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先生はAI! タブレットに教わる算数・数学塾の可能性

プレジデントオンライン / 2016年9月12日 6時15分

東京・三軒茶屋にある学習塾「Qubena Academy(キュビナ・アカデミー)」は一風変わった学習塾だ。授業を進めるのは人工知能(AI)。授業中の様子を見ると、生徒たちはじっとタブレットを凝視して問題に取り組んでいる。科目は算数・数学のみで、人間が普通に教える7~10倍のスピードで学習できるという。

キュビナ・アカデミーを経営するCOMPASSの神野元基社長は、1986年網走生まれの30歳。子供たちに本当に教えたいのは「未来を生き抜く力」だと話す。算数・数学専門塾でありながらなぜ? そもそも、AIが授業をするようになったら、教師は何をすればいいのか? 田原総一朗氏と神野元基氏の対談、完全版を掲載します。

■子供の頃は「宇宙人」と呼ばれていた

【田原】神野さんは北海道の網走のご出身だそうですね。網走というと、まず刑務所が思い浮かびます。

【神野】僕の実家から車で15分です。網走は本当に田舎でした。都会は人の個性を生かすことができるといいますか、異端な人でも、人口が多いので仲間に出会えます。でも田舎だと、ちょっと変わっているだけで浮いてしまう。僕も小学生のときは宇宙人と呼ばれていました。

【田原】ということは、神野さんは変わり者だった?

【神野】どうでしょう。4歳のとき母親から「あなたはいつも私のことを元気にしてくれる」と言われたのが僕の原体験。小さい子は大人にほめられたことを何度も繰り返しやりますが、僕もうれしくて、どうすれば母に喜んでもらえるのかということばかり考えていました。そのうちに人の内面や人生に興味が出てきて、小学校の図書室にある偉人の伝記をぜんぶ読みました。とくに印象に残っているのは、モーツァルト、ベートーベン、エジソン、ニュートン。この4人は、みんな幼少期に個性的なエピソードを持っています。偉人たちのエピソードを知って、「正しい生き方って何だろう」と考えるような子どもでしたから、少し変わっていたのかもしれません。

【田原】正しい生き方ですか。普通の小学生はあまりそこまで考えませんね。

■高校生のとき、インターネットに出合う

【神野】中学生くらいになると、社会の在り方にも疑問を持つようになりました。たとえば警察官は駐車違反の切符を切っています。路上駐車がよくないことはたしかですが、それは人が生きる上での高度なルール。本当はそれらを守る前に、人を殴るなとか、人を殺すなというような最低限のルールを守らないといけない。そのベーシックなところを達成しないかぎり、人間の生き方も何も語れないのではないか。ベーシックなところを変えるにはどうすればいいのかと考えて、政治や教育にも関心が広がっていきました。

【田原】そして高校生のときにインターネットに出合う。神野さんの中で何が変わりましたか。

【神野】網走という地方の町で育ったので、部屋のPCがインターネットにつながった瞬間、一気に世界が広がった気がしました。当時は小さな掲示板がたくさんあって、外国の人や東京の人、九州の人ともコミュニケーションができました。そうした体験を重ねていくうちに、世界ではさきほど言ったようなベーシックなルールがまだ守られていないことがわかったし、それを守れる世の中にするのが僕の人生かなと考えるようになりました。世界とつながったことで考えが変わったというより、より固まった感じです。

■SFC入学、ポーカーで世界19位に

【田原】大学は慶応の湘南藤沢キャンパス。ここではポーカーと出合ったそうですね。どういうことですか。

【神野】湘南藤沢キャンパスに行って、ものすごく救われました。まわりも変人ばかりなので、自分が変人っぷりを爆発させても目立たないんです(笑)。ならば好きなことをしてみようといろいろ探していたときに出合ったのがポーカーでした。ポーカーは心理戦で、自分のためにあるゲームという気がしたんです。どうせやるなら世界チャンピオンを目指そうと考えて、10カ月後には世界大会に出場しました。

