1. トップ
  2. 新着ニュース
  3. 経済
  4. ビジネス

性格4タイプ別!「悩みのタネ」の消し方

プレジデントオンライン / 2016年3月29日 8時45分

心理学者 臨床心理士 植木理恵氏●日本教育心理学会で最難関の「城戸奨励賞」「優秀論文賞」を史上最年少で連続受賞。現在、カウンセラーおよび慶應義塾大学で講師をつとめる。著書『脳は平気で嘘をつく──「嘘」と「誤解」の心理学入門』など。

即断即決できる人が優れていると思われがちだが、本当なのだろうか――。いま、優柔不断な人の“結論延期能力”が高い注目を集めている。経営者のキャラクターもさまざま。まず、自分の性格や資質を伸ばすことを考えよう。

──あのときの決断は本当に正しかったのだろうか。判断する局面の大小にかかわらず、会社のプロジェクトを一度でも任されたことがある人ならば、こんな堂々巡りな考えに取り憑かれた経験があるのではないだろうか。

あるいはそもそも決断ができない、いつまでもデータをこねくり回してしまうなどなど。大局を見据え、いつでもブレない態度で瞬時に的確な判断を下す……そんなふうにありたいはずなのに、現実に直面する自分は迷いだらけ、常に悩みのタネは尽きない。あぁ、自分はなんてダメなヤツなのだろう。

「でも、最新の心理学では、即断即決型よりも優柔不断型の性格が、評価を得つつあります」

悩めるビジネスマンにこんな福音の言葉をくれたのは、心理学者の植木理恵さん。テレビでもおなじみの気鋭の臨床心理の専門家である。

「実際、名リーダーといわれる方々には、いわゆる“優柔不断”な方が意外に多いのです」

この生き馬の目を抜くビジネス界で優柔不断でよしとはその心やいかに。

悩みのタイプを分けるのに、2つの軸で考えてみます。

1つ目が、遺伝的な性格とされる「楽観主義(楽天的)」か「悲観主義(冷静)」かによる分け方。もう1つが、社会的に身につくとされる「主体的」か「受動的」かという分類です。

最新の脳科学で、楽観性・悲観性というのは“セロトニン運搬遺伝子”が長いか短いかで説明されると判明しました。だから、もともと悲観的な人に楽観的になれと言ってもそもそも無理ということになります。それは、生まれついての“キャラ”なのです。

もうひとつは、生まれてからの経験で身につく後天的な資質です。心理学者のド・シャームが提唱して、最近注目を浴びている考え方です。英語で「locus of control」と呼ばれるもので、訳すと「コントロールの所在」です。簡単に言うと、物事に主体的に動くか、それとも受動的に動くか。ド・シャームは、主体的な人間をチェスの指し手(オリジン)タイプ、受動的な人間をチェスの駒(ポーン)タイプと名付けました。

ここで、「楽天的か、冷静か」「主体的か、受動的か」の2つを基軸にして図版にしたのが<表>です。それではこの4つの特徴を見てみましょう。

まずは「楽天的で主体的な人間」です。いわゆる即断即決ができる人。情熱を持って前進する。最もみんながこうなりたいと願う、強いリーダーの典型でしょう。多少のリスクには目を瞑って、大きな賭けに出る人です。イケイケどんどんで強烈な上昇志向を持っています。

■大きな賭けに出る上昇志向の強い人

現代の経営者で言えば、さしずめ一代でソフトバンクグループを築き上げたソフトバンクグループ社長の孫正義氏でしょうか。在日韓国人として生まれながら、数々の逆境を乗り越え、不屈の楽観主義で日本一の大富豪になりました。その姿は、まさに誰もが憧れるリーダーそのものですよね。

ただし、このタイプはメンタルヘルス的に最も危険です。リターンも大きい半面、リスクも大きい。即断即決にも善し悪しがあり、孫さんのことではありませんが、自殺ですらすぐ実行してしまいかねない危うさがあります。

次は「楽天的で受動的なタイプ」です。指揮者がイメージしやすいでしょうか。個性的だけれど、全体のハーモニーを導く役割もできます。長嶋茂雄さんはこのタイプの典型です。チーム所属意識はとても強いが、独裁者にはならない。同時に「巨人は永久に不滅です」と言える楽天性を持っています。

経営者で言えば、京セラ名誉会長の稲盛和夫氏でしょうか。「世の中はきっと良くなる」という信念をベースに、大きな決断をしていきます。加えて、京セラ、KDDIなど自ら起こした事業を、惜しむことなく後進にポンとバトンタッチできる楽天性を持っています。多くの創業者が、後継者指名に苦しみますが、そのようなところにも稲盛さんの楽天的な資質がよく表れていると思います。

