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絶好調のサッポロ、近畿圏強化で「売り場拡大」

プレジデントオンライン / 2016年9月13日 6時15分

ビールがうまい! そう若者に感じてもらいたい。年々ジリ貧になっているビール市場を「どげんかせんといかん!」とばかりに各社が動きを本格化。営業現場を追った。

■絶好調のサッポロとサントリーが伸びる

「今年はビール強化元年」

2016年の事業方針で、サッポロビールの社長、尾賀真城は力強く言い切った。業界に先駆けて発泡酒や新ジャンルを開発してきた同社だが、原点であるビールに注力すると宣言したのである。

成果は早くも表れた。16年上半期(1~6月)のビール単体の課税移出数量を見ると、サッポロは前年比6.2%増と飛躍。ビールのシェアを14%に上げ、2位のキリンとの差を縮めた。

サントリーもビールが好調で前年比4.7%増となったのに対して、アサヒとキリンは失速気味だ。アサヒのシェアはダントツだが、課税移出数量は前年割れ。スーパードライの業務用樽生の不調、つまり居酒屋需要の減少が足を引っ張った。キリンも一番搾りは堅調だが、それ以外のビールが伸び悩みマイナス成長となった。

先を見据えるとビールの強化は、どの社にとっても必須の課題だ。論議される酒税の一本化が実施された場合、ビールの酒税が下がって販売価格は安くなる。発泡酒や新ジャンルに流れていた層が戻ってくるだろう。そのときに選ばれるメーカーであるためには、今からビールのブランド力を高める必要がある。

特にアピールしたいのは、20~30代の若年層だろう。ビール離れが顕著なこの世代を取り込めるかどうかは、先々の業績を左右する。販売数が伸びた「サッポロ生ビール黒ラベル」は、CMに妻夫木聡を起用。「オヤジくさいビール」という印象は薄れ、むしろ「渋くてかっこいい」との声を若者から聞くようになったという。

取り込んだのは若年層だけではない。これまでサッポロが劣勢だった西日本でも伸び、特に関西では4社の競合が激化しているという。各社の営業担当はいかに戦っているのか。「関西夏の陣」を追ってみよう。

■黒ラベルは関西で知られていなかった!?

「これ、ちょっと弱いんちゃう?」

大手チェーンストア、平和堂のバイヤー、三田村泰成は渋い顔で言った。

その目の前にあるのは黒ラベルの星のマークにちなんだ七夕フェアの企画書。サッポロビール近畿圏本部流通営業統括部に所属する齊藤亮が、今年初めて提案したものだ。内容は七夕用のボードを置いて、クーラートート付き6缶パックの販売をするというもの。しかし、三田村の反応は「ノー」。

悪いことは重なるものだ。企画を練り直し、2度目の提案に臨んだところ、イメージ画像を見た三田村に「(陳列する)箱はどうなん?」と訊ねられる。確認して齊藤は一瞬、血の気が失せた。店舗に並べる箱が見栄えのいい白でなく、普通の茶色の段ボールだったのだ。

すぐに本社に電話をして、箱を隠すポップをつくってほしいと頼み込む。

「大口の受注が取れそうなんですけど、段ボールがネックになって最終合意ができないんです」。

必死に訴える齊藤に本社も動き、特別にポップを作製してもらえることになった。何度目かの提案で、三田村からようやくのゴーサイン。注文は堂々の2000ケース。大きな成果だ。

「齊藤さんはいつも全力でぶつかってきて、こちらの要望に応えようとしてくれる。たまにミスもするけれど、ちゃんと挽回しはりますから」と三田村。

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(上)平和堂のアル・プラザ草津店の七夕用ディスプレイ。黒ラベルの「☆」と七夕をかけて売り場を盛り上げる。オリジナルのクーラートートバッグに6缶が入ったセットを発売。ラック下に積まれた箱は、当初は茶色の段ボールだった。
(下)ビール近畿圏本部 流通営業統括部 第3営業部の齊藤亮さん(左)と、ともに営業する小寺貴浩さん(右)。平和堂の敏腕バイヤー、三田村泰成さん(中央)。

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平和堂は近畿を中心に2業態151店舗を展開しているが、その全店の仕入れを三田村が握っている。催事に合わせて各社からあがる企画を採択するのもまた彼だ。逆にいえば、全店の酒類の売り上げは三田村の双肩にかかり、おのずと選ぶ目もシビアになる。他社より魅力的な企画を出して、三田村に選ばれること。それがそのままビール類の販売数に直結すると言っても過言ではない。

13年にメーカーから転職してきた齊藤が、日々、心がけているのはこまめに足を運ぶことだという。フェーストゥフェースの営業だ。

「メールや電話で済む用件でも、顔を合わせてちょっと話すだけで違います。感情も伝わるし、先方の反応も表情から読める。僕はこの業界が短く、経験も知識も少ない。フットワークであったり、人間性であったりというところで勝負するしかないんです」

これまで関西で黒ラベルが売れなかったのは、おいしさが知られていなかっただけだと齊藤は感じている。まずはバイヤーにおいしさを知ってもらうこと。昨年から期間限定で開いている直営の「サッポロ生ビール黒ラベルザ・パーフェクトビヤガーデン 2016 大阪」は、商談の場にうってつけだ。味も人気の盛り上がりも実感してもらえるからだ。

三田村も黒ラベルは可能性のあるビールだと言う。「僕のイメージでは、新しく攻めていくのはサッポロさんかなと。売りたい気持ちはあるんです。実際、飲んでもおいしいですし」。

事実、平和堂での黒ラベルの売り上げは、15年で前年比37%増、今年上半期はさらに20%増と急伸。同社の店舗でビールを指名買いするお客は3割程度と多くない。残り7割の人たちに黒ラベルを手にしてもらえるか。担当3年目のこれからが、齊藤にとって本当の勝負だ。

(文中敬称略)

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サッポロビール社長 尾賀真城氏 「西と東の差が縮まったワケ」

「ビール強化元年」のスローガンの通り、「黒ラベル」「ヱビス」ともに非常に好調です。特に東日本と大きな開きがあった西日本でも伸びているのは、営業や広告・宣伝などで売り場の確保ができ、数も多く置いていただけるようになったからだと思います。

黒ラベルについては、昨年に続いて今年も味のブラッシュアップを行い、お客さまから「おいしくなった」との声が聞かれます。

東京と大阪に「パーフェクトビヤガーデン」を開き、大都市圏では「パーフェクトデイズ」というイベントを行うことで、最高にうまい一杯を飲んでいただく機会も増えました。それがブランドの認知にプラスに働いているように思います。

ただ、シェアを見ると、厳しい面はあります。お酒とタバコはブランドとの絆が強いと言われますが、今後、お客さまとのパイプをさらに太く強固にしていかなくてはならない。今年は創業140周年。酒税法を含めて、変化をチャンスにできるよう勝負していきます。

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(フリーライター 上島 寿子 矢木隆一(尾賀社長)、森本真哉=撮影 PIXTA=写真)

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