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日本人社員座談会「中国企業で働くということ」

プレジデントオンライン / 2016年4月27日 12時15分

多くの日本人にとって“近くて遠い国”、中国。しかしここ数年は、本当に身近になってきている。「爆買い」という言葉はすっかり定着したし、増え続ける観光客を街中で見ることも増えた。

なにより台湾の鴻海(ホンハイ)精密工業がシャープを買収する、東芝が家電部門を中国の美的集団に売却するといったニュースに接して「自分が働く会社が中国系企業に買収される、つまり日本に住んでいても、中国企業で自分が働くという可能性があるのか」と感じた人も多かったのではないだろうか。「日本にいながら中国企業で働く」日本人は今後増えていく可能性が高い。

外資系企業で働く人の話を聞くことは珍しくないが、一般に外資系企業といえば欧米の企業をイメージする。中国企業で働くとはどんなことなのかについての情報は、まだまだ少ない。語学力やコミュニケーション、商慣習などの面において、日本の伝統的な企業、あるいは外資系企業とはどこが違うのか? 本記事では中国企業に勤める日本人の広報担当者3人に集まってもらい、入社を決めた理由から中国人の上司や同僚との付き合い方、働いていて驚いたことなど、「中国企業あるある」をテーマに話を聞いた。

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≪取材に協力いただいたみなさん≫
・アリババ……阿里巴巴集団(Alibaba):アリババ株式会社 社長室広報の木村良子さん
・バイドゥ……百度(Baidu):バイドゥ株式会社事業企画本部マーケティング部広報の岩間千香子さん
・ファーウェイ……華為技術(Huawei Technologies):華為技術日本株式会社広報部マネージャーの江島由賀さん

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■3人とも、初めての外資系企業

――自己紹介をお願いします。

【バイドゥ】バイドゥ広報の岩間です。入社は2014年6月で、その前まで9年間、某ポータルサイトで広報を務めていました。バイドゥでは1人で広報業務を担当しています。

【アリババ】アリババ広報の木村です。2009年9月に入社、今年で7年目になります。前職は広報ではなくて、不動産検索ポータルサイトの運営でした。ちょうど紙媒体とWeb媒体の勢力図が変わってきた時代で、今後もネット業界に関わりたいと思ったこと、国内市場の成長が頭打ちになるのを感じていて、海外企業に興味があったのが転職の理由です。海外とインターネットをキーワードに仕事を探している中で、縁があってアリババに入社しました。広報は3年前から担当しています。

【ファーウェイ】ファーウェイの広報、江島です。入社は2012年で、その前はあるゲーム会社で約7年企業広報を務めました。その間、出産をし、40歳になるタイミングで「広報として新たなことをやってみたい」と思ったのが転職の理由です。

――3人とも直前まで日本企業に勤めていた。いくつかの選択肢の中から、今の企業を選んだ決め手は?

【バイドゥ】オフィスが六本木ヒルズなんです。人生で1回くらい六本木ヒルズで働いてみたいと思っていたもので(笑)。真面目な理由としては、「これまでのキャリアを生かせるな」と思ったのが大きいです。前職ではポータルサイトや検索サービスの広報をしていたのですが、バイドゥもネット企業ですから。ITや検索と人との関わりがテーマであるなど、共通点があったのが決め手になりました。

バイドゥ株式会社事業企画本部マーケティング部広報の岩間千香子さん

私は転職しようと思って最初に受けたのがバイドゥだったんですが、面接したその日に結果が出て、積極的に誘われたのもあって決めました。「捕まえたら離さない!」みたいな感じで、スピード感も良かったんですよね。

【ファーウェイ】前職がゲーム会社だったので、IT系、コンテンツ系の広報職に限定して探しましたが、転職するまでファーウェイのことは知りませんでした。調べてみるとアニュアル・レポートなども2000年から出していて、しっかりしている会社だということが分かって決意しました。当時、中国の企業であるということで製品や技術の信頼性に疑問を投げかける声(注:米政府は2012年、Huaweiの創業者兼CEOのRen Zhengfei氏が人民解放軍に所属していたことから中国政府とのつながりがあると疑い、通信インフラでの同社技術の利用を推奨しないという報告書を出した)が出ていましたが、ファーウェイはそうした中でも各国有識者を招いたアドバイザリー・ボードを設置するなど、適切な対応をしていたのを見て、その辺りも信頼できるかなと。周囲の中にも、いまは中国企業に転職するのはいいんじゃないと勧めてくれる人もいました。

