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ワ―ママがカチンとくる「仮面イクボス(男性管理職)」の正体

プレジデントオンライン / 2016年5月1日 10時15分

■なぜ、“仮面イクボス“は減らないのか?

女性の活躍推進を阻む要因をつき詰めていくと、

・「いつでも、どこでも、いつまでも」という働き方が求められる職場
・金太郎飴のような同質的な価値観に慣れ親しんだ職場の存在

が明らかになります。

この阻害要因をクリアしようとしたとき、長年そうした環境で違和感なく働いてきた、男性管理職の意識の変革が必要との指摘は以前からありました。

最近では、企業のなかでも男性管理職の意識を問題視し、「イクボス*」を増やすために、研修などを通じて意識啓発活動に励む企業も出てきています(*部下の仕事と生活の両立に配慮しながらキャリアを支援し、自身も仕事と生活を充実させる経営者や管理職)

しかし、そのような企業でも、男性管理職の意識や行動の変革が難しいことを筆者自身が数多く耳にしています。

日本総合研究所では、従業員数300人を超える企業の東京の事業所で働く40~59歳の男性管理職約500人を対象に調査(以下、アンケート調査)を行いました。

そこでは、約9割の男性管理職が女性の積極的登用には理解を示しながらも、女性の積極登用の足かせとなる長時間労働に対する意識が未だに変わっていないなど、意識のギャップがあることが明らかになっています。

本稿では、複数企業の男性管理職へのヒアリング結果も参考にしながら、“仮面イクボス”が減らない理由を分析します。

▼女性登用に賛成しつつも変わらない男性管理職の意識とは

女性登用に賛成しつつも変わらない男性管理職の意識として、

(1)長時間労働の許容意識
(2)固定的な役割分担(育児)への理解
(3)女性部下に対する苦手意識

という3つを取り上げます。

■男性管理職「(女性も)長時間労働は当たり前」が本音?

【(1)男性管理職の意識:旧態依然として長時間労働を許容】

アンケート調査結果では、自身の昇進のためには、「定時以降に上司から依頼された仕事を行うことや、会議に出席することを仕方がない」と回答した男性管理職は全体の約6割、女性の登用に賛成している男性管理職においても、この傾向は変わりません(図表1)。

筆者が行ったヒアリングでは、「昇進のためには成果が必要で、長時間労働が求められているわけではない」という意見もあったものの、「常時ではないが、時には責任を持って対応しなくてはいけないときがある」といった意見をはじめ、締め切りの厳守や現場の人手不足感を指摘する意見も寄せられました。

結局のところ、会社や仕事の都合を優先し、責任感を持って仕事をこなすことで長時間労働になっていることは否定できません。こうした事実は、家事・育児などとの両立を目指す女性社員にとっては「障壁」となるのは確実です。

そこで、男性管理職に今後、長時間労働を改善していくために必要なことを尋ねたところ、

「働きやすい制度を充実させても、そのようなルールよりも周囲(特に人事評価を行う上司)の価値観が優先される風土を変えることが必要」

「時間内にアウトプットを出せるようタイムマネジメントし、残業なく仕事を終える人が評価されるべき」

という意見も寄せられました。会社の「仕組み」が変わらない限りは、男性管理職は長時間労働を甘んじて受け入れるということなのかもしれません。

仕事量や繁忙のリズムを改善するという業務特有の事情の問題解決と併せて、人事評価制度の在り方や男性管理職(その上司含め)のワーク・ライフ・バランスへの意識啓発には未だに改善の余地があるといえます。

■男性管理職「子どもが3歳までは母親は育児専念すべき」が本音?

