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「兼業・副業」はシニア社員と役職定年者から始まる

プレジデントオンライン / 2017年3月13日 9時15分

■「兼業・副業」容認は14.7%だが、実際は

兼業や副業が、注目されています。政府も働き方改革の一環として、サラリーマンへの普及を推進していく方針です。明確な定義はありませんが、兼業とは複数の会社や組織に所属する働き方、副業とは会社からの賃金のほかに副収入を得ること、といった意味になるでしょうか。

中小企業庁が実施した「平成26年度兼業・副業に係る取り組み実態調査事業」によると、従業員の兼業や副業について、(1)推進している:0%、(2)推進していないが容認している:14.7%、(3)認めていない:85.3%、という企業割合になっています。

最近は、サイボウズやロート製薬、メルカリなどの導入事例がクローズアップされていますが、現実には消極的な企業が大多数という結果です。

「視野が広がる」「社員の採用・定着に有利」といった企業側のメリットを訴える声はあるものの、「疲れから、本業に支障を来すのでは」「転職されるリスクが高まるのでは」といった不安もぬぐえません。それなら、「あえて推奨する必要はない」というのが、経営者や人事担当者の本音ではないでしょうか。

しかしながら、実際には兼業や副業に対して、企業側が強く反対しているとは思えません。調査アンケートで、「推進していますか?」と聞かれればNOという感じではないでしょうか。

というのも、パートタイマーやアルバイトにまで禁止している会社は少ない。学生がバイト先をかけ持つといったことは、日常的です。「それは、パートやアルバイトの仕事内容だから」と思われるかもしれませんが、経営者が複数企業の役員に名を連ねることも一般的です。上場企業では社外取締役を採用する動きが強まっていますが、そのほとんどは現役経営者や元経営者、弁護士、会計士、大学教授などの兼業です。ソフトバンクの社外取締役には、ユニクロの柳井社長や日本電産の永守社長が加わっていますが、この方々が一般のサラリーマンより忙しくない、とは誰も思わないでしょう。

すなわち、兼業・副業が認められてこなかったのは、いわゆる“正社員”だけなのです。

また、正社員についても、ネット社会では副業を正確に把握するのは困難です。今流行りのユーチューバ―やネットオークションでの商品売買、ブログにアフィリエイト広告を掲載すれば、簡単に小遣い稼ぎができてしまいます。古くは、週末に家業の商店や農家の手伝いなどで、副収入を得ることもあったでしょう。要するに、これまでも『建前禁止・実質黙認』という状態だったのです。

■まずは定年後に「兼業・副業コース」設置

とはいえ、企業として積極的に容認・推奨するかと言われると、二の足を踏んでしまいます。先ほど述べたような不安が、経営者や人事担当者の頭をよぎるからです。

まずは、定年再雇用後のシニア社員、そして役職定年者に限定した解禁を提案したいと思います。定年再雇用者に対して、明確に兼業・副業禁止を定めている会社は少ないでしょう。しかし、正社員時代の延長でシニア社員の側も、なんとなく禁止と思っている。また、再雇用後も原則フルタイム勤務にしている企業が多いため、時間的な制約もある。

そこで、定年後の働き方に「兼業・副業コース」を設定し、週3日勤務や週4日勤務を選択できるようにしてはどうでしょうか。定年を迎えて、いきなり起業や転職をする勇気は持ちづらいですが、一定の雇用と収入を確保した上であれば、第一歩が踏み出しやすい。

一方、大企業を中心に導入されている役職定年制度。主に管理職が、56歳とか58歳といった年齢に達すると、部長や課長といった役職からはずれるしくみです。

役職定年者は、それまでの役職から降りるものの、会社を退職するわけではありません。後任管理職の補佐やプレーヤーとして勤務を続けるのですが、明確な役割が提示されず、手持ち無沙汰になっている人も少なくありません。

シニア社員に加え、役職定年者にも、兼業・副業の先鞭役となってもらうのです。

こうすることで、50代以降の働き方に選択の幅が広がります。特に管理職まで勤めた優秀な人が、自社内では後人に役割を譲ったとしても、長年の経験を生かして社外でも活躍できるのであれば、社会的価値があるのではないでしょうか。企業情報などの問題に対しては、競合企業との兼業禁止などを定めておけばいいでしょう。逆に、他社から兼業人材を受け入れることで、さまざまな企業のノウハウを手軽に活用できるかもしれません。

シニア社員、役職定年者で試してみて、上手くいくようなら、その後に全社員への適用を考えるのが、多くの会社の現実的なステップではないでしょうか。

(新経営サービス 常務取締役 人事戦略研究所所長 山口 俊一)

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