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わかった! 声を出さない英語学習が無意味な理由

プレジデントオンライン / 2015年9月15日 15時15分

三宅義和・イーオン社長

■英語のトレーニングは分かるところから始まる

【三宅義和・イーオン社長】英語トレーニングの第一人者としての千田先生に、音読を中心とした学習法について、お聞きしたいと思います。先生の代表的な著作に、このシリーズ累計50万部以上の『英会話・ぜったい・音読』(講談社インターナショナル)があります。ここに載っている英語の例文は、中学校と高校の教科書から取られているのですね。

【千田潤―・アイ・シー・シー代表】そうです。だから、読んで訳すことは決して難しいものではありません。しかしながら、このレベルの英語をスラスラ話せて書けるかというと、これがなかなか難しい。

【三宅】できません。理解することと話せることはまったく違う。日本人の英語学習者に対しての非常に重要なメッセージになります。イーオンに来られる人で、テキストを見ると「これ、わかります。もっと難しいものをやりたい」と言われる人もいらっしゃいます。

もちろん、それは非常に重要だけれども、わかったものを使えるようにするのがトレーニングですよね。

【千田】はい。それを強調するために、この本を書きました。日本人は英語を日本語に訳せると、そこでやめてしまう。今までの学校教育がそうだったから。英語の授業になると、「山田君、立って読んで訳して」、「はい、よくわかりましたね」で終わりでしたよね。

でも、英語のトレーニングは、わかるところから始まるんです。読んで理解できた英文を、書けるか、話せるか、発信できるかとなると、また違います。大切なのは「わかるをできる」にするトレーニングです。その基本は音読。これで耳が開く。音読はリスニング力強化の王様。そして音読しながら書く。これで口が開く。音読筆写はスピーキング力強化の王様。この2つの自己学習法をとくに薦めたくて書きました。

【三宅】最近はですね、昔に比べて音読の重要性が言われるようになってはいるのですが、そのわりには学習者は、音読を実践していません。音読のやり方がわからない人もいます。

【千田】音読を実践している人は本当に少ないですね。やり方が間違っている人もいます。まずCDなどをしっかり聴き、なぞって音読し、間違った発音をあぶり出す。聴きながら音読すればOKです。最初は、例えば10カ所ぐらい間違う。でも、2回、3回やると、10が8、6って減って、進歩が見えます。すると、人間は元気が出ます。さらに4回、5回やると、今度は限界が見えます。進歩が見えたあとに限界が見えると、人間って勝手に次の目標を設定して、やめなくなります。

その心構えを、僕はこの本で訴えたかった。「何回も繰り返しなさい」と。まず音を何回も真似て発音を矯正し、意味を理解した英文を音読と音読筆写で刷り込む。そして使う。この3つが大前提です。意味がわからない英語は雑音です。訳を見て意味を確認してもOK。発音記号を調べたり、英文を日本語に訳したりする時間を、何度も何度も繰り返して体に刷り込む「トレーニング」に使ってほしい。そして使って自分のものにしてほしいのです。

Learning is repeating. Using is learning.……このことを強調したかったのです。

■英語ができないと悩んでいる人を救いたい

【三宅】本当にそう思いますね。私どもの教室には、いま子どもさんを含めて、7万5000人の受講生がいます。やはり、音読をしっかりやっている人は伸びる。私も、イーオンの外国人教師研修で「皆さんの生徒がイーオンの教室から出た後も声に出して練習すればするほど、レッスンから吸収するものが増える。家で何もやらないと本当にレッスンがもったいない。お金をかけて来ているのだから」という話をよくします。

あるいは企業研修でも、音読を中心ということで、実際にやってみますと、やはり非常に効果があります。「こういうやり方があったのか」「これだったらできる」と、1人ひとりが納得した顔になってくる。英語公用語の企業でもやりましたけれども、非常に大きな成果をあげております。たとえば、先生から学習者に対して、たとえば1日何分音読しなさいとか、そのような時間的な目安はあるのでしょうか。

千田潤一・アイ・シー・シー代表

【千田】時間的な目安より、まず、声を出さない英語学習は無意味っていうことを、はっきり言い切らなきゃダメだと思います。言葉は基本的に音ですから、声を出さない英語学習は無意味だと。声を出しての学習なら、1日5分からでもいいと思います。

大手自動車メーカーに勤めるある女性は、大学ノートに、声を出しながら英文を書く。5回書いたら、声に出して言ってみる。この音読筆写を繰り返しているうちに、言葉が、ポッと、無意識に出るようになったと言います。無意識に口から出る状態をスピーキングといいますから、実に理にかなった訓練ということができます。

