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小池新都知事の装いが「緑」から「ブルー」に変わった理由

プレジデントオンライン / 2016年8月5日 6時15分

■新都知事「拒絶」貫く都議会自民党

東京都知事選で当選した小池百合子氏が8月2日、初登庁した。車から降り立った小池氏は白いパンツスーツ姿で、胸元から見えるインナーの青がアクセントになっている。

「緑は戦闘服でございますので、戦いが終わったということで、ブルーオーシャンでいきたいと思っています」

執務室の椅子に座った小池新知事はにこやかにこう述べて、“百合子グリーン”を封印したことを語った。一方で青色は“大洋”のみならず、“平和”や“信頼”も意味し、まさに小池氏が知事として都政に賭ける意気込みが体現された色だといえる。

だが小池氏の前途にあるのは、必ずしも“平和な青い海”というわけではないようだ。初日からさっそく、痛烈な洗礼が待っていた。

初登庁の小池氏を玄関で出迎えたのは、副知事以下一般職員と、知事選で一貫して小池氏を支持し続けた「かがやけtokyo」の3人の都議たちだった。都庁の事務方はこの登庁セレモニーについて、あらかじめ各会派に通知していたが、玄関には3人以外の都議が現れることはなかった。

「我々は事前に呼びかけをしています。舛添要一知事の時も猪瀬直樹知事の時も、都議会自民党や都議会公明党などから10人から15名人ど参加されました」

都庁の担当職員は、問い合わせに対してこう答えている。

セレモニーへの参加拒否は、こればかりではない。この後、小池氏は議会の各会派に挨拶に出向いたが、最大会派である都議会自民党で小池氏を出迎えたのは、高橋信博総務会長ただひとりだった。小池氏が手を差し伸べると握手に応じるものの、高橋氏の口からは「おめでとうございます」など祝意を表す言葉はついに出てこなかった。

「幹事長も政調会長も不在で、たまたま私がいたので(対応した)。それ以上は何もない」

ひとりで新知事に対応した理由をこのように語った高橋氏は、小池氏がまだ都議会自民党の控室にいて退室していないにもかかわらず、そそくさと奥に引っ込んでいる。

このように初日から新知事に対して拒絶の態度を貫く都議会自民党だが、その姿勢がいつまで続けられるかは疑問だ。というのも、そもそも小池氏がどこの推薦もなく都知事選を闘わなくてはいけなかったのは、自民党東京都連の内田茂幹事長との確執があったからだが、その内田氏に世間の批判が集まっている。

■「内田茂伝説」を生んだ仕組みとは

2005年から都連の幹事長を務める内田氏だが、その長期政権には内部からも批判があった。小池氏が都知事選に出馬する意思を見せた時、都連内のある地方議員からこのような話を聞いたことがある。

「自民党都連は2005年から、石原伸晃会長・内田茂幹事長の体制は変わっていない。内田氏は2009年の都議選で落選したが、落選期間中でも幹事長職を手放さなかった。これには若手を中心に不満があり、都知事選で小池氏支持に走ろうとする者も中にはいた」

落選中でも都議会自民党の控室に「顧問室」を設置してそこに陣どり、都の職員人事から都政の重要事項まで指揮していたという内田氏。だが本当に悪いのは、内田氏のみならず“内田氏なるもの”だとその地方議員は述べている。

「たとえば高島直樹都連政調会長代理だ。今回の知事選での会合で『○○しなければならない!』と気勢を挙げるのはいいが、その都度、内田氏の方をチロリと見つつ様子を伺っていた」

すなわち内田氏が直接声をあげなくても、周囲が内田氏の意向を忖度しつつ、物事を決めていくという仕組みが自民党東京都連の中で蔓延していたというわけだ。

また2015年12月に内田氏の妻が死去した時、安倍晋三首相が葬儀委員長を務めている。こうしたことがまた内田氏の伝説となったのだ。このように自民党都連及び都政を牛耳る内田氏だが、都知事選で敗退したことで、その力が削がれるのは間違いない。

「完敗ですね。みんなが決めたことだから、みんな責任を感じているのではないですか」

7月31日の都議選の開票日、ゼロ打ちで小池氏の当選確実が報じられた後に内田氏が述べたのは、自分の責任論ではなかった。

しかし都知事選での敗戦の責任を追及する声が出た。開票日の深夜、東京9区選出の菅原一秀衆院議員は「当然、今回のことで都連の執行部は辞任すべきであり、自分もその責任を果たしていきたい」とブログに書き込んだ。8月2日には石原会長の会長辞任説が噴出し、8月4日の最高幹部会では内田幹事長を含む石原都連会長以下5人が役職を辞任した。

その一方で、小池氏は都政の“内田氏なるもの”を一掃するために動き出している。さっそく最初の会見で、知事の諮問機関である「都政改革本部」の設置を表明。業務や予算を点検し、その結果を公表することを明らかにした。具体的には情報公開調査チームとオリンピック・パラリンピック調査チームをつくり、オリンピック・パラリンピックについては9月に中間報告を出すなど、迅速で確実な成果を出そうとしている。

小池氏を支えるのは291万票という民意だ。その手法は、小池氏を環境大臣に抜擢するなど政治家として大きく育てあげた小泉純一郎元首相とまったく同じ。小泉氏も抵抗勢力を仕立てあげ、それに抗する改革派を自任することで世論の大きな支持を得た。

しかし小池新知事が取り組むべきは、自民党東京都連の問題だけではない。都政には様々な問題が山積している。小池氏がそれに挑む決意は、初登頂時に使った“刺し色”でも伺えるだろう。青色は“平和”とともに“冷静さ”を示すからだ。

国会議員時代は政界渡り鳥とも政界風見鶏とも言われた小池氏だが、これからは自身が大きく風を吹かせることが望まれる。「百合子ブルー」が“憂鬱の青”にならないことを祈る。

(ジャーナリスト 安積 明子)

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