【(2)男性管理職の意識:3歳児神話は薄れていない】

アンケート調査結果によれば、女性の登用に賛成している男性管理職のうち、「子どもが3歳くらいまでは、母親は仕事を持たずに育児に専念すべきだ」と回答したのは全体の約6割。「女性の登用に賛成」しているにもかかわらず、3歳までは母親が育児をという考えを持っているのです(図表2)。

ヒアリングのなかでも、

「男女の良さを活かす役割分担を行うと、母親は子どもとの接触時間を増やし、父親は生活費を稼ぐなど外での活動を多くして、家族全体として幸せな形を作っておくべきだと思う」

「父親と母親が家庭で活躍できる時期は違う。初期段階では、父親が支援しながらも、母親が主になると思う」

など、育児へ専念する母親像を求める男性管理職が多いと感じました。夫婦で役割分担は(物理的に)半々にした方がよい、といった性別役割分担とは異なる意見を持つ男性管理職はごく少数でした。

さらに、ある女性管理職は次のように話してくれました。

「子どもの健康問題など事情を抱えている一部の男性管理職を除き、男性管理職のなかで、自身が育休を取得する、あるいは、男性部下の育児休業取得に理解のある人は周囲に少ないです」

男女を問わず、ワーク・ライフ・バランスの在り方も多様になるなか、男性管理職は、自身の価値観に捉われずに、部下の求める働き方を理解し、支援できるかが課題といえます。

■男性管理職「女性部下は組織への忠誠心が低い」

【(3)男性管理職の意識:女性部下を敬遠してしまう】

アンケート調査結果によれば、「女性部下との仕事はやりづらい」と感じている男性管理職は全体の約6割、女性の登用に賛成している男性管理職でも実はこの傾向は変わりません。

その理由として、半数以上の男性管理職がパワハラやセクハラへの対応、コミュニケーションのしづらさなどが挙げられています。

筆者が行ったヒアリングでは、年齢の若い男性管理職を中心に、「男性、女性の差を感じたことはない」という意見も多く寄せられました。しかし、年配の男性管理職からは、次のような指摘がありました。

「女性は組織へのロイヤリティが低く(優秀な女性の場合は転職するなど)、立身出世を第一に考える男性部下と同等に考えることは困難です」

「共稼ぎの場合でも、男性が家計のラストリゾート(最後の手段)という常識が変わらない限り、職場のストレスなどで『女性のほうが簡単に辞める』という現象が存在し、『簡単に辞める人を部下にはしたくない』という意識が生じてしまいます」

仕事の能力上は、男女の差がないと頭では理解していても、勤続の可能性が低い女性部下を敬遠する男性管理職は少なくないと感じます。

■「本物のイクボス」は、配偶者が正規職員の人だけ

▼ 家庭における経済的責任に対する使命感からの解放が“仮面イクボス”を減らす

今回のヒアリングを通して、意識のギャップが極めて小さかった(女性の積極登用に賛成し、なおかつ女性が働きやすい環境づくりの意識が高い)男性管理職に共通した特徴があることが分かりました。

それは、配偶者が正規職員として働いていることです。

アンケート調査では、男性管理職の約6割が、家庭における経済的責任を担うのは夫の役割であると回答しています。さらに、男性管理職(定年まで現在の企業に勤務予定)の約7割が、定年後も現在の企業にフルタイムで勤め続けることを希望していると回答し、仕事のやりがいよりも、雇用の安定や収入の高さを優先理由として挙げています。

これらのことからは、家庭を持つ男性管理職が抱える経済的責任は重く、会社優先、仕事優先にならざるを得ない状況が窺えます。

会社の女性部下からは理解が欠けていると突き上げられ、家庭にいる妻からは会社でたくさん稼いできてくれることを望まれる、いわば男性管理職も板ばさみの状態なのです。

仮に、経済的責任に対する使命感から解放されれば、男性管理職であっても、長時間労働に終止符を打ち、家庭への参画時間を増やす人も出てくるのではないでしょうか。

一見、関係性がないように見えますが、就業意欲の高い主婦に対して再就職、あるいは非正規から正規への登用機会を提供することが、男性の経済的責任に対する使命感を軽くし、“仮面イクボス”を減らすひとつの方法だと考えられます。

▼最後に

最後に、今回のヒアリングのなかで、年配の男性管理職が吐露した一言を紹介します。

「これまで何人もの女性部下が退職していった事実には、イクボスの難しさ、自らの不甲斐なさ、無力感、能力のなさを感じてしまう」

一方的に、「理解がない」と男性管理職を責めるのは簡単ですが、女性の活躍推進という世の中の急激な変化に、悩みを持つ男性管理職への配慮も忘れてはいけません。

(日本総合研究所 創発戦略センター スペシャリスト 小島 明子)

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