いくつか企業を紹介してもらった中でも、ファーウェイには核になる強みがあると感じました。核がある会社は、広報としても最前線で核となる強みを探る面白さがあるんですよ。自社でチップセットから作っており、技術力があります。もちろん成長もしていましたし。

――木村さんは海外企業に興味があったといっても、中国と縁があったとか、中国語が話せたというわけではないですよね。

【アリババ】そうですね、学生時代に行ったのはイタリアとアイルランドで、全然関係ありません(笑)。(2009年に入社したころ)中国は当時伸びているという印象がありました。欧米系企業も憧れますが、すでにプレイヤーがたくさんいて、英語も大して話せない私が行ってもどうにかなるとは思えなかったし。その点、中国はまだまだ携わっている人が少ないので面白そうでした。ソフトバンクグループなので、企業としても安心感があった。

■仕事で中国語は必要ない、英語もそこそこ

――語学はどのぐらい求められる? 中国語は必要?

【バイドゥ】入社時「中国語ができますか?」と聞かれましたが、全然できないと答えました。いま勉強中です。本社広報とのやりとりは英語です。だからといって、特に入社時にTOEICの点なども聞かれませんでした。私の場合、中学と高校でアイルランドにいたので、英語は問題ないのですが。

アリババ株式会社 社長室広報の木村良子さん

【アリババ】アリババも中国語は必須ではないですね。逆に本社の日本担当の人が日本語を話せます。中国の人は優秀です。

私も本社とのやりとりで英語が必要ですが、広報として採用されたのではなかったため、採用時に英語は問われませんでした。ポジションにもよりますが、英語ができなくても突出したスキルがあることの方を重視して採用しているように見えます。アリババの場合、大事なのは「顧客である日本企業に対していいサービスができるかどうか」。英語のアシスタントをやってくれる人がいるので、語学は問題ではありません。

【バイドゥ】(同意しながら)うちも同じ。中国のスタッフは日本語を話せますね。中国語も英語も翻訳してくれる人がいるし。

【ファーウェイ】ファーウェイでは公用語が英語です。お互い第二外国語なので、多少文法が違っていても意思疎通できればOKです。あと面白いのは、漢字を使うので、メールを見ているとなんとなく分かるところがあります。

 

■家族が大事、休みは取りやすい

――残業はどうですか。休みはとりやすい? 福利厚生はどんな感じ?

【ファーウェイ】福利厚生は日本の法律と一般的な慣習に沿ったものです。私は子供がいますが、働きやすいです。昨日も子供の入学式で丸一日休みを取りました。子供の用事はほぼ確実に休めるし、中国本社から出向している人たちも、中国から御両親が来ている時などはきちんと休みます。成果さえ出れば時間が柔軟で休みが取りやすいので、日本企業よりも働きやすいです。

【アリババ】中国本社ではあまりみんな残業していませんね。6時になったら席にいない(笑)。メリハリがあって、重要なイベントがあるときは2日間ぐらい寝ないで仕事していたりするけど、日本みたいに理不尽なダラダラ残業はないし、それをよしとする文化もありません。休みを取りにくいということもないです。

【バイドゥ】日本の法律と同じで、福利厚生が充実しているというわけではないですね。むしろ前職の方が充実していましたが、休みにくいということはありません。

【ファーウェイ】あと中国ならではということだと、普段は西暦ベースでビジネスが動いていますが、祝祭日は旧暦ベースのものも多いので、2月の旧正月のときはスローダウンします。

