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小池「新党」は自民・民進に次ぐ「第三極」に化けるのか?

プレジデントオンライン / 2017年3月2日 9時15分

■大阪維新の会と似た動き?

2月5日に投開票が行われた千代田区長選挙、小池都知事が支援した現職の石川雅己候補が1万6371票を獲得して圧勝した。首長選挙としては異例の全国的な注目を集めたこの選挙、小池知事と都議会自民党や都議会のドンと呼ばれる内田茂都議との「代理戦争」とされ、その「代理戦争」に小池知事が勝利して7月に投開票が行われる予定の東京都議会議員選挙での小池「新党」の勝利・躍進に大きく弾みがついたと言われている。

実際に「代理戦争」であったかどうかはさておき、この選挙を経て小池「新党」への期待と注目は更に高まったと言っていいだろう。

さて、この小池「新党」、東京都政に関する限りでは、守旧派や利権の巣窟とされる都議会自民党と対決して、「都民ファースト」の都政を実現するために「東京大改革」を進めるとされている。そしてその「東京大改革」の円滑な推進のためには7月の都議会議員選挙で小池「新党」が過半数を獲得する必要があるということになっている。

と、ここまでだけなら単なる都政における動きに過ぎないが、この小池「新党」、都議会での大躍進を足掛かりにして国政進出までうかがっているとも言われている。国政政党となると、小池「新党」、自民党と組むのか、民進党と組むのか、はたまた第三の道を選ぶのか。

そもそも、小池「新党」といっても、現状では強いて言えば都民ファーストの会がそれに該当しうるぐらいで、それもあくまでも地域政党であり、それがそのまま大きくなるのか、小池知事を支持するグループが群雄割拠するのを総称して便宜的に「新党」と呼ぶような状態になるのか、いまだ不明である。

それに小池知事自身は自民党員のままであり、進退伺は提出しているものの離党届は提出していない。もし離党する気があるのであれば、最初から離党届を提出してしかるべきであるが、小池知事はいかなる御所存か?(当然のことながら、小池知事は都民ファーストの会には所属していない)

■小池「新党」は第三極たりうるか?

小池知事も、2月3日の記者会見で都議選に関する質問に対して次のように答えている。

「数については、全体で多くの方々に、この都民ファーストといいましょうか、東京大改革、そして3つのシティ、この考え方についてご賛同いただける、そういった会派が多くなるということは、これはスピード感を持って、そして都民目線の政治、行政を進めるという意味では大変重要な点だと思っております」

2月10日の記者会見でも、同様のスタンスの発言をしている。

「今申し上げられるのは、小池都政を支えていくに必要な、過半数を確保する個人及び組織ということになろうかと思います。」

さて、小池「新党」のような動き、かつての大阪維新の会の動きと類似しているとして、これとの比較で語られることがある。

大阪維新は国政政党としては日本維新の会を設立し、離合集散を繰り返して今日に至っているが、当初は自民党でもない民主党でもない「第三極」を標榜していた。日本維新もとい大阪維新は与党の補完勢力と評されることもあるが、その話は横に置いておくとして、現状では結局のところ大阪のことを考える大阪のための政党、すなわち地域政党の域を出ていないように思う。

小池「新党」も同じような道をたどるのだろうか?現状を前提にして国政政党となった場合の小池「新党」を想像してみると、少なくとも最初から与党入りを目指すことはないだろうし、民進党と共同歩調を取るということも考え難い(昨今の蓮舫代表の小池「新党」をめぐる発言からすると、民進党の方から小池「新党」に擦り寄ろうとしていると言った方がいいような状況)。

そうなると、やはり自民党でもなく民進党でもない第三の道、つまり「第三極」を目指すということになりそうだが、果たしてどうだろうか?そもそも小池「新党」は「第三極」たりうるのだろうか?

■立ち位置が難しい「第三極」

筆者は「第三極」の一翼を担っていた、みんなの党の代表であった渡辺喜美衆議院議員(当時)の政策担当秘書を、2012年の第46回衆議院議員選挙での党の躍進・拡大から2015年末の分裂までの1年強務めた。

その詳細については拙著『仮面の改革派・渡辺喜美』に詳しいが、「第三極」の本質やその崩壊の過程を間近で見てきた一人である。都市部を中心に、多くの有権者からの期待と支持を集めたみんなの党。結党宣言の表現を使えば、自民党でもない民主党でもない第三の勢力の糾合と自民党でも民主党でもない有権者の受け皿を目指した、「第三極」の本流と言ってもいい存在であった。

