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家計管理しやすい? 審査なし「デビットカード」で預金ダダ漏れ危機

プレジデントオンライン / 2016年3月28日 8時45分

「クレジットカードよりも、デビットカードの方が家計管理しやすい」

こんなセリフを聞いたことはないでしょうか。果たして本当にそうでしょうか? 今回は、家計管理とデビットカードについて考えてみたいと思います。

もしかしたら、デビットカードは持っていないから関係ない、と思われるかもしれません。いえいえ、そんなことはありません。おそらくほとんどの方がすでにデビットカードを持っていると思います。

デビットカードには下記の2種類があります。

(1)「J-Debit」タイプ

銀行のATMで使うキャッシュカードにデビットカードとしての機能が搭載されたもの(キャッシュカードにデビットカードのマークがあります)。よって、このタイプのデビットカードは、みなさんすでにお財布の中に数枚入っていることでしょう。

(2)カード会社が提供するデビットカード

VISAやJCBといったカード会社が、クレジットカードではなく、デビットカードとして発行しているもの。

(1)のJ-Debitの場合、現状は利用できる店が少ないのですが、(2)のカード会社系の場合、VISAやJCBを取り扱っている店であれば、クレジットカードと同様に決済に使えます。J-Debitよりも利用範囲が広いのがメリットです。最近、カード会社系デビットカードの取り扱いを行う金融機関が増える傾向があり、単に「デビットカード」というと、こちらを想像する人が多いかもしれません。

では、家計管理に向いているのは、デビットカード(1)か(2)か、それとも通常のクレジットカードでしょうか。

デビットカード(1と2)と通常のクレジットカードとの大きな違いは、購入のタイミングと実際に口座から代金が引き落とされるタイミングにあります。

通常のクレジットカードは、何か購入するとその場で支払い決済は済み、後日クレジットカード会社から代金の請求を受けます。そして、指定の金融機関の口座から代金が引き落とされる仕組みです。利用者側からすると、購入するタイミングと代金が引き落とされるタイミングに差が生じることから、資金管理の難しさがデメリットとしてよく指摘されます。

一方のデビットカードは(1)(2)ともに基本的に購入と引き落としにタイムラグが生じません。即時決済といって、購入した時点での指定口座の残高に応じて、すぐに代金は引き落とされます。即時に残高が減ることから、お金の使いすぎを防げるとして、冒頭のセリフにつながるようです。確かに、ごもっともな気もします。

しかし、私が「本当にそうかな」と思う主な理由は2点です。

・当座貸越の存在
・金銭感覚の希薄化

ひとつずつ検証していきましょう。

■「残高」分をすべて浪費する危険性

「当座貸越(とうざかしこし)」という言葉があります。あまり聞き慣れない言葉かもしれませんが、実は身近な借入れの制度です。クレジットカードの引き落としに指定している銀行口座が「総合口座」となっている場合(おそらくそうした方が大半でしょう)、「普通預金」口座と「定期預金」口座がセットになっているケースが多いと思います。

仮に、その総合口座で定期預金をしている場合、普通預金の残高以上にお金を引き出すことができます。残高を超えて引き出された分が、当座貸越を利用して借り入れ分であり、記帳すると残高としてはマイナス表示されます。これは定期預金を担保に自動的に貸し出しを行う仕組みです。

「残高」と「引き出し可能額」の金額の差に疑問を感じたことはないでしょうか。

その差額が、まさにあなたが当座貸越として、借りられる金額の上限です。金融機関によっても異なりますが、一般に当座貸越の借入利率は、定期預金の適用金利に0.5%上乗せして計算されます。また、借り入れ可能額とされるのは定期預金残高の9割というケースが多いですが、上限額が設けられているのが通常です。例えば、100万円の定期預金を預けていれば、90万円までは普通預金の残高以上に引き出せる、といった具合です。

実は、ここが問題なのです。

何のことかと言えば、デビットカードで指定した銀行口座が総合口座タイプで、定期預金をしている場合、利用額の限度は普通預金の「残高まで」かと思いきや、当座貸越によって想定していた「残高以上」にお買い物をしてしまうことは十分に起こりえるのです。

また当然ですが、普通預金口座に生活費以上のお金を無造作に入れっぱなしであれば、たとえ残高の範囲内に利用額を抑えられていたとしても、結果的に使いすぎということは起こるでしょう。

そもそも、デビットカードは買い物の際に即時決済されて確かに残高は減りますが、その減ったことを知るには、通帳記帳するなり、インターネットバンキングで残高確認するなりしないといけません。レジで即時決済ができずに、「あれ? もう残高がない」ということを繰り返しているようではダメですよね。こうしたことからも分かるように、デビットカードであっても、きちんとした残高管理は必要なのです。

ということは、ここまで「マメ」に資金管理できる人であれば、デビットカードではなく一般のクレジットカードであっても資金管理できるのではないかな、と思うわけです。私は、「残高以上に使わない」ことと、「家計管理しやすい」とは必ずしもイコールではないと考えています。

ただ、逆にいえば、定期預金をせず(あるいは当座貸越できないよう申し出る)、月の生活費分しか残高にいれておかない、ということが守れるのであれば、お金を引き出すためにATMへ行く手間も手数料も省けますし、デビットカードは一定の利便性はあるでしょう。

■キャッシュレスが浪費を誘発するメカニズム

デビットカードの潜在的な問題点の2つめは、金銭感覚の希薄化を起こす点です。どちらかというと、私はこちらの方を危惧しています。

一般のクレジットカードであっても、デビットカードであっても、その大きな特徴はキャッシュレスで支払いが済ませられる点です。つまり、「現金」を持たずにモノやサービスを手に入れられます。

一方、あなた自身の持っている「お金」は、その金額が通帳にしっかり印字されていて、そこから使った分が引き落とされ、引き落とされた後の金額がやはり印字されるだけ。「現金」は、一切見ることも触れることもありません。こうしたキャッシュレスでの買い物をすると、多かれ少なかれ金銭感覚が希薄化し、「使った」という意識が薄くなることがさまざまな実証実験で指摘されています。前出の(1)(2)のデビットカードなどを含むキャッシュレスは潜在的に浪費を誘発しやすいのです。

一般のクレジットカードよりも、デビットカードの方が資金管理しやすい、というロジックに違和感を覚えるのは、まさにこの点です。結局はどちらも現金を見ないのですから、どうしても資金管理を難しくさせる要因を内包しています。

本当に家計改善を目指すのであれば、「クレジットカードよりもデビットカード」ではなく、私は現金決済に戻った方がより効果的だと思うのです。そもそもデビットカードであっても資金管理をしないといけないのは前述の通りですし。

カード会社系のデビットカードであれば「ポイントが付く」といいますが、あくまでカードで利用した金額のほんの一部がポイントとしてつく程度。それよりも、ムダ遣いをなくす方が圧倒的に家計には効果的です。

世の中、実にお買い物をしやすくなりました。

決済の利便性が高まったといえば聞こえはいいですが、それだけ私たちのお財布は狙われている、といってもいいのかもしれません。いろいろな広告宣伝を目にすれば、欲しくなって当然です。だからこそ、限りあるお金は優先順位をつけて、有効に使うことが求められるのだと思います。

この時代にこそ、あえて現金決済にしてお金を使いづらい環境に自らを置くことも、ムダ遣いを抑えるのに有効なのかもしれません。

(家計コンサルタント 八ツ井 慶子)

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