【バイドゥ】そうそう。旧正月は休む気満々ですよね。そのためにみんな全ての仕事をこなしている感じ。

■スピード感が違う、組織がフラット

――中国企業で働いて驚いたことは何ですか。

【バイドゥ】入社もそうでしたが、仕事を始めた後も「スピードが速い!」というのはいつも感じていますね。決済を取るときなど、日本企業と全然違います。「何日か待ってから……」といったことはなく、トントン拍子で進む。基本的にトップダウンで、上からの指示や注文には、絶対に即対応しなければならない。しかもそれが、突然やってくるんです(全員うなずく)。前職では、全員で考えて、上の人の了承を取って、決済を取って……という進め方でしたが、全然違います。突然嵐のように(命令が)やってくるので、全力で対応します。慣れるまでは時間がかかりました。

華為技術(ファーウェイ)日本株式会社広報部マネージャーの江島由賀さん

【ファーウェイ】大きな会社なんですが、組織がフラットだと感じます。私が最初に勤めたのは銀行ですが、主任、課長、係長と稟議を通していくので、物事を決めるのに1~2週間かかることもよくありました。ファーウェイでは、直接責任者と話をしてOKならそれでいい。他のメンバーはCCしておけばOKです。

前職のゲーム会社は3000人以上の従業員がいましたが、創業が1975年と新しく、ベンチャーの雰囲気がありました。ファーウェイは17万人の会社ですが、前職以上のスピード感があります。どんどん経営陣に話を上げるし、指示も来る。自分が責任を持つプロジェクトについて上から話が来た場合、それについて直属の上司にも伝えて判断を待つ……といったことはしません。最初の頃、「自分で確認すれば? その方が早いでしょ?」とよく言われました。責任者である自分が上の人に直接承認を得ることが普通で、誰も気にしませんね。

【アリババ】メールのCCに社長が気軽に入ってきますよね。あと、時には見切り発車で動くこともあって、現場は大変。「あと1週間しかないけど、それをやるんですか?」みたいなこともよくあります。

■変化に弱い、安定を求める人にはおすすめしない

【バイドゥ】良くも悪くもスピード感が違う。スピードがメリットだったり、デメリットだったり。

【ファーウェイ】閉鎖的な日本企業だと“上司の俺を抜かして話をするのか?”みたいなことがありそうだけど、そんなことはまったくないですね。

――何かを決めるのに、関係者が5人いて、4人はOKだけど1人は反対……といった場面は? 日本だとそこの調整に時間がかかるが。

【全員】(全員一致で)ないですね。

【アリババ】責任者が明確になっているから、そんなことはない。”俺は知らされてない”ということもない。

――日本企業との違いといえるが、それはいいところと感じている?

【ファーウェイ】いいところですが、実際に働く立場としては急に仕事がくると大変。それも嵐のように……(苦笑)

【バイドゥ】どれを優先して何からやっていくべきか。業務のプライオリティが日々変わりますね。

【ファーウェイ】柔軟性が大切。

【アリババ】変化に弱い人、安定していたいという人には、最初は厳しいかもしれない。

■中国人エリートは現実的で合理的

――3社とも中国の優良企業で、中国人エリートが集まっている。中国のエリートってどんな人?

【ファーウェイ】現実的で合理的です。

【アリババ】中国国内の国内の名門大学を出て、さらに海外に何年か留学している、海外で働いていたなどのグローバル経験を持っている人が多いですね。

座談会を行ったのは、通信機器メーカー、Huawei(ファーウェイ)こと華為技術日本株式会社。ファーウェイの本社は広東省深センにあり、従業員17万人以上。世界第3位のスマートフォンメーカーとして広く知られる。ファーウェイ・ジャパンの本社は大手町にあり、従業員は現在約820人。
――仕事をする上で、違いに驚いたことは?