【田原】世界大会? 何人くらい出場するのですか

【神野】1040人です。10人1テーブルで、104テーブル立ちます。チップがなくなった人が抜けていき、10人抜けるとテーブルが1つ減るルールです。優勝が決まるまで1週間くらいかかります。僕は最後の2テーブルまで残って、19位でした。日本からは10~20人が参加していましたが、その中ではトップです。

【田原】世界で19位はすごい。それが仕事にもつながったと聞きましたが、どういうことですか。

【神野】日本ポーカープレイヤーズ協会の会長から、日本でポーカーを流行らせるビジネスを一緒にやろうと誘われました。それで株式会社をつくったのですが、日本でポーカーというと、どうしても闇の世界の人たちが寄ってくる。結局、オーナーがそういう人たちとギャンブルをして負けてしまったようで、1年後には借金のかたとして会社を奪われてしまいました。

【田原】その後はどうしましたか。

【神野】僕はもともと世界平和や人の正しい生き方を追求したかったんです。そのチャレンジをしようと考えたときに浮かんできたのがシリコンバレーでした。テクロノジーは、人の生き方や生活を大きく左右します。当時、自分で電子出版の会社もやっていたほどテクノロジーに興味があり、どうせなら本場のシリコンバレーで勝負してみたかった。それで2010年に向こうに渡りました。

■シリコンバレーで「感情の差異」の解析に取り組む

【田原】シリコンバレーでは何をしていたのですか。

【神野】起業して、Webカメラでユーザーの表情を認識し、感情を計測するエンジンを開発しました。計測した感情はWeb上のコンテンツに貼り付けます。たとえばYouTube上のある動画を見たときに僕が3分45秒のところで笑ったら、その情報が残ります。すると、同じところで笑っているのは誰かとか、笑いのツボが同じ人はほかにどんなコンテンツを見ているのかということがわかったりする。そんなサービスをつくっていました。

COMPASS社長・神野元基氏

【田原】おもしろいけど、世界平和と関係あるのかな。

【神野】僕がやりたかったのは、感情の差異を解析すること。たとえばアメリカのタクシーに日本人旅行客が乗って、運転手から「俺は日本語知ってる。ヒロシマ、イェーイ」と話しかけられたとします。日本人としてはイラッとしますけど、運転手に悪気はなく、むしろフレンドリー。このように同じ事柄なのに感情の差異があり、コミュニケーションがうまくいかないことが世界にはごろごろしていて、それが、諍いの元にもなっている。これをシステム的に解析して、コミュニケーションの補助をしてあげたら、みんなもっと仲良くなれるかなと。

【田原】なるほど。でも、それは商売になりますかね。

【神野】おっしゃる通りで、そのままではビジネスになりません。だから自分が笑えたり感動できるコンテンツをレコメンドするという方向で展開したのですが、結局、それもうまくいきませんでした。

■「シンギュラリティ」とは、人工知能が人工知能を作ること

【田原】シリコンバレーでのビジネスはうまくいかなかったけど、向こうで“シンギュラリティ”を知ったことが大きな契機になったそうですね。シンギュラリティって何ですか。説明してください。

【神野】シンギュラリティは、人工知能が自分で人工知能を作ることを言います。2045年にはシンギュラリティがやってきて、現存する職業の99%は人工知能がやるようになると予測されています。

【田原】シンギュラリティを神野さんはどう受け止めましたか。未来に悲観的になったのか、それともおもしろいと感じたのか。

【神野】うーん。ついに人々に対して生き方を語る時が来たと思いました。人がどう生きるべきなのか、僕の中でまだ答えは見つかっていません。また、45年に僕はもう60歳になっていて、すでにリタイアしているかもしれない。しかし、いまの子どもたちは違います。働き盛りのときに、シンギュラリティがきて現存する仕事のほとんどが消えるのです。ですから、いまの子どもたちはシンギュラリティについてよく知っておかなくてはいけないし、その時代を生き抜く力について考えてもらわないといけない。それを語るべきときがいよいよやってきたんだなと。

【田原】いま実用化されつつあるディープラーニングの技術も、少し前は「あと10年かかる」と言われていました。それを考えると、シンギュラリティがやってくるのも、もっと早いかもしれない。

