ニート高齢化で迫られる"老後設計"大修正
プレジデントオンライン / 2015年11月16日 12時15分
・無職予備軍の「不登校」の小・中学生急増、約12万人に
・フリーター、派遣社員、家事手伝いも無職のリスク抱える
・無職の子供を支えるべき親の資産減少が露わに
■自慢の子供たちが突如ひきこもりに
難関国立大を卒業後、銀行員となった兄。難関私立大を卒業後、証券マンとなった弟。両親の気がかりと言えば、40代になっても結婚していないことくらいだった。それがある日、原因がわからぬまま、兄が一歩も家の外へ出られなくなり、翌年には弟も同じ状態に。母は、近所の人に出会うと「最近、どうしたの?」と聞かれるので、それを避けるため買い物も夜中にこっそり出かけるしかなくなった――。
これはファイナンシャルプランナーである畠中雅子氏が目の当たりにした実話である。
「親御さんは、よもやこんな日が来るとは考えてもいなかったはず。特殊なケースと見られがちですが、ひきこもり予備軍や、働けない予備軍はいま、確実に増えていて、ニートの高齢化も進んでいます。無職の子供を抱えるリスクは、どの家庭にもあるのです」
文部科学省が発表した2014年度学校基本調査(速報値)によると、13年度の「不登校」を理由とする長期(30日以上)欠席者は、小・中学校合わせて約12万人。前年度と比べ、約7000人も増加しているのだ。不登校からそのままひきこもりにつながり、仕事に就けないケースも多い。
「就職難が続いた社会背景も見逃せません。たとえ仕事に就けても、やりたい仕事でないうえに条件も悪く、働き続けにくい状況が生まれています。フリーターや派遣労働者も無職予備軍。『家事手伝い』も隠れた無職です」
一方、親の財力も近年、子供を十分に守れるだけの力を失っているようだ。
「大学生の奨学金利用者は増え続けていて、いまや2人に1人。申請を希望する家庭は、3人に2人ともいわれています。大学の資金ですら支払えない家庭がそれだけ多いということです」
とはいえ、子供を救える一番手は親。親亡き後を見通した、具体的な子供のサバイバルプランを考える必要がある。まず、いつ立てるかがポイント。これは子供の年齢が40歳のときだ。
「30代までは、親御さんも社会復帰の望みを捨てたくないでしょう。また、お子さんが若いとプランが長期にわたって必要金額が高額になり、現実味が薄れます。ただし年金だけは将来子供が受け取れるよう、若いときから支払いが滞らないようカバーしてください」
■まずやるべきは親の資金の洗い出し
子供のサバイバルプランとは、親の資産の洗い出しをして、どれくらい貯金や不動産などが残るかをチェックし、それで子供ひとりでどこまで生きられるかを考えていくプランだ。
まずやるべきは、資産の洗い出し。純資産を計算する一覧表を参考に合計額をはじきだす。純資産がほとんどない、あるいはマイナスの場合は、現在の家計を見直す必要がある。削るべきところは削り、少しずつでも貯蓄に回したい。また、資産を減らさないためにも、親自身の老後が赤字にならないよう生活設計を立てることが大事。老後の家計は夫婦の年金だけで切り盛りできるようにしたいところ。
「盲点となるのが、夫婦のどちらかに先立たれた後。年金収入が減ったり、1人分の生活費が割高になったりして、赤字が増える可能性があります」
現状把握ができたら、子供がひとりで暮らしていくにはどのような財産が、どれだけ必要かを考える。最も重要なのは、親亡き後に子供がひとりで生活しやすい「家」を確保することだ。
「広い家だと光熱費や維持費、税金などの負担が大きい。24時間ゴミ出し可能な小さめの中古マンションなら価格も抑えられ、ゴミがたまるのも避けられます。一戸建てなら減築して余った土地を売ったり、駐車場として貸し出す方法もいい。賃貸併用住宅に建て替えられるなら家賃収入が見込めます」
■月10万円で暮らせるプランを遺せ