【ファーウェイ】日本と違う点として、計画を具体的に詰めないですね。ざっくりと方向性と大きな目標だけを示し「いつまでに」とだけ言われます。「あとはあなたたちで考えて」という指示なので、こちらの自由度が高いです。

【アリババ】役割分担が明確。権限移譲というか。日本の場合、任せたと言いながらも一つ一つ決めるのに全部許可をとらなければならなくて、結局なにも任されていないということがあるじゃないですか。中国企業は逆で、ざっくりとした指示がやってきて“そんなざっくりしたまま落としてくるの?”と、最初は戸惑いました。“これで何をすればいいの?”と。基本的に細かい指示はない。任せてくれているのかもしれない。取締役もよく「プロフェッショナルになれ」と言っていますね。

【バイドゥ】日本は方向性を決めるのに大きな会議をして、なんとなく全員の合意をとってから進む……というところがありますよね。中国ではトップが決定したものが降りてくるだけで、確認の部分がありません。トップは誰がどの分野を得意なのか分かっているので、的確に指示をしていると思う。少なくとも私にとっては、その指示がやりやすい内容のことが多いです。部長を飛ばして指示がくることもよくある。

具体的な進め方などは担当者に任されるので、その人に得意分野があると(中国企業で)活躍しやすいと思います。逆に、日本の会社は部門異動が多いイメージです。それではその人の得意分野ができないのでは。

――成果主義について。日本の会社を見ていると、ある程度の規模の組織にはほとんど働いていない人がいることが多い。またそういう働かない人が待遇のよい正社員であったりすることが問題になっているが、そういう場合はどうなる?

【バイドゥ】日本支社は30人しかいないので、そういう人は思い当たらない。多分、働かない人は辞めていくのでは……。本社は4万5000人以上いますが、やっぱり仕事ができない人が思い浮かばないです。

【アリババ】社員が若いですね。大学みたいな雰囲気があり、“これをやれといわれたからやっている”というよりは、興味本位でいろんなことをやっている感じがあります。仕事をせずにボーッとオフィスにいるような人はいない。

【ファーウェイ】本社には隠れ窓際族もいるのかもしれないけど、直接会ったことはないですね。昇進のスピードが速く、できる人はどんどん上に上がっていきます。「じゃあ次はこれをやってみろ」と人が育つ土壌を与えてくれる。そういう人が目立つだけかもしれませんが。日本に来ている中国の人は頭の回転が速い人が多い。30代で日本人の部下、中国人の部下がいる。しかも、日本について興味を持っており、勉強しています。勉強熱心です。

――若い人が年上の部下を持つこともある?

【全員】多いですね。

【アリババ】日本人でも中国人でもそれはあります。若い中国の人が年上の日本人を部下に持ったり……あまり年齢の感覚がないですね。基本的に姓ではなく、フレンドリーに名前やニックネームで呼び合っています。

――中国は、女性の進出が進んでいる印象がある。

【アリババ】アリババではマネージャー層の3割ぐらいが女性です。中国では女性が働くことが当たり前。子供を産んでもすぐ戻ってきて働いているのが普通です。

【ファーウェイ】ファーウェイはグローバルで管理職の9%ぐらいが女性で、本社のボードメンバーにも女性が3人います。技術系部門にも、管理系部門にもまんべんなく女性がいます。中国でも絶対数として理数系に女性が少ない(ので技術部門の女性が少なくなってしまう)という点はありますが、男女が同じ土台で働いています。

■話し合いがケンカみたい? 意見を言わないことは悪

――いまの会社で嫌な経験はある? 日本企業と比べて悪いところは。

【アリババ】悪いことではないかもしれないですが、意見をどんどんぶつけていく文化なので、最初は戸惑いました。私の場合、入社初日にオフィスで健康診断を終え、オリエンテーションを受けて即、中国に行ったんです。そのとき、隣の会議室で喧嘩しているような声が聞こえてきて、「なんかすごいところに来ちゃった……」と思ったのを覚えています。

日本だったら、いやと思うことがあると遠慮しますが、中国では直接ぶつけます。でも、終わったら普通に仲良く喋っていますね。むしろ中国だと「意見を言わないことが悪」みたいなところがある。とりあえず無理だと分かっていても、伝えてみよう、まずは言ってみなくちゃ、という文化です。こっちからすると、「なにを無理なことを言っているんだろう?」と思うこともしばしばですが、無理だろうとなんだろうと「とりあえず自分が思っていることを伝えておく」という感じのようです。

【バイドゥ】よく分かる。そういうことあるよね。

百度(バイドゥ)は、中国最大の検索エンジン提供会社。全世界の検索エンジンではGoogleに次いで2位。本社は北京にあり、社員数は4万5000人。日本では、2000万ダウンロードを達成したスマホ用日本語入力アプリ「Simeji」事業でも知られる。バイドゥ・ジャパンの社員数は現在約30人。
――そんな中にいて、自分も変わったと思う?

