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東国原英夫「小池さんはもっとぶっ飛ばさなくてはダメだ」

プレジデントオンライン / 2017年3月21日 9時15分

東国原 英夫(ひがしこくばる・ひでお)1957年宮崎県生まれ。第17代宮崎県知事。元衆議院議員(1期)。早稲田大学第二文学部卒業、政治経済学部中退。07年宮崎県知事に当選。12年衆議院議員に当選するも、13年に辞職。

■有権者は知事が本気かを見ている

──小池百合子東京都知事と東京都議会自民党の激しい駆け引きが全国的に注目を集めている。前宮崎県知事・東国原英夫氏に、自身の実体験に基づいた自治体の首長の在り方を聞いた。

僕が宮崎県知事になった状況は、小池氏が東京都知事になった状況と非常に似ている。舛添要一前知事が政治とカネの問題で失職して、小池氏が知事となった。同様に、宮崎県では安藤忠恕前知事が政治とカネの問題で逮捕されて、そのタイミングで僕が知事になった。自民党が立てた本命候補を破って知事となり、改革を進めるところも同じだ。知事逮捕の異常事態を経て、その後の改革をどうするか、メディアから注目されていた点も現在の東京都と似ている。

知事になって最初に、職員のコンプライアンスに対する意識改革を行うことになった。前知事の辞職は官製談合事件に絡むもので、不正な入札をクリーンにするため、「入札制度改革」を断行した。WTO(世界貿易機関)の基準に合わせて250万円以上はすべて一般競争入札とした。全国で最も遅れていた入札制度を、日本一厳しいものにする内容で、県職員に意識を変えてもらう必要があった。

最初にトップとしての覚悟を示すことで、その後の改革が円滑に進む。小池氏は知事に就任してすぐの都議会で
「東京大改革」について、多くの受け答えをしていた。議会も有権者も新しい知事が本気かどうかを見ている。最初に強烈な意思表示をすれば、本気であることが伝わる。

僕も同じような経験をした。宮崎県にも議会にドンがいて、最初の代表質問の際、全国放送されているのを知りながら、彼の名前を絡めたダジャレで切り返して笑いを取った。ドンにとっては非常に屈辱だったようだ。「俺に対してあんなことを言う知事はいなかった。東国原はどんな人間なんだ」と言われることになった。ドンと対立しても改革を進めるという決意のメッセージは、職員をはじめ議会、有権者すべてに伝わることになった。

議会に光が当たり、人々の注目が集まると、ドンの力は弱体化していくものだ。宮崎県ではそうだった。都議会のドン内田氏は何度かお見受けしたことがあるが、面倒見のいいおじさんという印象で、周囲でも彼のことを悪く言う人はいない。ただし、人間的にいいということと、事業・政策に関する政治的な関与とは別問題だ。内田氏が自民党の実力者であり、都議会の実力者であることは間違いない。

職員の意識改革の第一歩として「裏金はありませんか?」と投げかけてみた。なんと3億7000万円もの「裏金」が出てきた。職員から自発的に出てきたので、外部調査委員会を開く必要はなかった。役所には隠ぺい体質がある。「襟を正そう、膿を全部出し切ろう」「隠すことをやめて『見える化』しよう」という号令をかけた。全国から見られることに慣れていない職員たちは当初困惑をしていたが、この呼びかけに応えてくれた職員がいて、そこから大きく意識が変わっていった。

ここでの「裏金」とは事業者にお金を預けるという不適切な事務処理のことだった。3分の1は職員からの寄付を募って行う自主返納としたが、大きく超えて寄付が3分の2も集まった。そのときに、職員たちの改革の思いを確信した。「裏金」づくりが長く続けられたことで、職員たちは悪いことをしているという意識を失っていた。心の中で後ろ暗い罪悪感があったのだろう。「肩の荷が下りた、ありがとう」と言われることもあった。

「見える化」することで仕事がやりやすくなることに、だんだんと職員は気がついてきた。当時の宮崎県では議員が職員に対して「働きかけ」をしていた。そこで、どの議員・業者が県に働きかけてきたのかをすべてオープンにすることにした。すべて記録に残し、公開するということをやった。目立って報道されることはなかったけれど、県職員には最も喜ばれた改革だった。地元の有力者に「知人が今度就職だから面倒みてやってよ」と頼まれると、職員はなかなか断れないものです。

