トランプ氏はなぜ「映画監督」になりたかったのか?
プレジデントオンライン / 2016年11月22日 15時15分
■トランプ氏のポジティブで鋭い言葉
ベニハナのウェイティングルームから個室に場所を移したドナルド・トランプ氏、ロッキー青木氏(故人)と井上暉堂(きどう)氏の3人は、当時同店で最も腕のいいシェフの調理した最高級のステーキに舌鼓を打ちながら、会話を始めたという。
ヒルトンホテルからの出店要請を断ったという青木氏にトランプ氏が「それは正解です」と応じ、「ビジネスは“ノー”から始まる」「ほどほどの発想の、ほどほどの仕事量ではなく、人の知らないところで、最低でも普通の人の2倍は仕事をしろ」などと話が進むうちに意気投合。いわゆるユダヤ式商法に傾倒していることでも一致し、ビジネス談義は白熱したようだ。「I'll callenge till I die(死ぬまで挑戦する)」という青木氏の言葉に、トランプが「Me,too」と同意したのを、井上氏はよく記憶しているという。
ステーキ1枚の青木氏に対し、数枚を平らげる若きトランプ氏。
「むしろロッキーのほうがあちこちに話が飛び、議論をふっかけるほうでしたが、トランプは非常に冷静で落ち着いた受け答え。しかも大変ポジティブで、言葉には槍で突くような鋭さがあった」
もちろん、差別的な言動も皆無。2人の脇にいた井上氏もその会話に何とか割って入ろうと苦労したようだ。
「book smart(学識はあっても常識のない人)とstreet smart(抜け目ない人)の違いを二人とも強調。『こんな国(米国)でビジネスをやるんだから、理論や計算で乗り切れるわけがない』というロッキーに、『運やカンもサクセスの重要なファクターだ』などと応じた。私が何とか、『僕は自分自身に勝つことが何よりも大切だと……』と横やりを入れたら、2人ともスマイルで『そうだ、ケニー(当時の井上氏のニックネーム)』と言ってくれた」
米国では「double rainbow(二重の虹)を見た人は大金持ちになれる」という格言があるが、トランプ氏は「見た」と明言したという。
「トランプに『あなたは見ましたか?』と尋ねられたロッキーが『見たことがない。凄いもんだな。なぜだ?』と聞き返すと、『虹の根元に金がたくさん詰まっているからだ』。ロッキーは『Even joke truth in it(冗談の中にも本当があるな)』と大笑いしていた」
■「あいつはcontravertial(議論に巻き込む)な男だ」
井上氏がちょっと意外に感じたのは、トランプ氏が「映画監督になりたかった」「S・スピルバーグ監督の映画は全部好きだ」と明かしたことだった。「私の人生は芝居みたいなもの。自分より格上の人をどれだけキャスティングし、使えるかがカギだ」とも。「俺は、成功のためには他人のフンドシも使った」と強調する青木氏と、「目標が高ければ高いほど、それを成し遂げるには1人ではなくいろんな人の出会い、協力が必要。それらを利用しない手はない」とするトランプ氏。よくも悪くも成熟度の高さに加え、凄腕ビジネスマンや暴言王というイメージとは裏腹な深い人間味も感じたという。
「もてなされる側なのに、ロッキーの皿に自らステーキを切り分けて勧めたり、何人ものウェイトレスにさりげない笑顔で10ドル札、シェフにも20ドルのペティキャッシュ(チップ)を手渡していたのを見て、あの富豪も小金を大切にするのか、細やかな気を遣う人なんだなと思ったのを覚えています」
![](https://president.jp/mwimgs/9/1/300/img_9193fa88e325d26f6a78331d3e8b064037788.jpg)
青木氏を「米国で成功した唯一の日本人」と持ち上げるなど、他人の気持ちを気遣う繊細さ、愛情の深さが垣間見えたとか。
「そうでなければ、あんな美人の奥さんは貰えないし、娘・息子もちゃんと育たないのでは(笑)」
2~3時間の会食を終えて自宅へロールスロイスで帰宅する途上、運転席でハンドルを握る井上氏に、青木氏が後部座席から話しかけてきたという。
「『俺は、あいつにはとても敵わない』と落胆していたのをよく覚えています。ロッキーもビジネスの天才でしたが、あれほど打ちひしがれた様子は初めて見ました。『あいつはcontravertial(議論に巻き込む)な男だ』とも。つまり、あえて本来の意図とは異なる言葉を吐いて議論をふっかけ、そこからビリヤードのように突く角度を変えつつ狙った穴に落とす。正・反・合という弁証法のプロセスや、禅問答とも非常に近いものです」
青木氏は、「トランプは、このビジネス手法の天才だ」とも言っていたという。
「天才は天才を知る、ということでしょうか。今回の選挙戦中の派手な言動は、そういった側面からみると、非常に興味深い」
日本に限らず世界的な影響力のある権力者。その実像について、マスメディアを通じて幾重もの又聞きばかりきかされる中、貴重な証言のひとつといえそうだ。
(プレジデント編集部 西川 修一)
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