ネイティブがあ然、日本人の「謎の英語」
プレジデントオンライン / 2015年9月3日 9時15分
エートゥゼット代表 デイビッド・セイン氏●日本で25年以上、英語・英会話教育を行い、累計350万部の著書を刊行。『日本人のちょっとヘンな英語』、『「ごちそうさま」を英語で言えますか?』(ともにアスコム)など著書多数。
ネイティブの取引先を激怒させてしまった……! よかれと思って取った行動や発言で、なぜ困惑や怒りを招くのか? 日本における英語教育の第一人者が正しい接し方を伝授する。
■「サイン」ではネイティブには通じない
日本人がよかれと思って話している英語が、ネイティブにはうまく伝わっていないということがありますよね。
例えば、私がある会社を訪問したとき、受付の方に“Please sit down.”と言われ思わず“Oh, I'm sorry.”と答えてしまったことがあります。なぜ自分は謝ったのだろう……と考えると、これって学校の先生が生徒に「ウロウロしないで座りなさい」というときの表現なんですね。この場合は、“Please have a seat.”が正しい表現です。
ビジネス英語でよくある間違いといえば、“Can I have your sign?”でしょうね。日本語では「サイン」が定着していますが、英語でsignといえば星座のこと。合意の署名という意味ならば、signatureにしなければなりません。
伝えたいことが伝わらないだけでなく、ネイティブを怒らせてしまいかねない、要注意の単語としてはexpectがあります。前向きな感じがしますが、“I expect you to come on time.”なんて言うと、「時間通りに来るのを期待しています」ではなく、「絶対に来い」と怒っている、それだけでなく不信感すら含まれている感じですね。expectは相手がやっていない、納期が遅れているときの表現なんです。同じことを柔らかく表現するには、“You need to be here at 9 o'clock.”とすれば「9時に来れば大丈夫ですよ」になりますし、簡潔に“See you at 9.”でもOKです。
それから、意外な落とし穴がpleaseです。日本人はpleaseをつければ何でも丁寧な言葉だと思っている人が多いのですが、実は使いようによっては危険な言葉で、たとえばタクシーで“I'm in a hurry, please.”とか、“Please go faster.”とか言うと、いらいらしてプレッシャーをかけている感じがします。同じように“Please shut the door.”と言うと、「ドアを閉めてくれ、それくらいのこともできないのか」と聞こえることもあるのです。
ではどうすればいいかというと“Oh, shut the door.”のように、心をこめて笑顔でohと付け加えることです。それだけで計画的ではない、だからこそ心がこもっているという感じが出せますね。
こんなふうに、少々間違ったり、失礼な言い回しであったりしても、心をこめて笑顔で言えばそんなに大きな問題にはなりません。一生懸命英語を話している日本人に対して、ネイティブも一生懸命理解しようとしています。だから間違いを恐れず、笑顔で話してみてください。
■「お疲れ様です」と言うより大事なこと
最後に、日本人がよく使うけれど英語にはない表現について。「お疲れ様です」「お世話になっております」などがそうですね。日本では礼儀として、失礼のないように行う挨拶の表現が、ネイティブ圏にはないんです。
なぜかというと、アメリカやヨーロッパは人の移動が多いという歴史的な背景があり、失礼かどうかということよりも、安全な人間かどうかということのほうが大事になるからです。だから、HiとかHmとか、表現は何でもいいので、目が合ったら常に、怒ってないよ、安全だよ、という合図を送ること自体が大切なのです。ぜひ、これも実践してみてください。
■あなたの英語、こう聞こえています!
▼どうぞお先に。
【NG】You go first.【OK】After you.
NG例は「お前が先に行け」と威圧的。もしくは悪がきの男の子が使いそうな言葉。OK例はとても丁寧な表現でビジネスの場にふさわしい。“Please, be my guest.”でもよい。
▼質問してもいいですか?
【NG】Can I question you?【OK】Can I ask you a question?
NG例のような“question +人”は、警察官などが容疑者を尋問する場合に使われ、「あなたを疑っていいですか?」の意になる。
▼それは知らなかった。
【NG】I don't know about that.【OK】】I didn't know about that.
NG例は“That's wrong.”とか“ I disagree with you.”と同じくらいきつい表現。OK例は遠慮のあるソフトな言い方。
▼それは残念ですね。
【NG】That's too bad.【OK】I'm sorry to hear that.
NG例は「それは残念です」の意味で使われるほかに、「仕方がないでしょう」と上から目線で使われることもあるので気をつけたい。
▼提案に満足しています。
【NG】I'm satisfied with your proposal.【OK】I really like your proposal.
NG例だと「まぁいいかなと思います。ギリギリOKです」の意。「満足した」をそのまま直訳するとsatisfiedだが、「ギリギリOK」のニュアンスなので注意。
▼アイデアが思いつかない。
【NG】I have no idea.【OK】I have no ideas.
NG例だと「想像もできないくらいわからない。さっぱりわからない」の意味になってしまう。
▼ああ、なるほど。
【NG】Is that so?【OK】Oh, I see.
NG例は「あ、そう? 違うでしょ?」というような相手をバカにするときにも使われるので、気をつけないと皮肉に聞こえる。
▼よりいっそう気をつけます。
【NG】I'll be careful from now on.【OK】I'll be more careful from now on.
NG例だと、今までは全然気をつけていなかった、いいかげんに仕事をやっていた、の意味になるので注意。
▼おいくらですか?
【NG】How much, Bill?【OK】How much is the bill?
NG例でも通じることもあるが、「ビルさん、いくらですか?」の意になり、場合によっては、“ I’m not Bill.”と返事をされるかもしれない。
▼今日は私がおごりますよ。
【NG】I'll pay you today.【OK】It's on me today.
NG例だと「今日こそあなたに払います」となる。OK例のほかに、“I'll cover the bill today.”や“It's my treat.”でもよい。
▼それでは5時にお待ちしています。
【NG】Okay, I expect you to come at 5:00.【OK】Okay, I'll see you at 5:00.
“I expect you to…”は、「…するのよ、いいわね」といったニュアンスの傲慢な言い回し。相手を見下した響きをもつので安易に使わないこと。
▼3時までに報告書を書かないといけない。
【NG】I have to write this report until 3:00.【OK】I have to finish this report by 3:00.
“~until…”は「…まで~をし続ける」の意味なので、NG 例だと「3時まで報告書を書き続けないといけない」の意になる。
▼その会社についてよく知らない。
【NG】I don't know about that company.【OK】I don't know much about that company.
NG例だと「その会社はどうかなと思うよ」の意になり、婉曲的に「その会社はよくないと思う」という意味になる。
▼休憩時間です。
【NG】It's time for recess.【OK】It's time for a recess.
recessは「休憩」の意味だが、大人がビジネスで使う場合はa recessが適切。冠詞なしのrecessだと小学生が使う英語になる。
▼会社を経営しています。
【NG】I have company.【OK】I have a company.
companyには「来客」の意味があり、NG例だと「来客がある」の意に。a companyやcompaniesとすると「会社」の意味になる。
(「AtoZ英語学校」代表 David A.Thayne タカ大丸=構成 奥谷 仁=撮影)
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