【アリババ】そうですね。言わないと自分がやりたいことができないし、向こうがどんどん言ってくるから、それに合わせていたらなにもできなくなる。だから、ある時は上の人から伝えてもらったり、ある時は英語がもっとできる人や中国人の同僚に「こう言って」と頼んだり。周りをうまく巻き込めるようになったと思います。

コミュニケーションしていくと、だんだん向こうも本音で言ってくれるようになったり、気をつかってくれたりする。なにも言わないで言いなりになっていると、本当にやりたいことがなにもできなくなると思います。

【バイドゥ】中国語という言語は、感情的に聞こえる言語かもしれない。いろいろ言い争っても、その後は何もなかったかのように、終わったらサラッとしている。切り替えが早いですね。

■文化が違う、と意識したほうが働きやすい

【ファーウェイ】欧米だと外見からして違うので、違う文化的背景を持つ人たちと意識して話しますが、中国の人は私たちと見た目は変わらない外見ですよね。その分、余計に違うことを意識しないといけないときがあると実感しました。

――はっきり意見を言えるようになったり、周りの人をうまく使えるようになるまで、苦労があった?

【アリババ】勇気を出さないといけない、と思いました。相手の面子をつぶすようなことを言ってしまうとまた喧嘩になるので、相手を立てつつ、私たち同じチームだよね? と言って意見を伝えるとうまくいくことが多いです。何か本を読んで参考にしたとかではなく、すべて現場で仕事をしながら学びました。

あと、 ふところに入ると暖かい人たちです。欧米の企業は公私をきっちり分けるイメージですが、中国企業は公私が混沌と一体化している。仕事の話もプライベートの話も同じチャットでやりとりしていますね。

阿里巴巴(アリババ)はオンライン取引のプラットフォームや決済サービスを提供する企業。BtoBマッチングサイトの「Alibaba.com」のほか、消費者向けにオンラインショッピングモール「天猫(Tmall)」「タオバオマーケットプレイス」を提供。後者2つで中国EC市場の約80%という高いシェアを誇る。グループの本社は中国浙江省杭州市にあり、社員数は全世界で約3万5000人。日本ではソフトバンクグループとの合弁で設立されたアリババ株式会社として展開。社員数は約70人。
――意思疎通は? 日本は会社が終わった後の飲み会、ノミニケーションが重要だなどと言われるが。

【アリババ】飲み会が必須、ということはないです。

【バイドゥ】でも、食事はよく行く。円卓を囲んで……これは大事。社員旅行もよく行っている。

【ファーウェイ】社員旅行は多いですね。そのあたりは一昔前の日本の会社と似ているのかも。

――辞めたいと思ったことは?

【アリババ】特に中国の会社だからという理由で辞めたいと思ったことはない。

【バイドゥ】働いていて自分のプライドを傷つけられたことはないし、いやな思いもあまりありません。辛いと思うのはむしろ、中国企業だからという外で感じる偏見ですね……。

【アリババ】カントリーリスクは感じます。ビジネスの世界と関係ないところで、たとえば尖閣問題などの話が勃発すると一気に仕事が滞る。

――2010年の尖閣諸島衝突事件のときは?

