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2018年に大量発生する「無期契約社員」はどんな社員か?

プレジデントオンライン / 2016年9月14日 6時15分

■無期契約=正社員ではない!

労働契約法が改正され、2013年4月から「有期労働契約が反復更新されて通算5年を超えたときは、労働者の申し込みにより、期間の定めのない労働契約(無期労働契約)に転換する」ことが、企業に義務づけられました。

昨年来、ユニクロやスターバックスといった有名企業が、パート社員や契約社員を(勤務地限定)正社員化する動きが目立つようになったのも、この法改正がきっかけとなっています。

「じゃあ、自分は契約社員として5年以上勤めているから、すぐにでも無期契約に転換してもらえる」と考えるのは早計です。通算契約期間のカウントは、2013年4月1日以後に開始する有期労働契約からが対象です。それ以前に開始した有期労働契約は、通算契約期間に含めません。

したがって、1年ごとの契約更新の会社であれば、通算で5年を超える有期契約が発生するのは、早くても2018年4月1日以降ということになるのです。

また、「無期契約=正社員」という誤解している人もいますが、この法律では、あくまでも有期契約が無期契約になるだけです。すなわち、「無期契約社員(または、無期パート社員)」という新しい身分の人たちが、生まれるということになります。無期契約とはいっても定年制を設ける企業が大半のため、「定年までは、毎年契約更新することなく雇用が継続する契約社員」と言い換えることができるでしょう。契約期間を除いては、基本的に、それまでの働き方が変わるわけではないのです。

一方、企業にとっては、この法改正に対して、次の5つの対応策が考えられます。

▼有期社員の無期転換に備えた5つの対応策

(1)雇止め:有期契約が5年を超えないように契約終了する。
(2)無期契約社員化(処遇条件変更なし):給与など条件を変えず、無期契約にする。
(3)無期契約社員化(処遇条件改善):給与など条件を引き上げ、無期契約にする。
(4)限定正社員化:勤務地、職務、時間などを限定した正社員に転換する。
(5)正社員化:完全に正社員に転換する。

このうち、大多数の企業が選択すると考えられているのが、「(2)無期契約社員化(処遇条件変更なし)」「(3)無期契約社員化(処遇条件改善)」です。先ほど述べた『無期契約社員』ということになります。「(1)雇止め」は人手不足が深刻化する現状では採りづらく、「(4)限定正社員化」「(5)正社員化」は人件費負担の大幅増が懸念される。そこで、待遇は現状維持もしくは若干改善させた上で、無期契約社員化するケースが多くなるのです。

そこで、2018年には「無期契約社員」が大量発生することが予想されます。その年に雇用契約が5年を迎える人だけでなく、それ以前からその会社に有期社員として働いてきた人たちも、一斉に対象となるからです。

■政府の狙いは「限定正社員」化か?

厚生労働省は今年1月、今後5年間の非正規雇用労働者の正社員転換や待遇改善のための様々な取り組みを「正社員転換・待遇改善実現プラン」として決定しました。

不本意ながら非正規雇用に留まっている労働者の割合を、2014年平均の18.1%から10%以下にまで引き下げることを、大きな目標の1つとしています。そのための切り札と位置付けられているのが「多様な正社員」の推進です。多様な正社員とは、職務、勤務地、労働時間を限定した「限定正社員」のことです。

「正社員として働きたいけど、勤務地や勤務時間などは制限してもらいたい」といった労働者側のニーズと、「これまでの正社員より低い待遇で雇用できるなら、比較的採用しやすい」という企業側のニーズを満たすしくみといえるでしょう。

(独)労働政策研究・研修機構が、今年5月に発表した「改正労働契約法とその特例への対応状況及び 多様な正社員の活用状況に関する調査」によると、約20%の企業が「多様な正社員(限定正社員)区分を、今後新たに導入(増員)する予定がある」と回答しています。

政府としては、無期契約社員ではなく、できれば限定正社員化を推し進めたい。そのため、有期社員を正社員化した会社に対しては、対象者1人につき数十万円の助成金を支給しているくらいです。冒頭で挙げたユニクロやスターバックスは、まさに政府方針にも沿った対応といえるでしょう。

しかし、先ほど述べたように、多くの企業は限定正社員ではなく、無期契約社員を選択すると思われます。「何とか人手不足は解消したいけど、かといって人件費の上昇は極力抑えたい」というのが、多くの企業経営者、人事担当者の本音だからです。

この問題以外にも、短時間労働者に対する社会保険加入対象者の拡大、最低賃金の引き上げ、同一労働・同一賃金実現に向けて予測される法改正など、企業の人件費が上昇していく要因には事欠きません。その一方で、ここ数年堅調であった上場企業の収益にも陰りが見えてきました。

私から企業へのアドバイスとしては「目先の人手不足解消や政府方針だけでなく、将来の収益や人員見通しに基づく慎重な対応をしてください」。有期社員の方々に対しては「希望者にとっては、正社員転換できる大チャンスです。転職することも含めて、この機を逃さないように」といったところでしょうか。

(新経営サービス 常務取締役 人事戦略研究所所長 山口 俊一)

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