派遣労働の法律改正。一番の注意点「みなし制度」とは?
プレジデントオンライン / 2016年1月14日 11時15分
■違法派遣があれば派遣から直接雇用に
昨年9月の国会では改正派遣法が成立したが、それとは別に、10月1日から、「労働契約申込みみなし制度」が施行されたことはご存知だろうか。
これは、2012年の民主党政権時に成立した法律で、“違法な派遣労働”があれば、派遣先企業がその労働者に対し、「労働契約の申し込みをした」とみなす制度。その場合、労働者が承諾すれば、派遣先に直接雇用してもらえるということだ。千葉博弁護士は、次のように解説する。
「従来から派遣期間制限を超えたときに、派遣先が派遣労働者に対して雇い入れ申し込みの“義務”を負う制度はありました。今回は違法な派遣労働があった時点ですでに申し込みがあったと“みなす”制度で、企業にとっては、法律に違反するリスクが一段と高まることになります」
では、どのようなケースが“違法な派遣労働”とされるのか。派遣法では4つの違法行為をあげている。
(1)港湾運送や建設、警備など、派遣が禁止されている業務に派遣労働者を従事させた。
(2)無許可または無届出の派遣元から派遣を受け入れた。
(3)期間制限を超えて受け入れた。
(4)偽装請負(実態は派遣労働だが、形式は請負契約にして派遣法の規制を逃れようとすること)
(1)~(3)については、普通程度の注意を払っていれば回避できるため、コンプライアンス意識のある企業ならばそれほど心配する必要はないだろう。注意したいのは、(4)だ。請負契約で働いてもらっていても、実態は“違法な派遣労働”であると判断されるおそれがあるからだ。
「請負は、注文者が請負労働者に直接指揮命令をしないことになっています。直接指示を出すと、(4)の偽装請負、つまり違法な派遣労働であるとみなされる可能性があります。システム開発のように、注文者の事業所内で行われる“構内請負”では、請負労働者が客先に常駐するために直接指示する場面が生じやすいので、注意が必要です」
■新制度にある“穴”とは?
新制度で派遣利用企業は法的リスクが高まるが、派遣労働者側からは効果を疑問視する声もあがっている。
「この制度が適用されても、派遣労働者が正社員になれるとはかぎりません。違反した派遣先に求められているのは派遣労働者を直接雇用することだけで、契約期間等は、派遣会社との契約内容によります。有期雇用の派遣労働者は、直接雇用されても雇い止めのリスクも高いのです」
派遣利用企業の対応に不満でも、行政が介入して労働契約を結ばせることは難しい。話がこじれれば裁判となるが、訴訟は派遣労働者にとってハードルが高く、泣き寝入りにつながりかねない。
みなし制度は違法派遣の撲滅に向けて一歩前進といえるが、穴も多い印象。実際にどのような問題が起きるのか、引き続き注目が必要だ。
(ジャーナリスト 村上 敬 弁護士 千葉 博=答えていただいた人 大橋昭一=図版作成)
外部リンク
この記事に関連するニュース
-
「メンズエステ」用と知りつつ部屋を仲介 詐欺容疑で不動産業者逮捕
毎日新聞 / 2024年9月18日 11時42分
-
オンライン弁護士セミナー 2024年9月18日㈬ 19時より開催!知っておきたい離婚と共同親権のはなし
@Press / 2024年9月9日 11時0分
-
新刊『労基署から呼出しが来た!調査・是正勧告への実務対応』発売
PR TIMES / 2024年9月4日 7時40分
-
ワーキングプア増加? 急拡大するスポットワークは、第2の日雇い派遣となるのか
ITmedia ビジネスオンライン / 2024年9月3日 7時0分
-
性犯罪歴確認「日本版DBS」は課題山積? 子どもの被害防ぐには、識者3人にインタビュー
47NEWS / 2024年8月31日 10時0分
ランキング
-
1「今買わないと後悔しますよ」 客を萎えさせる「店員の声かけ」はこれだ
ITmedia ビジネスオンライン / 2024年9月22日 8時5分
-
2福井のブランド米「いちほまれ」の新米、昨年より価格6割高で店頭に…生産量は2000トン増の見通し
読売新聞 / 2024年9月22日 8時43分
-
3「無料のモノはもらわない」お金のマイルール 日々を健やかに過ごす「失敗を許容するお金」
東洋経済オンライン / 2024年9月22日 9時0分
-
4「三菱商事、伊藤忠、ゴールドマン・サックス」がずらり…偏差値55なのに就職実績"最強"の「地方マイナー大学」の秘密
プレジデントオンライン / 2024年9月22日 10時15分
-
5「チープカシオ」なぜ人気? 安価だけではない、若者に支持される理由
ITmedia ビジネスオンライン / 2024年9月22日 7時10分
記事ミッション中・・・
記事にリアクションする
記事ミッション中・・・
記事にリアクションする
エラーが発生しました
ページを再読み込みして
ください