【アリババ】政治的には対立があったかもしれませんが、ではその頃(アリババグループが運営する)タオバオなどで日本の商品が売れなくなったかというと、そんなことはなかった。とはいえ、中国は何かと変化が激しい。自分たちとは違うところで振り回されるというか……。分かってはいるが、どうしようもない部分ですね。

【ファーウェイ】私の場合、入社数カ月後に2012年の反日デモが起きました。そうした中、本社でのメディアツアーに日本から記者の方をお招きしました。前から予定していたものだったのです。市の中心部ではデモが続いていました、そこから離れた社内はいつも通りで「こんなときによく中国まで来てくださいました」と本社の経営陣も喜んでいました。われわれは幸い、日本でビジネスをする上で影響もありませんでした。でも、中国に対してよくないイメージが日本に残ったかなという気はします。中国の企業に転職すると言うと、大丈夫?と心配されることもありました。両親には、“大丈夫、前の会社より売上も大きい”と答えましたけど。

【アリババ】なかなか理解してもらえないですね。中国企業というだけでなんとなくうさんくさいと思われて……。漠然とした偏見があるのを感じます。

【バイドゥ】バイドゥはコンシューマー向けと法人向けビジネスがありますが、コンシューマー向けビジネスでは何かと「中国企業だから……」とユーザーにSNS上で言われます。今日のように中国企業の広報が集まると、「中国に対する偏見をどうしたらいいんだろう?」という話をよくしています。

【アリババ】これは、同じ広報でも国内企業だとなかなか共有できない悩みだと思う。そうはいっても、最近は中国を避けるのではなくどうやって向き合うかという方向に日本も変わってきていると感じます。もっといろんな情報を発信していけたらと思っています。

――いまの悩みは、社内よりも中国企業への偏見とか対外的なこと?

【バイドゥ】そうですね。他社からの反応を見たときに、「そうだ私が勤めている会社は中国企業だったんだ」と改めて思います。

【アリババ】私の場合は社内でも悩みがあるかな。本社のメンバーにとって日本はあくまで一市場にすぎないので、リクエストを伝えても応えてもらえないことがあります。日本だったら当たり前と思うことでも、彼らはそうは思ってくれません。ただ、合理的な説明ができれば「いいね!」と取り入れてくれることもあるので、コミュニケーションがとても重要だと実感しています。分かってもらえたときの相乗効果はすごくあります。

――今後の目標は。

【アリババ】日本では、アリババグループが運営しているオンラインショッピングモールやBtoBマッチングサイトへ、日本の企業に出店してもらう活動を行っています。ですが、日本の企業は中国に興味はあってもまだ踏み切れないところが多い。参加企業の数をもっと増やしていきたい。

中国の人は日本の商品を欲しがっています。それが爆買いにつながっているわけですが、日本の企業はまださまざまなリスクを心配して躊躇していることが多いようです。リスクは気にしつつも、積極的にチャレンジしてほしい。日本の人口の14倍と、市場はとても大きいのですから。

プライベートでは、2020年の東京オリンピックで中国の人に日本の文化や商品を知ってもらうイベントなど、架け橋となるようなことをしたい。日本酒が好きなので日本酒を広げたいなとも思っています。

【バイドゥ】仕事上の目標としては、バイドゥ社員30人全員が広報のような動きをしてもらいたいと思っています。会社のみんなが仕事好きで、誇りを持っているので、いい形で彼ら自身から情報発信ができるようになると、イメージも変わるかなと期待しています。ソーシャルメディアかもしれないし、いろんな場に出たときにそんな風に話をしてほしい。そういうセミナーを社内でやることもあります。広報能力をみんなに植え付けるというのが直近の目標ですね。

また、さまざまな企業が中国語対応などを考えていると思うので、手助けができるようなことが会社でできれば。個人では、英語ができるので東京オリンピックでボランティアもいいかな。

【アリババ】文化を知っているというのは大きいですよね。中国人が喜びそうなところを知っている。ツボが分かる……。

【ファーウェイ】ファーウェイに入社して、国際関係にビジネスが左右されることがあるということを実感しました。日本の人の中国や中国以外の国に対する見方が、偏見なく普通になってくるといいなと思っています。10年、20年かかるかもしれませんが……。

ファーウェイ日本法人の経営陣が、今年入った新入社員に「すべてのことにオープンに」と話していました。自分と異なる価値観を否定するのではなく、とりあえず耳を傾けて理解してみようということが、個人、会社、そして社会の発展に大切だと実感しています。長期的にそういう風になったらいいなと、そういう変化に、広報として関わっていきたいです。

(フリーランスライター 末岡 洋子)

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