と戦うリーダーシップが絶対必要だと考えています。いつも言っているのは、僕のようにしないことだ、ということ。僕のようにしたら絶対に失敗するし、カリスマは必要ない。フォロワーシップとリーダーシップの両方を備えたリーダーが「グローバルワン・全員経営」でやる。この方法しかないと思っています。グローバリズムが強くなればなるほど、あるいは従業員が増えれば増えるほど、自分は他の人とは違うという意識が強くなる、あるいは自分の国は他の国とは違うという根拠なきローカリズムがはびこるのです。

それを克服するには職階をできるだけなくし、全員が経営者としてお互いを尊重することです。複雑な世界ではあるが、それを受け入れて自分と他の人が共存するための方法とはどうあるべきか。その市場で物を作り、売るためには何が必要なのか。ローカルな市場について考えると同時にグローバルな視点で考えるという矛盾することをやっていくことが我々の成長にとってキーになると思っています。

※本稿は2014年6月17日にファーストリテイリンググループ社内で行われた対談を編集部の責任において要約・再構成しました。

▼教えて! リンダ先生

Q.「誤った意思決定をしないか不安です」

最近、リーダーに就任しました。誤った意思決定をしないだろうかと不安でいっぱいです。リーダーとして、気を付けるべきポイントを教えてください。

A.「まずはゆっくり眠ることから」

グローバル企業のリーダーが間違った意思決定をする原因の1つは、24時間対応と出張の連続によるストレスです。グローバル化によって意思決定が複雑になる中で、疲れたときに意思決定をしないために、十分な睡眠の確保や長時間働くことを防止するなどリーダー自身がストレスレベルをチェックすることが求められます。もう1つ、大切なのは傾聴です。グローバル企業には様々な国の人が集まりますが、お互いの話を聞かない人が結構います。部下の話に耳を傾けることで現場の動きも把握しましょう。

▽調査報告!数字で見るビジネスマンの勉強意欲
図を拡大
ビジネスマンの勉強意欲調査

6割の人が現在の仕事の質への不足感があるようだ(1)。その不満が学ぶ意欲をかきたてるのだろう。学ぶ必要性を感じるのは「今の業務の質を高めたいから」(2)。厳しい事業環境のなか、顧客層を広げるためには外国語の習得が必須。すでに3割が仕事で外国人と接している(3)。現在、自己学習している人は約3割にとどまる(4)。ライバルと差をつけるには今からでも遅くない。

 

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ロンドン・ビジネススクール教授、2013年ビジネス書大賞受賞 Lynda Gratton(リンダ・グラットン)
組織論、人材論の世界的権威。英タイムズ紙の「世界のトップビジネス思想家15人」に選ばれている。フィナンシャル・タイムズでは「今後10年で未来に最もインパクトを与えるビジネス理論家」と賞され、英エコノミスト誌の「仕事の未来を予測する識者トップ200人」の1人。

 
 
ファーストリテイリング会長兼社長 柳井 正(やない・ただし)
1949年、山口県生まれ。早稲田大学政治経済学部経済学科卒業後、ジャスコ(現イオン)に入社。その後、実家の小郡商事に入社。84年広島市にユニクロ1号店開店。91年社名をファーストリテイリングに変更。2002年より代表取締役会長就任。05年より現職となる。

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(ロンドン・ビジネススクール教授 Lynda Gratton、ファーストリテイリング代表取締役会長兼社長 柳井 正 溝上憲文=構成 大沢尚芳=撮影)

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