【神野】だとしたら、もっと早く子どもたちに語らなくてはいけません。どちらにしても、待ったなし。そう考えて日本に帰国しました。

■八王子で学習塾を開いた理由

【田原】帰国後は、東京都八王子市で学習塾を開きますね。シンギュラリティについて語るのと学習塾は、何か関係があるのですか。

【神野】子どもたちに未来が変わるということを伝えたかったのですが、街角で僕が演説したところで誰も聞いてくれません。では、どうすれば未来の話に耳を傾けてもらえるのか。そう考えたときに思い浮かんだのが、塾の先生でした。先生という立場なら、保護者や生徒も一応話を聞いてくれるのではないかと。

【田原】なるほど。ただ、塾に人を集めるのだって簡単じゃないですよね。どうやって生徒を集めたのですか。

【神野】八王子にある石川中学校に通っている生徒専門の学習塾を開きました。塾では、石川中学の先生一人一人の出題傾向はもちろん、体育祭や合唱コンクールでどのように振る舞えばいい成績に結びつくのかといったことも分析しました。それが評判になって生徒は集まってきました。

【田原】じゃあ、神野さんの話も聞いてもらえた?

【神野】いや、それが難しくて。学習塾ですから、やはり成績が伸びないと子どもたちが辞めてしまう。結局、成績対応に時間をとられて、未来の話をする時間がつくれませんでした。

【田原】それじゃ何のために学習塾を開いたのかわからない。

【神野】はい。本来の目的を実現するには、子どもたちの成績を上げ、なおかつそれを短時間で行い、未来のことを伝える時間を確保する必要がありました。ただ、それはけっして不可能じゃないんです。僕らの塾で調べたところ、1人の先生が30人の生徒に教える集団指導の場合、50分の授業のうち意味のある時間は5分しかないことがわかりました。残りの45分は、すでに自分が知っている話を聞いているか、逆にまったくわからない話をされていて授業についていけないのです。この時間を適正化して50分すべてをその生徒にとって意味のある時間にできたら、学習効率が10倍になって時間の余裕ができるはず。そう考えて、人工知能型教材「キュビナ」の開発に取り掛かりました。

■AIを使った教材「キュビナ」

人工知能を使った教材「キュビナ」。手書き認識機能がついており、生徒はペンでタブレットに文字や図を書いて勉強する。

【田原】キュビナについて説明してください。人工知能を使った教材って、どういうことですか。

【神野】子どもたちにタブレットを配り、問題を解いてもらいます。間違えたとき、どこで躓いたのかは一人一人違います。たとえば方程式の問題で誤答したのは、分配法則がわからなかったせいかもしれないし、移項がうまくできなかったせいかもしれません。その原因を人工知能が解析して、その生徒がわかっていない箇所に関連する問題をピンポイントで出してあげるのです。それを繰り返すうちに弱点を克服できます。

【田原】それは人工知能でないとできないのですか。

【神野】いえ、スキルを持った先生が生徒と一対一で指導すればできます。しかし、現実に行われているのは集団指導で、先生は生徒一人一人がどこでつまずいているのかを把握できていない。それで、先ほど言ったようなムダな時間が生まれていたわけです。

【田原】なるほど。おもしろいですね。

【神野】実はこの教材を開発する前から、プリント型学習をやっていました。生徒にプリントをやってもらい、間違えた箇所によって次に渡すプリントを変えるのです。このやり方で学習効果があがっていたので、あとはそれをIT化して人工知能にやらせればよかった。教育とテクノロジーの両方を理解していれば、必ずしも難しいイノベーションではなかったと思います。

■AIが授業をするようになったら、人間の先生は要らなくなる?

【田原】人工知能が教えてくれるから、人間の先生は要らない?

【神野】いや、教師が要らなくなることはありません。大学受験前の子どもたちは、自分で勉強する動機づけをすることが難しい。そして、勉強に対するモチベーションを湧かせてあげられるのは、いまのところ人だけです。また、学校にクラス制度があるかぎりイジメはなくならず、それに対してアプローチしていけるのも先生だけです。さらにいうと、未来を生き抜く力を身に付けさせるというところも、いまはまだ人間しかできない。人工知能でティーチングのところは効率化できますが、教育の根幹にある仕事は人間が必要だというのが僕の考えです。

【田原】キュビナの開発には、どのくらい時間がかかりました?