改革を進めていくと職員の意識が変わり、同時にモチベーションが上がる。県庁が活性化したことは、宮崎県全体が活性化することに繋がった。

■責任をとらない慎太郎、侍なら腹を切らんかい

小池氏はブラックボックスと言っているが、東京都議会には見えづらい部分がたくさんある。実は、東京都は情報開示などの行政改革が最も遅れている自治体の一つだ。本来は率先して全国のリーダーであるべきだが、そうなっていない。県知事になったとき、宮崎県は情報公開に関して都道府県でワースト2位だったが、辞める頃には上位10位に食い込むくらいになっていた。東京都は低いままだった。当時、東京都知事だった石原慎太郎氏が、興味関心を示さなかったことが関係していると思う。

都議会の改革に挑む小池百合子東京都知事。

東京都の17年度予算案の中で、政党復活予算の問題が明るみに出た。30年くらい前まではどこの地方自治体でも存在していたが、今やほとんど存在していない。東京都は最後まで残っている自治体だった。石原氏の時代に、東京都は財政再建団体に転落間際から改善し、排ガス規制、羽田空港国際化などの大きな政策は進めることができたが、職員の意識改革は進まずにガラパゴス化していたのではないだろうか。

小池都政になって豊洲移転問題・オリンピック問題など、顕在化される問題が多くなった。これは小池氏の大変な功績だ。待機児童や災害対策などはこれから予算を組んで具体的に取り組んでいくだろう。小池氏に最も期待しているのは、これまでの都政が成しえなかった職員の意識改革とさらなる行財政改革だ。都庁内の硬直化して、見えなくなっている部分をあぶり出し、解消することを期待したい。

豊洲新市場への移転問題では、石原氏や当時の幹部を呼び出して明らかにすることが必要だ。3月3日、石原氏は移転を決めた責任者として、会見を開いた。「果たし合いに行く侍」の心境で臨むと事前に言っていたが、「責任転嫁」と、詳細については「ゼロ回答」に終始した酷い会見だった。侍なら腹を切る覚悟で臨んでほしかった。

石原氏は都議会の百条委員会に呼ばれることになっているが、真相を明らかにするには特別委員会では弱いので、妥当な判断だろう。東京オリンピックに関してもそうだが、通常の特別委員会は出頭や証言の義務がない。極端な話、嘘をついても罰則規定がない。質問と答えを事前にすり合わせることも多いため、真実を明らかにすることは難しい。

小池氏には、都庁職員の浄化にも取り組んでほしい。東京都は5年・10年後に、今と同じように潤沢な資金を確保できる保証はない。2020年東京オリンピック・パラリンピックの後、一気に高齢者が増えると言われている。今後10年の間に何らかの対策を講じなくてはならないだろう。

東京都には落札率が高すぎるという問題もある。調査・精査をすることで正当性を担保して、透明性をあげていくことが必要だ。行財政改革、都職員の給与体系、天下りの問題、議会改革など、これらの改革をうまく進めることができれば、小池さんは歴史に名を残すような首長になるだろう。

石原氏は「部下を信じているので、週2回しか都庁に行かなかった。信頼できる部下を育てることが知事の仕事だ」と言っている。知事の仕事は、職員を信じることと、監視することの両方だ。東京都は首長が都庁にいないことで、マイナス面が出てきたのだろう。首長は行政をコントロールしてマネジメントする立場で、部下が優秀だから丸投げすることは間違っている。職員を敵視して問題になったのが大阪、全く信用して見えなくなったのが東京だ。

小池氏のやり方を見ていると、懐かしいと感じることが多い。劇場型にしてメディアの注目を集める手法はさすがだ。知事在職中の4年間、注目を集めるため、話題を提供し続けないといけないので小池氏も大変だろう。メディアが注目しなくなってくると、また旧体制が跋扈してくる。

都政の改革は最初の2年間が勝負になる。その間に組織や条例も含めてバッと整備してしまうと、うまくいく。小池氏はいい動きをしていて、最初から飛ばしている印象を受けると思うが、最初が肝心だからこそ、もっとぶっ飛ばさないといけない。

(東国原 英夫 渡瀬裕哉=構成 門間新弥=撮影 時事通信フォト=写真)

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