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橋下徹「オバマ氏広島訪問を欺瞞で終わらせちゃダメ! 僕ならこんな共同声明を考える」

プレジデントオンライン / 2016年5月23日 10時15分

読売新聞の世論調査では、26日からの伊勢志摩サミット後に行われるオバマ大統領の広島訪問に9割以上の人が肯定的。謝罪も演説もしない訪問なのにね。しかも被爆者にも会わないとか。

日本国民は、この訪問に勝手に意味付けをしている。核兵器廃絶への大きな第一歩だと。ここも安倍政権の完全勝利だね。オバマ氏広島訪問で、安倍外交に高得点が付いた。

でも、ほんとに核廃絶に繋がるのかね。オバマ氏は半年後には退任。そして世界の核をめぐる情勢は厳しさを増すばかり。

そもそも日本とアメリカ、その側に立つ国は、核兵器使用禁止条約に反対ないしは棄権している。先日広島で行われたサミット外相会合での声明も「核の非人道性」というキーワードは盛り込まれなかった。核保有国が反対した。

そしてまたここで欺瞞的な政治が行われた。声明の英文をそのまま訳すと「人的苦痛」という言葉。それを日本側は「非人間的」と訳して発表。非人道性という日本語に限りなく近く訳したけれども、人的苦痛と非人間的はやっぱり違うだろ。これがエスタブリッシュメントがやる政治。ごまかしだね。

そして中国、ロシアが核廃絶などする気配は全くなし。アメリカは欧州と韓国でミサイル防衛政策を実行する意思。当然ロシアと中国は反発し、核抑止力を高める意思を表明。

日本はアメリカ側でアメリカの核の傘に入っているから、アメリカのやることが全て正しいと思っているけど、世界の視点で見れば、アメリカとロシアと中国の考えは相反している。日本とアメリカの意思だけで核廃絶に繋がるわけではない。

本気で核廃絶を目指すなら、残り任期半年になったオバマ氏の広島訪問よりも、核兵器使用禁止条約の締結に向けた努力だよ。これをやらずに、上っ面の言葉で、核廃絶を唱えてもそれは国民を騙す欺瞞的政治でしかない。メディアをはじめ自称インテリたちも、きれいな言葉だけを唱える。

民主主義の政治は、現実を有権者に知らせて解決策を提示する。有権者に後押しを受ければ実行する。拒絶されれば中止。これが民主主義だ。

現在の世界情勢で、核廃絶という綺麗ごとを言うのはコメンテーターや自称インテリたちだけで十分。そんな言葉は政治的には全く無価値。オバマ氏や安倍首相も、はっきりと言明すべきだ。

「理想として、そして少し先(遠い将来)のこととして核兵器廃絶を目指すべきだとしても、今の世界情勢では、当面、核兵器は必要である、そして日本はアメリカの核の傘に入る必要がある」とね。

こちらをはっきりと言明する方が、むしろ中国、ロシア、北朝鮮などとのパワーバランスは安定するだろう。政治的には意味がある言葉となる。

そうなるとオバマ氏の広島訪問にはどのような意義があるのか。どう考えても被爆者への寄り添いしかないよ。

本当は謝罪するのが一番。それができなくても原爆投下の過ちを認め、当面は核保有が必要だとしても、二度と原爆投下ということがないようあらゆる努力するというメッセージを出すしか意義はない。

ここでアメリカ側は謝罪はもちろん原爆投下の過ちを認めることはできない、となるだろうね。ここでロジックなんだ。

「原爆投下時の状況ではやむを得ない事情があっただろう。でも現代的な価値では認められないよね、だから二度と同じことが起きないようにあらゆる努力をしないといけないよね」と。

戦争責任では僕は、為政者と国民を分ける二分法(二分論)のロジックが持論。もちろん不戦の決意は必要だけれども、戦争に関与していない国民が永久に謝罪する必要はない。しかし為政者には永久に謝罪の念を持ってもらう。それは権力者への最も強力な歯止めとなる。権力行使は、権力者のメンタルに最も左右されるからね。

これと同じように、僕は時的評価においても二分法(二分論)を採るのが持論。

「当時はやむを得ない事情があった。しかし現代的価値観では認められない(過ちである)ことを率直に認める。ゆえに将来的には二度と同じことが起こらないようにあらゆる努力をする」

広島の原爆投下による被害が、現代的価値観で認められないのは論を俟たない。でもじゃあすべて誤りかと言えば、当時の状況ではそうとは言えない事情もある。ここをうまく整理するロジックを使わないから、原爆投下は正当だという主張と、原爆投下を謝罪せよという主張がぶつかり合う。

時点をずらせば、この両主張はぶつかり合わない。そして当然、日本サイドも同じスタンスで過ちを認める。

ということで、オバマ大統領の広島訪問における大統領・安倍首相の共同スピーチの骨子は以下の通り。

「広島・長崎での原爆投下は当時はやむを得ない事情があったにせよ、現代的価値からすれば過ちであり、二度と同じことが起きないようあらゆる努力をする。現在の世界情勢では、当面、核兵器は必要であるし、日本はアメリカの核の傘に入る必要があるが、将来核兵器を廃絶する理想を実現するためにあらゆる努力を惜しまない」

こんなふうに真正面からメッセージを出した方がいいと思う。僕のスピーチ原稿、どうですかね?

※本稿は、公式メールマガジン《橋下徹の「問題解決の授業」》vol.8(5月24日配信予定)の一部です。

(元大阪市長・元大阪府知事 橋下 徹 撮影=市来朋久)

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