家さえ確保できれば、家計は年金中心に立てやすくなる。とはいえ、親が元気なうちにこづかいをあげすぎていると浪費癖がつく。少ないお金でやり繰りする習慣をつけさせておきたい。
「子供がひとりになったときの生活費は、持ち家なら月10万円以内、借家なら月16万円以内に抑えたいところ。年金を月額6万円受けとれれば、前者なら960万円、後者なら2400万円あれば20年間は暮らせます」
生活費を抑えるために有効なのが、「自炊」である。とはいえ、本格的に料理ができるようになる必要はない。
「1日1食でも、ご飯を炊いて、缶詰をおかずに食べられるくらいでOK。子供の命をつなぐ手段にもなります」
また、自治体によって、子供がひとりになった後の地域のサポート体制には、手厚さに大きな差があるという。どの地域に住むかも重要というわけだ。
「たとえお金がなくても、情報をうまく集めれば道は開けます。そして、情報を正しくとる機会は平等にあります。資産の少なさだけで自分の将来や子供の将来をあきらめないでください」
・親の資産・負債を洗い出す
・親の家計と老後設計を見直す
・子供の年金支払いは滞りなく
・子供に最適な家の確保を考える
・無駄遣いしない習慣をつけさせる
----------
畠中雅子(はたなか・まさこ)
各種メディアに多数の連載をもち、セミナーや講演でも活躍。著書に『ひきこもりのライフプラン』(共著)、『高齢化するひきこもりのサバイバルライフプラン』など。
----------
(ファイナンシャルプランナー 畠中 雅子 小澤啓司=構成 遠藤素子=撮影)
外部リンク
この記事に関連するニュース
-
退職金と貯蓄「2500万円」あれば、「老後2000万円問題」は心配無用ですか? 年金も夫婦で「月20万円」もらえるので、定年後は働かなくても大丈夫ですよね?
ファイナンシャルフィールド / 2024年5月16日 3時0分
-
夫の父が亡くなり「高齢の義母と同居」することに…生活費はすべて私たち息子夫婦が「負担」するべき?
ファイナンシャルフィールド / 2024年5月15日 2時20分
-
【老後2000万円問題】夫婦二人暮らしの場合、実際はいくらくらい必要なのか教えてください。
ファイナンシャルフィールド / 2024年5月13日 21時10分
-
年金「月5万円」だけで暮らす母。心配なので同居をすすめたら「そんな時代じゃないから」と断られました…
ファイナンシャルフィールド / 2024年5月12日 4時30分
-
高齢者世帯の48.3%が「生活が苦しい」。収入・支出はいくら?
オールアバウト / 2024年5月9日 21時20分
ランキング
-
1イオンの「幸せの黄色いレシート」キャンペーン。レシートを使って寄付したいけど、不良品を「返品」できなくなるの?「寄附」と「レシート保管」を両立させる方法を解説
ファイナンシャルフィールド / 2024年5月19日 5時10分
-
2健康サプリを「毎月3万円」購入する80代の母。本人は「健康のため」と言いますが、解約させるべき?
ファイナンシャルフィールド / 2024年5月19日 3時0分
-
3コロナ禍で売上げ95%減となった「地球の歩き方」 Ⅴ字回復遂げ新分野に挑戦 岩塚製菓のおつまみスティックとコラボ
食品新聞 / 2024年5月19日 20時14分
-
4やがて太陽光パネル"大量廃棄の波"が押し寄せる…地銀の「電力子会社設立ブーム」に潜むリスク
プレジデントオンライン / 2024年5月20日 10時15分
-
530年以上塩漬け「阿蘇ソフトの村」用地、投資額の38分の1で県売却へ…TSMC進出に伴う需要期待
読売新聞 / 2024年5月20日 6時51分
記事ミッション中・・・
記事にリアクションする
記事ミッション中・・・
記事にリアクションする
エラーが発生しました
ページを再読み込みして
ください