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すぐれたプレゼンには何が必要か

プレジデントオンライン / 2016年6月16日 16時15分

書類のかたちで相手に渡すにせよ、トークの際にプロジェクターで映すスライドにせよ、プレゼン資料がビジネスの現場で重要な意味を持つことは言うまでもない。

この連載でも、以前、スティーヴ・ジョブズさんのプレゼンは、模範の1つだったということを書いた。

何よりも大切なのは、「愛のあるサプライズ」。サプライズは大切な要素だが、それが、押し付けになってはいけない。相手が何を望んでいるのか、何を疑問に思っているのか、それを的確に読み取って、ふさわしいプレゼンをしなければならない。

プレゼンは、簡単なようで、奥が深い。ノウハウだけでは、なかなか人を感動させられない。すぐれたプレゼンには何が必要なのか。改めて考えてみたい。

大学の授業も1つの「プレゼン」だが、「業界内」で経験的に言われていることは、授業で教える内容の、少なくとも10倍くらいのことは知っていないと、よい授業はできないということである。

教師は、自分の知っていることのうち、ごく一部分だけに絞って、学生に伝える。わかりやすくするためには、思い切って少数ポイントだけを繰り返し伝えるほうが効果的である。問題は、それをする勇気があるかどうかだ。

ある分野についての入門者、初心者は、自分の能力に自信がない。自信がないだけに、つい、調べたことをすべて相手に伝えようとしてしまう。

例えば、ある事柄について、3つのポイントだけを伝えるとする。初心者は、実際に3つのポイントしか知らないということが多いから、それだけでは不足なのではないかと、不安になってしまう。自分が安心するために、さらに多くのポイントを積み上げようとしてしまうのである。

その結果、わかりにくいプレゼンになる。たくさんの雑多な事実が羅列されていても、聞く側は何を「持って帰るべきメッセージ」として受け止めていいのかわからない。結果として、伝えたいことも伝わらなくなってしまって、プレゼンは失敗する。

一方、その分野についての知識も深く、経験も豊かな人は、自信があるから、たくさんのことを列挙して、自分の優位性を示す必要がない。むしろ、ナイーブに見えるくらいにポイントを絞って、わかりやすく伝えることができる。

実際に示すことは限られていても、いざ質疑応答になったら、圧倒的な知識で対応できるから、自然にプレゼンに迫力が出てくる。また、豊富な経験に基づいて絞りこまれたポイントは、その分野の本質を突いていることが多い。

以上のような点から、ジャーナリストの池上彰さんの解説に人気がある理由が見えてくる。池上さんは、長年の現場の経験、徹底した調査で、深い知識を持っている。しかし、それを、ひけらかそうとしない。

本当はものすごい深い知識を持っているのに、あえて初心者でもわかるようにポイントを絞り込む。ここに、池上さんの解説に迫力があり、人気を博す理由がある。

結局、すぐれたプレゼンをしようとしたら、付け焼き刃ではダメである。その分野について、余人の追随をゆるさないほどの圧倒的な知識、経験を蓄積しなければならない。

絶え間ない努力と、ポイントを絞る勇気。すぐれたプレゼンに必要な資質は、ビジネスのすべてに通じる。まずは、次のプレゼン資料を、心を込めて作ってみよう。

(脳科学者 茂木 健一郎)

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