さらに京セラは、従業員同士の交流を深める「コンパ」と呼ばれる飲み会を推奨しています。お互いに率直に言い合える空間をつくろうとするのは、楽天的で受動的な稲盛さんならではのアイデアではないでしょうか。

孫さん、稲盛さんの楽天性は、物事のいい面がよく見通せる特徴があります。おもしろいことを探して夢を追っていく心なんです。それが、世の中を変えるのだという情熱的なカリスマ性につながっていきます。

■決して本業から道を踏み外さない

次に、冷静な2タイプについてお話しします。冷静なタイプはリターンよりもリスクが見えます。物事の悪い面がよく見えます。よってリスクを嫌うので、イケイケどんどんのタイプからは鬱陶しがられる存在でもあります。でも、ひとたび有事に陥れば、「そんなに深くまで考えていたのか」と評価が逆転する可能性がある。

それを土台に、「冷静で主体的な人間」について考えます。

こちらは、頭がずば抜けてキレるエリート官僚タイプです。中央集権的なスタイルを取りながら、現場に自分の意向が届いているかを気にしています。

ファーストリテイリング会長兼社長の柳井正氏がこのタイプでしょうか。世界規模の新市場を開拓する企業買収(M&A)を繰り返しながらも、本業から道を踏み外すことはほぼありません。それは、どこまでも会社を膨張させていく孫さんや、メーカーから通信、航空へと経営手腕を発揮した稲盛さんとは対照的です。冷静に市場分析してリスクを最小限に抑える。まさに、主体的かつ冷静なリーダーです。組織にとっては最も手堅く、またライバルとしては最も手強い相手でしょう。

■仮説と検証で常識を覆す

最後の「冷静で受動的な人間」は、とてもおもしろいタイプですね。こういった方が、経営者として優れているということを、意外に思う方が多いかもしれません。本来、このタイプは、観察眼が鋭く、研究者に多い。大きな一発逆転を狙うというよりも、組織に所属していて、コツコツと地道な研究を続けて、確実によいものをお届けしようとする人です。年を経るごとに研究成果が加速度的に増える、大器晩成型です。

セブン&アイHD会長兼CEOにして、流通王の鈴木敏文氏はまさにこのタイプではないでしょうか。鈴木さんのデータ分析に基づいたマーケティング手腕はまさに研究者のそれに近いですよね。

セブン&アイグループでは、毎週日本全国から店長を集めて、鈴木さんが経営理論についての講義をされています。大学の講義のようですね。その店長たちは、その理論にもとづいて各店で実践をしていきます。

鈴木さんのお話の中で「夏場の24℃と冬場の24℃」という有名な逸話があるそうです。データを仔細に眺め、同じ24℃でも真夏には涼しく感じるので、おでんが売れる、逆に冬場は暖かいと感じるのだからアイスクリームが売れると看破して、逆転の発想で成功を呼びました。夏におでんが売れるわけがない、冬にアイスクリームが売れるわけがないという、これまでの常識を、仮説と検証を繰り返すことで、覆したわけです。冷静な分析能力と、自分はお客さんから答えをもらうんだという認識は、鈴木さんが最強のマーケッターと呼ばれる所以です。

■人材として必要な“結論延期能力”

このように、4つのタイプそれぞれに一長一短があります。例えば、一般に、「物事に対して受け身」というと悪いイメージがありますが、私の経験則から言えば、謙虚な性格で育ちのいい人が多いのが特徴です。

心理学には“学習性無力感”という言葉があります。実は、無力感というのを人間は学習するのです。世界情勢や景気、政治など、自分の力ではどうしようもないものと常に対峙してきた経営者はこの傾向が強まります。言い換えれば、ある種の達観とも成熟ともいえる視座だと思います。問題解決が得意で、目の前で人が困っているのを助けたいという思いを強く持ちます。

逆に、スーパーでてきぱきと働くおばちゃんなどは主体的に動くタイプが多いんですね。この売り場のレジの列を長くするも短くするも自分の手腕にかかっていると思うのは、きわめてチェスの指し手的な感覚なんです。

冒頭でお話しした即決型か、優柔不断型かという話に戻れば、冷静なタイプが優柔不断の気質が強いといえます。

最近のアメリカの論文では“結論延期能力”というものが提唱されています。つまり、拙速な結論を出すよりも、先に延ばす能力は人材としても必要だし、メンタルヘルス的には生きる力になります。成果ももちろん上がります。これまでの常識では、決断できる人のほうが優れていると思われがちですが、心理学の最前線では優柔不断型が評価を得つつあります。

