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サントリーの「やってみなはれ」精神で、市場の真実に迫れ

プレジデントオンライン / 2016年11月28日 9時15分

サントリー食品インターナショナル社長 小郷三朗氏

清涼飲料市場は、ここしばらく年率2%の伸びで推移してきた。だが半面で、リーマンショック以来、デフレ傾向も続いている。価格を下げてでも数量を確保するという考え方だが、それは市場が拡大していればこその話で、人口減少で成長が鈍化してくれば戦略の見直しは不可欠だ。

私自身、長く宣伝畑を歩いてきたが失敗も山ほどある。昭和50年代末に、飲料市場の30%のシェアを持つ日本コカ・コーラグループの牙城を崩すべく、勇んで発売した「サスケ」が鳴かず飛ばず。わずか1年で撤退した。

しかし、それが次の発想の肥やしになっている。サントリーのDNAともいうべき「やってみなはれ」の精神とは、失敗を糧に市場の真実に一歩近づくことだ。業界での競争は厳しさを増すものの、こうした自由闊達な企業風土があれば、さまざまな工夫ができ成長の余地はある。

当社は、株式を上場した3年前から「脱デフレ戦略」をはっきりと打ち出してきた。販売数量増による成長を基本に置きながらも、高付加価値商品を手がけることで、不毛な過当競争に巻き込まれないことを心がけてきた。

だから、ファンの多い日本茶「伊右衛門」を進化させ、特定保健用食品の「伊右衛門特茶」を出せたことには手応えを感じている。

機能性飲料は価格設定も粗利率も高くできる。これを「サブカテゴリー戦略」と呼んでいるが、そのことでブランド力がより一層強化されたと思う。

商品力もさることながら、販路の拡大も同時並行で進めるべき経営課題だった。昨年、日本たばこ産業(JT)の飲料自動販売機事業を1500億円で買収したのはその一環にほかならない。この結果、われわれは一夜にして26万台の自販機を手にした。

しかも、今回の買収は単に規模の経済を追求したというだけではなく、JTの強みであるオフィスビル内のサービスのノウハウも取得できた。ここでは、コーヒー専用機など利益率が高い機種も採り入れていく。

清涼飲料を消費するロケーションといえば、家庭、オフィス、そして通勤・通学途中に大別される。

とりわけ、若い人たちは移動中に飲むことに抵抗が少ないから自販機との相性はいい。ただし、そこにはコンビニというライバルがいる。けれども、路面だけでなくインドアも拡充することで、勝機を掴むことができるはずだ。コンビニの売りは「近くて便利」だが、自販機は間違いなくその上を行く。ここに当社の優位性があるといっていい。

いま日本や先進国では、清涼飲料のトレンドが無糖、微糖にシフトしている。そこで当社は「避糖化」をキーワードに商品ポートフォリオの構成で健康に資する飲料の比率を高めた。その代表格こそ特茶だ。かつて、ウーロン茶で無糖飲料分野に先駆けたサントリーに一日の長がある。

こうした当社の商品特性をいかに訴求していくか。私はこれまでの経験上、マーケティングで重要なのは、消費者サイドに立って伝えていくことだと信じている。清涼飲料は老若男女が飲むもの。それぞれに合わせた多彩なカテゴリーで勝負したい。

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サントリー食品インターナショナル社長 小郷三朗
1954年、大阪府生まれ。77年京都大学法学部卒、サントリー(現サントリースピリッツ)入社。2009年サントリーホールディングス執行役員、11年サントリー食品インターナショナル専務、12年副社長。16年より現職。

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(サントリー食品インターナショナル 代表取締役社長 小郷 三朗 岡村繁雄=構成 尾関裕士=撮影)

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