日本郵船・商船三井・川崎汽船、日本の海運会社がなくなる日
プレジデントオンライン / 2017年1月25日 9時15分
■崩壊危機の韓国海運、日本は?
日本、韓国の海運、造船業界が世界海運不況の荒波にのまれている。とりわけ、韓国勢は世界第7位のコンテナ船会社で経営破綻に陥った韓進海運の清算手続きが昨年12月に事実上決まり、建造量でかつて世界一を誇った造船業界も昨年末の受注残が17年ぶりに日本に抜かれ、“轟沈”寸前だ。
日本勢の厳しさも変わらない。日本郵船、商船三井、川崎汽船の海運大手3社が不振のコンテナ船事業の統合で合意したのがそれを物語る。しかし、前途は多難で、日韓の両業界とも「出口」を探るのは容易でない。
年明け早々、韓国造船業界にショッキングなニュースが駆け巡った。英国の造船・海運調査会社クラークソンの調査で、昨年末時点での韓国造船業の受注残(速報値)が日本に逆転され、世界第3位に転落したことが判明したからだ。韓国の造船業界は1999年に新造船受注量で日本を抜き、世界のトップに躍り出た。2009年以降は11年を除き中国にトップの座を明け渡したものの、日本の後塵を拝するのは、沈む「造船王国・韓国」の姿を鮮明にした。
韓国造船業界の凋落ぶりは、かつて世界最大の建造量を誇った現代重工業に大宇造船海洋、サムスン重工業を加えた「ビッグ3」が深刻な業績悪化に陥り、大規模な人員削減を迫られたことでも明らかだ。韓国最大手の韓進海運の破綻も国内での造船受注確保が困難になり、追い討ちをかける。韓国政府は基幹産業だった造船・海運業界の窮状に、昨年10月31日、構造調整案を発表し、造船大手3社は生産能力の23%削減など一段のリストラを迫られた。
■日本の海運・造船業界が沈没危機!
日本勢も世界海運不況にさいなまれている。海運大手3社はコンテナ船事業で17年3月期に合計で1000億円程度の経常赤字に陥る見通しにある。この打開策として3社は17年7月に共同出資会社を設立し、コンテナ船事業を統合することで合意した。沈没寸前だった3社が生き残りをかけた選択であり、ドイツや台湾の企業と合意していた共同運行から破綻した韓進海運が外れたことも統合への背中を押したともみられる。新会社の売上高は単純合計で約2兆円、世界シェアで6.5%と世界6位のコンテナ船会社に浮上する。
しかし、先行きは多難だ。「スケールメリットを追求したい」(川崎汽船の村上英三社長)との目論みも、世界トップの背中は視界にも入らない。それどころか、最大手のA・P・モラー・マークス(デンマーク)は昨年12月、世界7位のハンブルク・スード(ドイツ)の買収を決め、シェアは18.6%に跳ね上がり、背中は一段と遠退く。
コンテナ船事業はコスト競争力強化に向けて世界規模の再編が加速しており、日本勢の統合は出遅れ感が否めない。輸送能力増に比べ貨物量の伸びは鈍く、市況回復も多くは望めず、石油輸出国機構(OPEC)による原油減産から燃料費が高騰し、コスト上昇圧力になりかねない。3社は年間1100億円の相乗効果を見込むものの、こうした要因から「18年3月期まで厳しい状況が続く」との判断で3社は共通し、18年4月の新会社の事業開始まで各社がコンテナ事業で体力を保てるかに不透明感は残る。
造船業界に目を転じても、川崎重工業が今年3月末までに造船事業の事業存廃を含めた結論を迫られるなど、三菱重工業、三井造船など総合重機の造船事業は青息吐息だ。韓国政府の構造調整策も昨年12月の経済協力開発機構(OECD)造船部会で、公的支援が供給能力過剰な世界造船市場に悪影響を及ぼすと批判の矢面に立たされ、日韓の海運、造船業界が前途多難なことは間違いない。
(経済ジャーナリスト 水月 仁史)
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