「オール5!」体操・白井健三のH難度級ノート術&記憶術
プレジデントオンライン / 2016年3月19日 13時15分
■「ほぼオール5」の秘密はノートにあり
白井健三選手(日本体育大学・19歳)。
2013年10月、17歳で初出場した世界選手権で新技を3つも披露し、世界を驚かせた期待の星だ。先日は、新技「シライ3」(後方伸身2回宙返り3回ひねり)が最高のH難度認定されたが、彼は体操だけでなく勉強においても非凡な才能を発揮していた。毎日、厳しい練習メニューをこなしながら、勉強もしっかりやって、中学・高校と成績はほぼオール5だったというのだ。
健三選手の父親で、体操指導者でもある鶴見ジュニア体操クラブ代表・白井勝晃さんは次のように話す。
「学校から帰ると、毎日、体操の練習を6時間やります。その疲れた体を休めて回復させるために、6時間は寝るようにと言っていましたから、勉強できる時間は、帰宅後の夜10時半~1時までの2時間半くらい。その短い時間で成果を上げるために、健三は勉強法を工夫していました」
この方法が、非常に合理的なのだ。
まず、ノートの取り方。授業中に健三選手は先生の板書をただ書き写すだけでなく、問題化して書くようにしていたという。
「先生の話を聞きながら、テストではどういう問題が出されるか想像して、Q&A方式でノートをまとめていました。さらに、答えは赤い下敷きをかぶせると消えて見えなくなるよう、赤いペンで書いていました。あとから、暗記しやすいようにするためです」(同)
受け身で聞いていないから授業を聞く態度はダレない。集中力は頭抜けている。授業中、先生の板書をノートに写すだけなら、はっきり言ってボーっとしながらもできてしまう。しかし、「どういう問題になるかな?」と考えていれば、頭はフル回転しているし、内容も刻まれる。そして、授業が終わるときには「問題集」ができあがり、暗記用にカードを整理したりする時間が不要となる。一石二鳥の方法なのだ。
■眺めて10分。見るだけ暗記法
暗記方法もすごい。
健三選手は、ノートをじっと見るだけで暗記する。暗記というと、ふつうは何回も繰り返し紙に書いたりするものだろう。しかし、健三選手は見るだけ。勝晃さんによれば、見開き1ページを10分くらい眺めて、「よし! 入った」というのだとか。そして、赤い下敷きで隠して覚えているかチェックする。これで終了だ。
こうして暗記したら、すぐに就寝。6時間眠ったあとに、もう1回下敷きで覚えているかをチェックする。脳科学では、寝ている時間は記憶の整理に当てられるというから、その直前に暗記学習をするのは正解だ。さらに翌朝、確認することで記憶の定着を高める効果もある。勉強法を教わったわけではないのに、すべてが理にかなっていたのだ。
「健三が見るだけで暗記できるのは、体操で培った観察力があるのかもしれません。小さい頃から先輩が披露する複雑な体操の技を観察することでその動きを頭に入れ、体で再現することもできる。実は、私も50歳を過ぎて、日本体育協会公認のコーチ資格の取得試験を受けた時、健三の真似をしてノートをとったら、非常にスムーズに暗記できたんです。ノートを取るときに、ある程度で頭に入っているから、覚えやすくなっているのだと思います」(同)
この試験で勝晃さんは、200点満点で140点以上なら合格のところ、177点をマーク。至上最高齢合格という記録も出した。
見るだけで暗記する方法は、家庭教師コンサルタントの坂本七郎氏によると漢字学習で効果があることもわかっている。『プレジデントFamily 2016春号』(現在発売中)ではその方法を紹介しているが、取材時に「漢字を覚えるには空間認知力が関係していると思う」と話していたのが印象的だった。床運動で類い稀な空間認知力を発揮する健三選手が見るだけの暗記法を得意とすることは、そういう能力の高さを証明するものに違いない。
■健三選手の苦手科目は「体育」
ところで、健三選手が唯一苦手な科目があるという。なんと体育だというから驚きである。ほぼオール5の「ほぼ」の正体は、体育だったのだ。
「体操はできますが、それ以外はあまりできません。球技は苦手。何より苦手なのが水泳。体脂肪率が低すぎて、プールで沈んでしまうのです」(同)
床運動の世界王者の意外すぎる弱点だった。
(プレジデントFamily編集部 森下 和海)
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