マイナス金利の吉凶は、日経の「アノ数字」見よ
プレジデントオンライン / 2016年2月15日 9時15分
■お題は、マイナス金利。「仮説検証」力を鍛えましょう
考える力を高めるには仮説を立てて検証することが大切です。仮説・検証を繰り返していると、思考力が高まり、意思決定の精度も上がります。
私が訓練としてやっているのは、経済現象、それも大きく新聞に取り上げられるような案件の先行きについて、この先の展開のシナリオ(仮説)を立てるということです。大きな話題は動きがダイナミックな上に、常にマスコミがその動向を教えてくれるから仮説の検証をしやすいからです。
例えば、先月末、日本銀行は「マイナス金利」を導入しました。
それについて、私が立てたシナリオ(仮説)は以下の通りです。
「マイナス金利」とは、民間銀行が日銀に預ける日銀当座預金の金利を、今後預ける分からマイナス0.1%にするというものですが、私は次の2つのシナリオを考えました。
▼マイナス金利の先行き 仮説1
まず、良いシナリオとして考えたのは、銀行は日銀に預けるお金がマイナスになるのはもちろん嫌ですから、日銀には預けずそのお金を貸し付けや株式購入などに使うことです。
そうなれば、これまで以上に、低金利で金回りが良くなり、株式相場も上がり、景気拡大に動きやすいということになります。また、日米金利差の広がりから円安になれば、輸出企業を中心に業績が上がり、さらに、景気、株価も上昇するということです。
これは日銀が望んでいることです。
この前提としているのは、結構見落とされがちですが、今回の「マイナス金利」政策は、それとともに「異次元」とまで呼ばれている「量的緩和」も継続されるということです。
つまり、「マイナス金利」とともに、従来通り年間80兆円、毎月6兆~7兆円程度の国債を民間銀行から買い入れ、その代わり、お金を日銀当座預金に入金するということです。その増加分を民間銀行が日銀に預けたままにすればマイナス金利となりますから、市中にお金が出回りやすくなるわけです。
■日経株式欄の●●が多くなれば、マイナス金利は失敗
▼マイナス金利の先行き 仮説2
もちろん、悪いシナリオも私は考えています。
これまでの低金利下でも、銀行の貸し出しはそれほど伸びていません。それが、さらに0.1%程度金利が下がったからと言って、簡単に企業の借り入れが増加するということはなかなか考えにくい状況です。
それなら銀行は、国債を売って得た資金で株式を買うかと言えば、株式には価格下落リスクがあり、しかも、企業業績が伸びなければ長期的には株価は上がりません。
そういう状況では、銀行はマイナス0.1%の金利でも日銀に預けておいたほうがマシだと考える可能性は低くありません。
また、そういう状況になれば、金利がわずかでもある国債を保有し続けるほうが賢明だと考え、国債を日銀に売らない可能性もあります。そうなると、景気も良くならず、株価も低迷、銀行の収益が落ちていくだけということにもなりかねないのです。
市場に流通する国債の量が極端に減った中で、日銀が大量の国債を買い続ければ、国債市場が乱高下することも懸念されます。
▼2つの仮説の検証ポイント
この2つのシナリオを考えると、今後、円安に振れるかどうかが大きなカギだと私は考えています。今回のマイナス金利により円安に振れれば、企業業績も上がり、株価も上昇しやすくなります。そうなれば、銀行も貸し出しも増やしやすいし、株式にも投資しやすくなります。
ただし、米国も昨年末に政策金利を上げたものの、一本調子に金利を上げられる状況ではないので、この先円安に振れるかどうかは結構微妙です。
ここまで、「マイナス金利」に関して、私なりの仮説を説明しました。
そして、その仮説の検証は、今後の経済の展開を見ていくわけですが、とくに、
・ドル円相場が円安に振れるかどうか
・銀行の現状250兆円程度の日銀当座預金(編集部注:次ページにて解説)が増えるかどうか(数字は、日経新聞朝刊の株式欄にある「短期金融市場」コーナーに掲載されている)
に私は注目します。
円安なら良いシナリオです。そして、それにより株価、景気の向上が起こるかどうかの検証が必要です。
一方、マイナス金利にも関わらず日銀当座預金が増えるようなら、これは先ほど説明した悪いシナリオで、景気が後退し、日銀はさらに金利のマイナス幅を大きくすると考えます。
仮説が違っていればその修正が必要ですが、いずれにしても、それを繰り返すことで仮説の精度が上がり、思考力が高まると思います。
■できる人は知る「日銀当座預金」とは何か?
以下、日本銀行サイトより。
●日本銀行当座預金とは、日本銀行が取引先の金融機関等から受け入れている当座預金のことです。「日銀当座預金」、「日銀当預」などと呼ばれることもある。
●日本銀行当座預金の主な役割は次の3つ。
(1)金融機関が他の金融機関や日本銀行、あるいは国と取引を行う場合の決済手段
(2)金融機関が個人や企業に支払う現金通貨の支払準備
(3)準備預金制度の対象となっている金融機関の準備預金
(経営コンサルタント 小宮 一慶)
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