数だけでない女性管理職を! KDDIの「本気改革」
プレジデントオンライン / 2016年8月16日 6時15分
雇均法が整備された第1フェーズ、育休や時短制度など女性に優しい環境が整えられた第2フェーズ。そして、男女双方の働き方改革である第3フェーズへと時代は動き始めているのです。
■意思決定に加わる“数だけでない”女性管理職を
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移動通信・固定通信の両方を提供する総合通信事業会社。個人向けには「au」ブランドから携帯電話や固定通信事業を展開。「じぶん銀行」「au損保」など新規事業にも取り組む。1984年創業。本社は東京(千代田区)。
従業員数:1万671人、うち女性2083人(2015年3月末時点)
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KDDIは2000年にDDI、KDD、IDOが合併して誕生。以降も多くの会社と合併し、いわば出身会社も企業文化も違う“多様な社員”が集まった会社。「私の出身会社には女性の管理職はゼロ。それが普通で何の違和感もありませんでした。KDDIには女性の管理職がいるので驚きましたが、それでも50人以下でした」
こう語るのは総務・人事本部人事部の間瀬英世ダイバーシティ推進室室長。同社は05年、小野寺正会長が社長時代に女性活躍支援のメッセージを全社に発信。仕事と家庭の両立支援策の充実や在宅勤務などの働き方改革の取り組みがスタートした。
08年4月に女性活躍推進の専門組織として人事部内にダイバーシティ推進室を設置。その後、ダイバーシティ推進を、企業理念にあたるKDDIフィロソフィに明文化し、本格的な取り組みを開始した。12年度には「15年度までに組織のリーダー職で人事評価権限を持つ女性ライン長を90人(7%)にする」という目標を掲げ、女性リーダーの育成・登用に乗り出した。ライン長にこだわるのは「会社の意思決定の場に女性を参画させるのが経営者の思い。女性の管理職数だけ増えても会社は変わらない」(間瀬室長)からだ。
すでに11年度初めに29人だったライン長は14年度末に74人と2倍以上に増加。女性管理職数は177人。最終年度である16年3月末までのライン長90人の目標は見えてきている。また、近年では生え抜きの女性役員をはじめ部長など上位職の幹部も増えている。
活躍を推進するために様々な活動を展開している。その一つが07年から継続している女性管理職登用を目的とする社長直轄の社内横断プロジェクト「Win-K」。女性ライン長6人がメンバーとなり、管理職候補者や新任ライン長との懇親会やオリエンテーションを通じ、問題解決や社内ネットワークづくりのアドバイスを実施している。
12年度からは「女性ライン長登用プログラム(LIP)」をスタート。ライン長候補者を本部長推薦で選抜。個人の育成プランに基づいた現場指導のほか、リーダーになるためのマインドセット、財務諸表の読み方など年5回の研修やネットワークの構築など複合的プログラムを受講する。
研修の最後に自社の経営課題をテーマにチームごとに副社長、総務・人事本部長にプレゼン。優秀チームは社長にプレゼンする機会を与えられる。
■「管理職になってよかった」8割の女性が自信を持つ
経営トップの力の入れようも並ではない。14年11月には管理職試験を受ける全国の女性社員約200人を一堂に集め、田中孝司社長自ら1時間にわたり女性活躍に取り組む姿勢を語った。
一方、14年には間瀬室長と前ダイバーシティ推進室室長の2人で女性管理職候補者約200人全員と個々に面談した。「仕事や私生活を含めた様々な悩みや相談を受けました。管理職になるのは自信がないという人も少なくないですが、私にもできるかなと言ってくれる人も増えています」(間瀬室長)
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さらに育成を担う男性管理職に対する研修も実施。参加者は外部講師から「若いときに成功体験や仕事のおもしろさを知ることで会社への貢献意欲も上がってくる。勇気を持って女性を鍛えなさい」と叱咤(しった)激励を受けた。
とはいっても管理職になるのは容易ではない。過去の人事評価と複数の業務経験、それに語学力の要件をクリアした人が本部長推薦で試験を受けて決まる。しかもライン長は管理職の中から選ばれるだけにさらに狭き門となる。14年秋にアンケート調査を実施した結果、管理職の8割以上、ライン長の7割強が「昇格してよかった」と回答している。
独自の取り組みで興味深いのは、11年から始まった「役員補佐」だ。社長を含む5人の取締役に原則、男女各1人の管理職が1年間補佐として付き、役員が出席するすべての会議に同席。経営の意思決定など生で経営を学ぶ。
現在、女活法の施行に向けて、間瀬室長は「行動計画の数値目標についてはライン長比率7%を上回る数字を目指したい。そのためには若手の女性社員に対してライフイベントを前にしたキャリア意識の醸成やキャリアプラン作成など、取り組みを一層強化していきたい」と意気込む。
■私たちが取り組んでます
残業削減から管理職研修まで全社あげての働き方改革に邁進!
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2008年4月に人事部内にダイバーシティ推進室を設置し、女性の活躍、多様な働き方、障がいがある社員の活躍など、全社的な推進に取り組んでいる。また、企業理念の一項目に「ダイバーシティが基本」を掲げ、全社で「ダイバーシティ&インクルージョン」を推進している。
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▼こんな取り組みをしています!
・在宅勤務・テレワーク制度
・1年間の役員補佐職
・女性ライン長登用プログラム(LIP)
・女性活躍推進プロジェクト(Win-K)
・勤務間インターバル
・育児休業の復職前セミナー など
女性活用だけでなく全社員での働き方改革に積極的。勤務間インターバルは、退社してから出社するまで11時間以上あけるよう促すことを人事制度として取り入れた。
(人事ジャーナリスト 溝上 憲文 干川 修=撮影)
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