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看板倒れの「一億総活躍プラン」本当に得をするのは誰か

プレジデントオンライン / 2016年12月28日 15時15分

■実現性に乏しい看板倒れの政策

安倍内閣が次なる看板政策として発表した「ニッポン一億総活躍プラン」。私は何も期待していません。要するに、日本の経済を活性化するために、若者も高齢者も女性もみんなもっと働けといいたいんでしょ。みんなもう働いていますよ。生活が厳しいんだから。

安倍晋三首相のいうように、正規と非正規社員の待遇差是正や、待機児童の解消などが進んでいけば、それは若者も主婦もいま以上に活躍できるようになりますよ。

でも、どうやって実現するのですか。非正規の賃金を引き上げれば企業は総人件費が膨らむし、かといって、正社員が黙って賃金引き下げに応じるとは思えません。保育所や保育士の人材を増やすのはけっこうですが、その財源はいったいどこにあるのでしょう。結局、絵に描いた餅に終わると思いますよ。

それよりも安倍首相は、アベノミクスは失敗だったとまず国民の前で認めるべきです。

2016年1~3月期のGDPは年率換算で1.7%と半年ぶりにプラス成長に転じましたが、これはうるう年効果があってのこと。

給料が上がっているといってもそれは一部の大企業だけで、中小企業はむしろ下がっている。年金もマクロ経済スライドで実質目減りしています。だいたい景気がよくなったという実感がありますか?

要するに、日本経済は依然としてデフレ下にあるのです。安倍首相はアベノミクスをさらに加速していくそうですが、黒田東彦氏が日銀総裁でいる間に経済が劇的に回復するとは思えません。私は、あと4年はデフレが続くとみています。

そうすると、個人がやることはひとつ。借金を減らして現金・預金を増やすことです。

今年1万円のスマートフォンが来年は9500円になる。これがデフレです。同じ1万円を支払っても、1年後なら500円のお釣りがもらえるというのは、5%の金利が付くのと同じことなのです。

このように、モノやサービスの値段が継続的に下がるデフレでは、現金の相対的価値が上がります。逆に、借金は相対的に増えることになるので、早く返してしまうこと。住宅ローンを抱えている人は、借り換えや繰り上げ返済をしたほうがいいでしょう。

現金を増やすには、まず無駄な支出を抑える。生命保険は1年分を年払いにすると、毎月払うよりも2.5~5%ぐらい安くなります。50歳を過ぎているなら、もう保険は解約してもいいかもしれません。サラリーマンの場合は自分が死んでも会社から死亡退職金が出るし、住宅ローンは団体信用生命保険に加入していればそれでチャラ。残された奥さんには通常、遺族厚生年金と中高齢寡婦加算で毎月10万円以上が65歳まで支給され、その後は奥さん自身の年金もあります。

もし不安なら共済はどうでしょう。掛け捨てですが保険料は月々数千円で、入院や手術費用なども保障の対象となります。

デフレ下でやってはいけないのは投資。何もしなくても現金で持っていれば価値は上がるのだから、あえてリスクをとる必要はありません。日本国債の暴落は当面ないし、もし暴落しても株や土地が上がるのはそのあとです。1997年に通貨危機に見舞われた韓国をみてもわかるように、いちばん得をするのは暴落したときに現金を持っている人なのです。

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荻原博子(おぎわら・ひろこ)

経済ジャーナリスト。経済事務所勤務後、1982年から新聞、雑誌に連載。難しい経済と複雑なお金の仕組みを、わかりやすく解説。最近の著作に『隠れ貧困』『10年後破綻する人、幸福な人』など。
 

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(経済ジャーナリスト 荻原 博子 構成=山口雅之)

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