【三宅】なるほど、声に出しながら書くわけですね。

【千田】そうです。もちろん、それでもすぐに忘れます。そうしたら、また同じことを繰り返す。5回で瞬間記憶。20回で短期記憶。それを、10ラウンド繰り返すと、「20×10」で200回。これで長期記憶。そして自然に口から英語が出てくるようになります。

【三宅】先生は受講生に対して、また英語ができない人に対しても温かい。できない人はダメだ、ではなくて常に初心者の人に寄り添って、勇気づけるいろんな言葉がありますよね。「1年は365日だけど、365日毎日やれじゃなくて、65日はサボれ」などなど。

【千田】私はスコアの高い人には、あまり興味がありません。放っておいてもやりますから、全然かわいくない(笑)。それよりも、仕事ができる、あるいは学校の成績がいい。でも、英語ができないだけで悩んでいるという人たちを救いたいと考えています。英語難民の救済が私のライフワークです。そういう人たちを励ましたら、すぐに宝物に変わります。英語以外の何かを持っている人たちが、英語もできるようになれば、もっと輝く存在になります。

だから日々、本当に英語で苦しんでいる人向けのメッセージを、いっぱい用意して、どんな悩みが寄せられても大丈夫なように準備をしています。その場所が「英語難民救済センター」で、栃木県の那須高原にあります。年に3~5回ぐらい開催しています。1泊2日の合宿で、土曜日の夕方から、日曜日の昼まで。英語の悩みを出してもらい、それに僕が全部答えるというものです。とても大変な作業ですが、私自身の修業の場と思い頑張っています。

【三宅】元気がなく、悩みを持って来られた学習者が、先生のお話をとおして、元気になって帰られるということですね。

【千田】目が輝き始めますね。その瞬間を見るために、僕は仕事をしているんです。もう、これ以上の幸せはない。僕のミッションは英語難民の救済にほかなりません。救済したと思ってもまた、挫折する人はいます。でも、いいじゃないですか。だって、やめた回数よりも、始めた回数が1回だけ多ければ、永遠に続くのですから。

■やる気は行動からしか出てこない

【三宅】そんな千田先生の英語の上達のポイントはどこにあったのでしょう。

【千田】私の場合、大学で西村嘉太郎先生という恩師に出会えたことです。やり方さえよければ大学からでも遅くはないですね。キーワードは、音読プラス速読。音読はESSで、速読は先生がやってくれました。音読と速読の組み合わせが効きましたね。

それを半年間続けたら、英検1級が取れた。僕は陸上部のキャプテンでしたから、陸上がメインで、ESSはサブでした。ESSではみんなで「アメリカ口語教本」というテキストを何回も音読して暗誦しました。とにかく、音読で英語を体に刷り込んだわけです。

【三宅】速読というのは、大量の英文を速く読む。後戻りせずに、どんどん読んでいくということですね。

【千田】そうです。「先生、ゆっくり読んでもわからないのに、速く読んだらよけいわからないでしょう」と聞いたら先生は、「つべこべ言わずに、目を先に送れ。わかるから!」と言われました。そのとおりでした。どうでもいい「a」とか「the」とかが消えて、大事な単語だけがクローズアップされてきたのです。「先生わかった。キーワードだけ浮かんできたよ」と言ったら、「それだよ。だから、速く読めと言っただろう」と笑っていました。

僕のブレークスルーの瞬間でした。昨日のことのように思い出します。

【三宅】やっぱり体感するしかないですね。音読が重要だ、音読筆写が大切だ、速読が大事だと言われても、やっぱり体感してはじめて自分のものになる。TOEICのスコアも、結果として上がりますよね。だけど、日本人の一般の学習者にとって、そのモチベーションがなかなか続かない。やる気が問われるいくつかの時期があるように思います。英語学習を始めたとき、あるいは何かあったときに、今年こそは英語をマスターしようというような。ところが、なかなか長続きしない。やる気を出し持続させるいい方法はあるのでしょうか。

【千田】やる気は行動からしか出てこないと思います。やる気が出ないときは、ほんの少しから始めてみる。その小さな行動が、やる気を引き出してくれます。手っ取り早いのは、身近に目標となる先生や先輩、そして仲間を持つこと。「あの人のようになりたい」という想いを持つ、これも行動です。小さな行動の積み重ねがモチベーションの持続に繋がります。

それと、日本語でもコミュニケーション上手になってほしいですね。友達を作る。日本語で友達ができない人が、英語で友達ができるわけがありませんよね。最後にもう1つ、日本人の英語学習者は、失敗を恐れる。でも、1つのミステイクは1つの進歩だ、One mistake is one progress.とポジティブに考え、“勇気”を出して英語を使ってほしいですね。

【三宅】本日はありがとうございました。

(イーオン代表取締役社長 三宅 義和 岡村繁雄=構成 澁谷高晴=撮影)

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