都議会自民はなぜ、取材を受けないのか?
プレジデントオンライン / 2016年12月27日 17時30分
2016年は、小池百合子都知事の年だったと言っても過言ではないだろう。プレジデント12月26日発売号で実施した読者アンケートでもその人気と注目は際立っていた。
小池知事が連載をするプレジデント編集部は、豊洲移転の問題、オリンピックの会場選定をハラハラドキドキしながら見守っていた。同じくプレジデントで連載をする橋下徹・前大阪市長は、膨れ上がったオリンピック関連予算をコストダウンさせたとして高く評価できるという。同じく連載陣といえば、飯島勲・内閣参与からは、「もう少し着地点を考えながらやったら100点なのに。瞬間的に支持率が90%あってもしょうがない」と指摘があった。他誌では、小池知事の手法を厳しく批判する媒体は多い。
豊洲移転の延期についてさっさと移転すべきだったと言う批判があがっているが、市場で扱っている商品が「食品」である以上、行政の過剰に慎重な反応は説明できるかもしれない。例えば、小泉内閣では、狂牛病問題の影響で、アメリカ政府がいくら安全を保証しても最後まで米国産牛肉の輸入を再開しなかった。近くの例でいえば、遺伝子組換え作物や中国産の農産物がいくら安全検査を通過しているからといって、スーパーで手に取ることに抵抗がある消費者は多いはずだ。
小池知事のやり方を批判する人がいても、支持率が高止まりしているのは、やはり小池都政が出してきた決断は民意を得ているということなのだろう。
他方、都議会自民党である。
就任時に知事とのカメラ撮影・握手を拒否する議長、都知事選で小池知事を応援した7人の区議の除名処分、そして、汚くヤジを飛ばしながら知事の対応を笑う議員たち。テレビを通して存在する彼らは、今や完全に「悪者」「伏魔殿」である。もしくは、選挙にボロ負けして無職になるのが可哀想という同情の声。いずれにしろ都民からはろくなイメージを持たれていない。
取材を何度申し込んでも断られている(幹部以外への取材は断るような指示が飛んでいるという噂もある)ので、こちらで推測するしかないが、彼らにだってちゃんとした言い分はあるはずだ。もしかしたら「マスコミは自分たちを『小池知事をいじめる悪魔の集団』としか報じない」「公明党にまで裏切られた」「あぁ、どうしよう」というような、パニック状態にあるのかもしれない。
都議会自民党は、過去から何も学ばないのか。小泉内閣が、郵政選挙で自民党内の一部を「抵抗勢力」とした構図とそっくりではないか。あのとき、間違ったことを主張していたとは思えないような人物たちまでもがドンドン悪玉のような扱いを受けてしまっていた。このままいけば同じような構図で、2017年夏の都議会議員選挙を迎えることになるだろう。結果は目に見えている。
では、どうすべきか。
菅義偉官房長官が、選挙対策委員長になったときにも繰り出された、自民党の伝統的手法が援用できるのではないかと思う。
その手法とは、「徹底して争点をなくす」という戦略だ。対峙する政党が自民党ができない政策として、「世襲制限」を掲げたとき、菅氏は「世襲制限」の公約を世間に発表した。世襲議員の多い自民党で、なぜそんなこと可能だったとかといえば、そのような公約はハナから守る気がないからだったのだろう。事実、そんな公約などなかったかのように、多くの自民党議員は今でも世襲を続けている。
他にも多くの例をあげることが可能だが、例えば、安倍政権の女性活躍推進はどこへ行ってしまったのか。閣僚の女性の数は、今や、たったの3人だ。
都議会自民党が、小池知事と対峙していくにはこの方法を用いるしかないだろう。議員報酬を下げるという機運が高まったなら、私たちこそ下げるという。情報公開しろと迫ってきたら、私たちこそ情報公開が大事と思いますと返す。豊洲移転を慎重にとなったら、私たちも慎重にした方がいいと思っていましたと主張していくのだ。今のまま、いたずらに知事に反発し、有権者に「小池さんは頑張ってるのに、都議会自民は伏魔殿」という認知を受けていては活路がない。
争点があるから注目をされ、争点がなければ新聞・テレビは興味をなくす。興味をなくしたときに、人知れず掲げた政策を骨抜きにしていくのだ。こうやって自民党は国民の厳しい目を今日まで無事にすり抜けてきたのである。
これは、都議会自民党が現状を打破する唯一の方法と思われる。都議会自民党は自民都連の幹部でもある萩生田光一内閣官房副長官を通して、菅長官に老練な政治手法を教えてもらうのがいいと思う。知事に対抗する手段が、「握手拒否とヤジ」では、あまりに稚拙ではないだろうか。
雑誌プレジデントでは、小池百合子東京都知事による連載「東京ビッグバン」、飯島勲内閣参与(特命担当)による連載「リーダーの掟」、橋下徹さんによる連載「橋下通信」が大好評を博している。とりわけ「リーダーの掟」では、短期集中連載として、内田茂氏をはじめとする「日本のドン」の内幕と手口を徹底的に暴露しているので、ぜひお手にとって読んでいただきたい。
(プレジデント編集部)
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