「中目黒vs浦和」住んで実感、お金の不安、生活の不満トップ5
プレジデントオンライン / 2015年8月28日 8時45分
東京・中目黒。近年、ファッション業界人が通う個性的で通好みの店が軒を連ね、芸能人も普通にそこらを歩く「イケてる」街の筆頭だ。目黒川沿いの見事な桜並木も有名で、お花見の季節には老若男女でにぎわう。
渋谷から東急東横線で3~4分の好立地。当然、物件価格も高く、新築分譲マンションで70平方メートルほどなら7000万円は下らない。となれば、中目黒住民はさぞやキラキラした日常を送っていると思いきや、「いやいや、以前から中目黒に住む住民たちは、むしろ庶民的で普通の暮らしぶりなんですよ」と話すのは、会社役員のAさんだ。地方出身で、仕事に便利な立地が決め手となり、7年間、在住。住み始めて気づいたのは、「賃貸価格は高いが、中目黒は世間のイメージよりずっと素朴で地味」ということ。
どこに行くにも便利だが、「晴れた日に外に干してもなかなか洗濯物が乾かない」と妻が嘆くほど道が狭く、日当たりが悪い住宅街に昔から住んでいる2世帯同居家族が多い。後からやってきた高所得者と違い、ごく普通の収入の家庭が大半だ。小学校、中学校と親子で同じ公立校に通った幼馴染みの親同士も仲良し。
流行の店が立ち並ぶ一角から少し離れた路地に入れば、昔ながらの商店街も健在で、お祝い事があると「親子代々通う地元の寿司屋さん」に足を運ぶ。ゆえに、子供たちはなんと、イマドキの回転寿司やイオンモールを知らずに育つ。近くに次々とできるおしゃれな店とは無縁だが、たまに家族で「お出かけ」するさいは、東急沿線の二子玉川や自由が丘へ。流行の発信地のすぐ横で、のびのびと子供たちが育つ環境が好ましい。
ただし、「そうした環境は一方で今の時代、少し不安」とAさんの妻は言う。ご多分に漏れず、高齢化が進んでいて、独り暮らしの住人が亡くなった後は空き家になっている例も多いという。だから、2~3人兄弟が多いにもかかわらず、子供の絶対数は少なく、競争意識が薄い。その結果、のんびりしすぎて、受験熱が低い傾向がある。地元小学校の中学受験率は20%ほど。都心のわりに確かに受験率が低い。ニコタママダムやタワーマンション住民の中にいるような、いわゆる「教育ママ」も「そういえば、あまり見当たらない」(Aさん)。
▼中目黒マダムの不満5
[1]家賃が高い、狭い、日当たりが悪い
[2]受験熱が低く、のんびりしすぎ
[3]子供の絶対数が少なすぎ
[4]地元で何をしてもすぐわかってしまう
[5]花見の客が多すぎる!
■浦和駅前のブランド地名とは
そんな中目黒と対照的なのが、埼玉県庁のある街、浦和である。京浜東北線などJR各線に乗れば乗り換えなしで都心へ30分程度で着く、東京のベッドタウン。最近、上野東京ラインが開通し、交通の便がますます充実した。マンション価格は浦和駅徒歩10分くらいの70平方メートルで5000万円から。郊外にしては高価だが、中目黒と比較すれば、当然家賃も安い。
浦和といえば、熱狂的なサポーターでお馴染みの浦和レッズが有名だが、実は教育熱心な家庭が極端に多いことも、埼玉県民のみならず、教育パパ&ママたちの間によく知られている。東大合格者が多く、高校生クイズ番組で全国的にも知名度が高い県立浦和高校をはじめ、高偏差値高校がいくつかあるだけでなく、公立小学校数校と埼玉大学附属小学校の評判がすこぶる高いのだ。一度浦和を出ても、子供ができると「わが母校」に通わせたいとUターンする家族が多いらしい。筆者自身も浦和在住歴5年だが、不動産広告最大の売り文句が「常盤小学区!」「高砂小学区!」といった「学区推し」だったこと、そして、評判の高い小学校がある住所は「県内のブランド地名」と寸分違わず一致することに最初は驚いた。
「実際、学区のために転入する例は珍しくない」と言うのは、自身も息子の小学校入学のために数駅東京寄りの埼玉県川口市から引っ越してきた元モデルママBさん。夫は広告系会社員だ。当初は川口市内の小学校に通わせるつもりだったが、浦和の評判を聞いて「できることなら、教育環境が整う地域で育てたい」と考えが変わったという。
浦和駅周辺の公立小学校の中学受験率は最低でも3分の1以上。いざ引っ越してみたら、噂に聞いていた「浦和の教育熱」は想像以上だったそうだ。それに伴い、ママ友同士の会話も大きく変化した。
「皆さん、教育に関して情報通。子供の教育に役立ついろいろな情報を交換できて、刺激を受けています。可能な限り、良い教育環境を与えたい。うちの子もいくつか習い事をさせていますが、塾のほか、クラシックバレエから将棋まで10個ぐらい習い事を掛け持ちするお子さんもいますよ。子供の個性が何に向いているか、いろんな経験をさせたほうが見えやすいですから」
■ブランド品より教育に出費
ライフスタイル的には、上質なものを身に着けているが、決して派手ではなく、ブランドロゴが入ったバッグなどをあまり持たない質素な装いのマダムが多数派。「わが家も収入と時間の5割を子供のために使っている」とBさんが話す通り、「お金をかけるならブランド品より教育」が「浦和マダムの常識」だ。
ただし、浦和と名の付く駅名は東西南北含めて8つあるが、こうした特殊な(?)土地柄は主に浦和駅周辺に限られる。ちなみに、駅前に立つこぢんまりとした伊勢丹浦和店は、伊勢丹新宿店に次ぐ売上高をたたき出す。その理由は公にされないが、古くからの外商顧客が多く、資産家が日常的に買い物する店舗だからと言われている。
確かに駅前商店街を抜けると豪邸が並び、埼玉県外には知られていないが、さりげなく高級住宅地であることが見てわかる。だからだろうか。物価が都心並みに高い。この「物価の高さ」の話で、Bさんと筆者が思わずため息を一緒についてしまったほど。また、学校行事が多く、教育熱心な浦和マダムはフルタイムで働きづらいのも難点。だからこそ、高すぎる教育費を賄うために稼いでくるパパたちに対して愚痴をこぼす浦和マダムはほとんどいない。
「物価が高く、教育費はすごくかかっても、浦和に引っ越して本当によかった」と断言する元モデルママBさん。家族が教育を核に一致団結しているのが浦和ファミリーの特徴かもしれない。
▼浦和マダムの不満5
[1]みんな教育費をかけすぎる
[2]物価が高い
[3]スーパーが少ない
[4]子供の遊び友達がいない
[5]レッズ・サポと一緒にされたくない!
(ライター・出版ディレクター 中沢 明子)
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