それでは、自分の性格や資質について悩みを持っている人はどうすればよいのでしょうか。

その対処法は、開き直ることにあります。「自分は物事の悪い面ばかりを見てしまう」「受け身である自分を直したい」……。そんなときは、物事の悪い面ばかり見えてしまうことや、受け身であることが悪いことなのかを考えてみましょう。これまで述べてきたように、それぞれのタイプ、性格であっても、その特性を伸ばすことで人生を成功に導くことができます。

■多様性を重視した“SMAP効果”

誰もが孫さんのようなリーダーシップに憧れますが、必ずしもそういったリーダーが成功するとは限りません。トレーニングで性格はある程度変えることも可能ですが、まずは自分の性格や資質を伸ばすことを考えましょう。

これは組織論にもつながる話です。

国民的アイドルグループSMAPの成功を分析・研究する中で、“SMAPエフェクト”という心理学用語が論文にも用いられるようになりました。

一人一人は大した力がなくても、個性が異なるバラバラの5人をひとつのチームとして活動させることで、大きな力を生むことが確認されています。

心理学用語でビッグファイブと呼ばれるもので、以下のような5つの性格の人間がひとつのチームになると大きな力を発揮することがわかっています。

A=平凡な性格(average type)
B = 危険志向が強い(black listtype)
C=穏健(calm type)
D=リーダー(director type)
E=変人(eccentric type)

多くの企業の人事部は、Dタイプの人間を高く評価し、集中して採用する傾向がありますが、それはまったく間違っています。組織が最大限の力を発揮するには、バラバラのタイプの人材が必要なのです。事実、個性豊かに人員配置された組織では、メンタル疾患が少なくなることが明確にわかっています。性格において多様性を重視することは生産性を上げることになります。

SMAPが所属するジャニーズ事務所のグループは、個性のまったく異なるメンバー構成にこだわってつくられています。それによってそれぞれに役割や活躍の場が与えられるのです。イケメンだけ、優等生タイプだけではダメということです。

もしあなたが悩めるビジネスマンなら、どうぞ胸を張って、“ありのまま”の性格で長所を伸ばしてください。

悩まず、レリゴ~♪は、心理学的に正しいのです。

■性格4タイプの特徴

強いリーダータイプ
孫正義型「楽天的で主体的」

[特徴]即断即決で物事を決められる人。みんながこうありたいと思う、強いリーダータイプでもある。
ただし、ハイリスク、ハイリターンで大きな賭けに出る傾向にある。強烈な上昇志向を持っている。何かに取り組むと、イケイケどんどんで進む。メンタルヘルス的には注意が必要。決断力の強さがリスクになることもある。

指揮者タイプ 
稲盛和夫型「楽天的で受動的」

[特徴]個性的ではあるけれど、全体を見通しながら組織のハーモニーを生み出す資質に富んでいる。
チーム所属意識は強いが、独裁者にはならない。「世の中はきっと良くなるはずだ」といったような、自らの信念に基づき、大きな決断ができる。
おもしろいことを探して、夢を追っていく心を持っている。

エリート官僚タイプ
柳井正型「冷静で主体的」

[特徴]中央集権的な手法を取ってはいるものの、実は現場に自分の意向が届いているかを気にしている。
世界的な規模で事業を拡大させても、他分野の事業には手を出すことは少ない。
市場を冷静に分析する能力に長け、リスクを最小限に抑える。組織にとって最も手堅い存在だが、ライバルにすると手強い相手。

研究者タイプ
鈴木敏文型「冷静で受動的」

[特徴]観察眼が鋭く、地道な研究に向いている。大きな一発を狙うよりも、組織に所属して、コツコツと研究を続け、確実にいい結果を出そうとする。
このため、冷静な分析能力を生かして、仮説と検証を繰り返すことによって、これまでの常識を覆したりする。データ分析に基づくマーケティング手法に生かせる。

(dancyu編集部 渡辺 菜々緒 小川 聡(植木氏)、小倉和徳(稲盛氏、孫氏)、岡倉禎志(柳井氏)、相澤 正(鈴木氏)=撮影)

この記事に関連するニュース

トピックスRSS

ランキング

記事ミッション中・・・

10秒滞在

記事にリアクションする

記事ミッション中・・・

10秒滞在

記事にリアクションする

デイリー: 参加する
ウィークリー: 参加する
マンスリー: 参加する
10秒滞在

記事にリアクションする

次の記事を探す

エラーが発生しました

ページを再読み込みして
ください