【神野】学習塾を始めた1年後の2013年暮れから教育業界が抱える課題を意識し始めて、翌年の夏にはキュビナの開発を始めました。まずデモ版をつくって、試験的に運用するために、15年10月に三軒茶屋に新しい塾をオープン。実際に子どもたちに使ってもらいながら、使いづらいところが出てきたらすぐに開発者が修正する体制をつくって、プロダクトとして磨き上げていきました。正式にリリースしたのは今年の1月です。

■32時間で1学年分の数学が学習できる

【田原】教科はどうですか。全教科できるのですか。

田原総一朗
1934年、滋賀県生まれ。早稲田大学文学部卒業後、岩波映画製作所入社。東京12チャンネル(現テレビ東京)を経て、77年よりフリーのジャーナリストに。若手起業家との対談を収録した『起業のリアル』(小社刊)ほか、『日本の戦争』など著書多数。

【神野】まず数学のコンテンツから始めています。僕が数学好きだったこともありますが、それ以上に大きいのは、いち早く全世界に届けられるから。英語や社会は国によって内容が大きく変わりますが、数学は国ごとの差がほとんどありません。世界展開を見据えると、まずは数学だろうと。もっともシステム自体は教科を問わないので、他の教科のコンテンツも制作中です。他の教科に関しては、英語、理科、社会だけでなく、プログラミング教育も視野に入れています。サイエンス、テクノロジー、エンジニアリング、マスマティクスの頭文字をとって「STEM教育」といい、今後はSTEM教育の重要性が増すと考えているので。

【田原】数学についていうと、実際に子どもたちがキュビナを使えばどれくらい早く学習できるのですか。

【神野】32時間で1学年が終わります。普通はだいたい210~300時間かかりますから、7~10倍のスピードで学習できます。いまの悩みは、早くマスターした生徒が卒業してしまうことですね。続けて高校のコンテンツに入れればいいのですが、開発が間に合っていなくて。

【田原】親の反応はいかがですか。

【神野】料金が少し安めなので保護者から文句は言われていませんが、他の教科を早く作ってほしいという要望はいただいています。

■「3カ月でドラクエ日本一になる方法を考えてごらん」

【田原】キュビナの開発は、もともと学習を効率化して、そのぶん未来を学ぶ時間をつくることが目的でした。本来の目的のほうは進んでますか。

【神野】はい。未来を生き抜くために必要な力を伝える授業をようやくできるようになりました。これが一番うれしいです。

【田原】具体的にどんな授業をするのですか。

【神野】45年に現存する99%の職業がなくなるとしたら、子どもたちは自分自身で新しい職業を生み出すしかありません。では、どうすれば新しい職業を生み出せるのか。それには“極める力”が重要だと考えています。何かを極めたら、人々はそれに感動して対価を払ってくれるかもしれない。そこで僕たちの塾では何かを極めるためのアクティブラーニングを行っています。もっと具体的にいうと、まず子どもたちにいま一番好きなことを聞きます。たとえばドラクエでもサッカーでもいい。そして3カ月でその分野で日本一になる方法を考えてもらいます。

【田原】ほお。それで?

【神野】その分野で日本一の人を見つけてきてもらいます。それで自分との差を言語化させます。もちろんいきなり問題の本質にはたどり着けません。たとえば最初は「自分はドラゴンクエストを1日1時間しかやっていない。日本一になるには5時間やらないといけない」というような、ほわっとした方法論しか出てこないのが普通です。そこで実際に毎日5時間やってもらって、1週間後に「日本一になれた? なれていないから、何が問題なのだろう」とまた考えさせていく。これを繰り返すプログラムです。

【田原】ドラゴンクエストというのはゲームですよね。ゲームを極めることが未来を生き抜くことにつながるのですか。

【神野】極める対象はなんだっていいと思っています。たとえばドラクエを極めるときも、世界最高の腕時計をつくるときも、問題を発見して解決するというプロセスは基本的に同じです。そのプロセスを自分で発見して行動していく力を身に付ければ、シンギュラリティがやってきてもたくましく生きていけるはずです。