そんな「みんなの党」も政治が大きく揺れ動き、特に一強他弱と言われるような状況に至って、政策的にブレ、結党の精神を曲げて自民党に擦り寄って、分裂して崩れてしまった。

2013年12月、衆参合わせて14人が離党して結いの党を結成して分裂。その後当時代表であった渡辺喜美衆議院議員(こちらも当時)が、自らの政治資金を巡る疑惑の責任を取る形で辞任し、当時党幹事長であった浅尾慶一郎衆議院議員が代表に就任した(薬師寺道代参議院議員は出馬する意向があったようだが、周囲に止められたとも聞く。賢明な選択と言えるだろう。当時の党の実態もさることながら、1期目の議員に代表として党の運営を行うことなどできようはずがない)。

しかしその後、「与党再編」なる摩訶不思議な概念を掲げた渡辺喜美前代表が浅尾執行部を執拗に攻撃するようになり、11月には執行部は解党を決定。解党直前になって離党して民主党に流れる者、2013年12月の段階での離党のタイミングを逃したものの、党の混乱を受けて離党して維新の党(当時)へ入党した者、解党まで党所属議員であり続けた者の大まかに3つに分類できるが、見事にバラバラになっていった。参議院では、日本を元気にする会の結党、無所属クラブ(院内会派)の結成、日本維新の会(当時)から分裂した次世代の党へ入党の3つに分派した。

この党についてとやかく言うのは本稿の趣旨ではないが、同党の結党から躍進、そして分裂、解党への経緯を改めて見てみると、「第三極」というのは、自民党や民主党、現在であれば民進党という政党があった上で成り立つ、立ち位置や舵取りが非常に難しい存在であるように思う。

それは存在意義を常に見直していかなければいけないということでもあり、単に「改革」を標榜し、「対案」や「提案」を出していればそれでいいという話でもない。対立軸や争点も刻々と言ってもいいぐらいの速さで変化し、それ以外にも大小さまざまな課題や問題が不規則に発生する。国会会期中の法案をめぐる対立や政府内・与党内の不祥事はそのわかりやすい例であろう。

■「敵」づくりの功罪

「第三極」は特定の利益と結びついていないことや、しがらみがないことをウリの一つにしていた。そして、特定の利益と結びついている集団、しがらみがある集団を「既得権益ベッタリ」、「利権ズブズブ」と批判し、自分たちの活動を「既得権益との闘い」と位置づけた。

「みんなの党」の場合、電力(電事連、電力総連等)、医師会及び農協を「既得権益」とし、それらと結びついた政治家(自民党及び旧民主党)をさまざまな機会を捉えて口撃した。また、「既得権益」や「利権」との結びつきという点では、財務省や経済産業省を筆頭に、霞が関の中央省庁も批判の対象にした。

無論、これらは単なる批判のための批判ではなく、具体的な政策(電力であれば徹底した電力自由化、農業であれば農協改革等。)があっての上での批判や口撃ではあったが、立ち位置を明確にする、穿った言い方をすれば目立つための「敵」づくりという側面も多分にあった。

個別の政策への対応には是々非々で臨むとされていたが、それでは有権者からは分かりにくいことも多く、分かりやすさや目立つことのみならず、闘う姿を見せるという点でも「敵」づくりは重要であった。加えて、他の「第三極」との差別化も求められ、政策的な違いを明確にするのみならず、場合によっては他の「第三極」――「みんなの党」にとっては当時の「日本維新の会」――が「敵」に仕立て上げられた。

小池「新党」の場合、都政・都議会に巣食う利権勢力と闘い、「都民ファースト」を掲げて都政を都民の手に取り戻すため、「東京大改革」を進めるとしている。闘う相手、つまり「敵」は利権勢力とされる都議会自民党であり、この「敵」と闘う勢力を「都民ファースト」の旗印の下に糾合しようとしている。

小池「新党」は自民党でもなく(小池知事自身は自民党員のままであるが)、民進党でもない、新しい勢力である。複数の会派が小池知事支持、「東京大改革」支持で群雄割拠する場合であっても、自民党でもなければ民進党でもない。(自民党や民進党の分派が自民党籍、民進党籍のまま小池知事支持を掲げる場合も考えられなくはないが)

そして、小池「新党」が進めようとしている「東京大改革」は、これまで自民党も民進党も進めることが出来なかった政策であり、政策的な立ち位置もはっきりしている。

先に「みんなの党」に関して挙げた「第三極」の要素は一通り備えていると言っていいだろう。ただし、小池「新党」はあくまでも現段階では東京限定の動きであり、「東京大改革」も東京のための政策であって、地域政党の域を出ていない。

