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人工知能から学ぶ「英語学習法」

プレジデントオンライン / 2016年3月1日 11時15分

2016年1月22日、ダボス会議において、新聞を読むロボットが展示された。(写真=AFP/時事)

日本人にとって、英語は、永遠の「課題」のようだ。英語学習に関するさまざまな本が出版され、雑誌でもたびたび特集が組まれている。しかし、なかなか上達しない。

英語学習は、多くの人にとって、「鬼門」のようだ。

今回は、英語の学習の仕方を、少し変わった視点から検討してみたいと思う。すなわち、「人工知能から学ぶ英語学習法」である。

人工知能の技術の最近の発展は目覚ましい。先日も、グーグルの開発したプログラムが、囲碁のプロ棋士に勝利したというニュースが人々を驚かせた。

すでに、コンピュータが人間に追いつきつつあると見なされていたチェスや将棋に比べて、囲碁は可能な打ち手の数が格段に多く、計算量が爆発的に多い。人工知能が人間に追いつくのは、早くて10年先くらいのことではないかと予想されていた。

それなのに、これだけ早く人間に追いついてしまったことに、専門家の中からも驚きの声が上がっている。人工知能がここまで急速に進化するとは、多くの人が思っていなかったのである。

人工知能の最近の発展を理解するうえでの重要なポイントは、そのプロセスで特に新しい「原理」が発見されたわけではない、ということである。

もともと、脳の神経回路がどのように学習するかという研究にヒントを得て、人工知能のプログラムの改良法は考案された。したがって、人工知能が実行している学習法は、すべて、人間の脳がやっていることである。

脳が実行する学習則を、地道に繰り返すことによって、人工知能は成功している。そこには、何のマジックもない。

一方、人間は、学習法がわかっていても、それを徹底しないことが多い。画期的に新しい学習法を考案する必要などない。ただ、基本を繰り返し、やればいいだけの話なのであるが。

たとえば、最近の人工知能は「達人」に学ぶ。囲碁の打ち方でも、自動車の運転の仕方でも、達人と呼ばれる人たちが実際にどのような選択をし、行動をとるかを、ビッグデータで取り込み、解析する。

人間が英語を学ぶ際にも、同じ姿勢が必要である。ネーティブなどの、英語が達者な人の発音をひたすら聞く。そのことで上達するはずなのに、徹底してやることができない。

人工知能の学習において大切なことの1つは、実際の行動と正解の間の「誤差」を検出して、それが小さくなるように修正することである。これを繰り返すことで、急速に正解率が高まっていく。

しかし、英語学習において、誤差の修正を地道にやっている人はどれくらいいるだろうか? 書くことでも、話すことでも、自分のアウトプットを、お手本と比較して、修正していく。それを繰り返せば、必ず、正解率は高まっていくはずなのである。

達人の英語のパターンの徹底的な反復学習と、誤差の修正。この、基本中の基本という学習法に徹することによって、人間もまた、英語力を飛躍的に向上させることができるだろう。そう、まるで、「人工知能」のように。

私が脳の研究を始めた24年前、まさか、人間が人工知能に学ぶ日が来るとは思わなかったが、時代は変わった。

人工知能の「学習の基本」の誠実な繰り返しに学ぶべきだろう。英語習得に、マジックなどない。敢えて言えば、繰り返しが魔法となるのだ。

(脳科学者 茂木 健一郎 写真=AFP/時事)

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