■2017年アメリカ進出予定。日本の学校にも入れてほしいが……

【田原】最初に数学を選んだのは世界進出を見据えてのことだとおっしゃっていましたね。今後の展開を教えてください。

【神野】いまオセアニアのある国の教育庁に話をしています。日本でキュビナのシステムを導入できるのは学習塾くらいですが、海外の公教育機関は予算をしっかり持っているので期待しています。もっとも一口に海外といっても、途上国と先進国ではマーケットが違います。いまアプローチしているところのように公教育が発達している国では公教育に。そうでない国では自分たちで学習塾を展開していこうと考えています。

【田原】アメリカはどうですか。世界展開するなら避けて通れない国です。

【神野】来年3月に、SXSW(サウスバイサウスウエスト)という大きなITの祭典があります。そこに出展するのを皮切りに、アメリカでも事業展開する予定です。

【田原】ところで、日本の公教育にこのシステムを導入できないのですか。日本の先生は部活動があったりして忙しい。日本の学校こそ神野さんのところのシステムが役立つと思うけど。

【神野】本当はやりたいです。ただ、日本は予算がなくて。一度お話しさせてもらったことがあるのですが、つけられる予算は1人年間500円と言われました。僕たちのシステムは、少なく見積もっても20倍の予算は必要。アメリカなら年間2万円、北欧ならもっと予算がつくのと比べると、かなり見劣りします。

【田原】日本はどうしてそんなに予算が少ないんだろう。

【神野】文部科学省の方々は、予算をつけることに関してポジティブです。むしろ動かないのは、忙しいはずの現場の先生方。日本の先生方は凝り性というか、自分のやり方を追求している傾向があるので、新しいシステムに対して不信感をお持ちなんですよね。アメリカだと、「授業しなくてよくなるの? ラッキー!」となるのですが、日本人は国民性が真面目なので……。

【田原】なるほど。最後に神野さんの思いをもう一度聞かせてください。

【神野】このまえイギリスが国民投票でEU離脱を決めましたよね。あのとき驚いたのは、離脱決定後にイギリスの検索ワードランキングで、「What is the EU?」が2位になったという事実です。あれだけ世界に衝撃を与えておいて、本人たちはEUが何かわかっていなかったという状況は、さすがに笑えません。世界を良い方向に進めるためには、やはり教育が重要です。今後10年でキュビナを世界に普及させることで、全世界の知の底上げに貢献したいです。

【田原】わかりました。ぜひ頑張ってください。

■神野さんから田原さんへの質問

Q. 日本の教育の問題は何ですか?

【田原】僕は数学が嫌いです。小学4年生のときに、円を3等分しろという問題が出ました。手を挙げて「円を細かくちぎって3つに分ければいい」と答えたら、先生から「屁理屈だ」と怒られました。大人になってから数学者の広中平祐さんにそのエピソードを話したら、「そのやり方は微分。数学として正しい」と教えてくれた。つまり僕の解き方もあったのに、学校教育は理想の正解を1つ用意して、そこに子どもたちを当てはめようとしていたわけです。

僕はここに日本の教育の問題があると思う。学校では正解のある問題の解き方ばかりを教えます。しかし世の中は、正解のない問題のほうが圧倒的に多い。正解のない問題にどう対処するのか。さらにいうと、自分でどうやって問題を見つけるのか。そこに焦点を当てる教育をしてほしいと思います。

田原総一朗の遺言:正解のない問題に挑戦せよ!

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編集部より:
次回「田原総一朗・次代への遺言」は、プリファードネットワークス社長・西川徹氏インタビューを掲載します。一足先に読みたい方は、9月12日発売の『PRESIDENT10.3号』をごらんください。PRESIDENTは全国の書店、コンビニなどで購入できます。
 

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(COMPASS社長 神野 元基、ジャーナリスト 田原 総一朗 村上 敬=構成 宇佐美雅浩=撮影)

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