■国政での立ち位置をどこに見いだすか

大阪維新の会が日本維新の会という国政政党を必要とし、それを設立し、大阪色が強いものの勢力を拡大できたのは、大阪維新の会が提唱した政策を実現するためには国政レヴェルでの政策の実現、具体的な例は大阪都構想実現のための特別法の制定であるが、それが必要であったことが大義名分の一つであったわけだが、「東京大改革」の実現のために、通常の国との連携以上の国政レヴェルでの動きが必要かと言えば、現段階で示されている情報に基づく限り、必要であるとは言い難い。

小池知事の総理の座への野望といったものとの関連で、国政政党化もありうべしといった見解も見られるようだが、そもそも小池知事の「野望」とやらも脚色の世界の話のような気がしなくもない。都知事という地位を確保して「東京大改革」を進めようと言っているのに、そう簡単にその地位を放り出すとは考えられない。同時に、自分たちの新たな足場・居場所を確保するために、一部の国会議員が小池「新党」との連携に動いているとも聞く。もしかしたらそうした議員が笛を吹いているのかもしれないが。

ただし、今後、国と対立する場面や自民党との対立が激化した場合には話は違ってくる。何といっても7月の都議選では都連とはいえ自民とぶつかるわけであり、否が応でも高まる小池人気の勢いに押し流されて自民党が大敗するとも言われている。そうなれば、大阪維新よろしく、いざ国政へという意見や動きが出てもおかしくはない。それがために、与党は今年の秋には衆院の解散総選挙に踏み切れず、年末から年明け以降にせざるをえないという話もあるくらいである。

もっともその時、誰を「敵」に据えるのだろうか?また、自民党でも民進党でもない有権者の支持を集める国政レヴェルでの立ち位置をどこに見出すのだろうか?少なくとも「東京大改革」ではない。

また、「東京大改革」もその具体的な措置や事業が進められていけば、当然に壁にぶつかったり、課題が浮き彫りになったりすることが考えられる。そうしたことへの対処を間違えれば、都議や有権者の小池離れが起こらないとも限らない。期待が外れた、期待を裏切られた支持者は急速に離れていくだろう。

■都議選以降のイベントは?

そして、「第三極」は難しい舵取りを間違えると「被害者」を生む。以前、かつての「みんなの党」関係者と話している中で、冗談交じりでこんな表現が出た。「『第三極』被害者の会」。「第三極」の議員や秘書、党職員のみならず、これに期待した有権者はみんな「第三極」に振り回され、裏切られた被害者であると言っていいかもしれない。無論、「第三極」が存在していた当時はその役割や躍進を信じて疑わなかった人が多かったわけであるが、言い得て妙である。

特に「第三極」は常に揺れ動くその立ち位置に加えて、個人的な能力や魅力といった属人的な要素に寄るところも大きい。「第三極」の代表者がブレたり、何かの壁にぶつかった時にそれまでの主張を180度転換するようなことがあれば、一気に漂流し始める。「みんなの党」はまさにそうだったのであるが、小池知事の個人的な能力や魅力に寄るところが、「みんなの党」以上に大きい小池「新党」の場合は、輪をかけて影響が大きいだろう。

「みんなの党」にしても小池「新党」にしても共通しているのは、熱狂的な信者のような支持者がいるということである。小池「新党」については緑のものを身につけ、気勢を上げる熱狂的な支持者をメディアで見かけることも多いだろう。知られていないかもしれないが、「みんなの党」にも、党の政策や主張はどう変わろうとも常に100%正しい、渡辺代表の発言は絶対正しいと信じて疑わない信者のような支持者、さらに議員が少なからず存在した。

そうした支持者は熱狂的であればあるほど、冷めた時の反動は大きいように思う。加えてその熱狂は以外と根が浅く、熱狂を持続させるような演出が求められる。

小池新党の場合、これまでは都知事選、衆院補選、そして千代田区長選と、支持者を盛り上げて熱狂させるイヴェントが存在した。その一つの山場が7月の都議選であるわけだが、都議選以降が続かない。仮に衆議院の解散総選挙があったとして、にわか作りの国政政党で勢いを頼みに闘えるのかと言えば、その効力は限定的にしかならないように思う。「みんなの党」や日本維新の会が出来た時のように、自民党や民進党から離党者が続出するとは考えられない。

そうなると、熱狂や国政へという勢いを維持しつつ、自らの「東京大改革」への悪影響を最小限に止めるための合理的な選択肢としては、政党は作らずに特定の候補を支援するといったことになるのではなかろうか。

(政策コンサルタント 室伏 謙一)

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