千代田最終決戦「都議会のドン!vs警視総監のボン!」
プレジデントオンライン / 2017年3月31日 15時15分
■ドンが打ち明けた警察当局への影響
小池百合子東京都知事の率いる都民ファーストの会は、3月9日、東京都議会議員選挙(7月2日投開票)の千代田選挙区の公認候補として、第89代警視総監・樋口建史氏の長男で小池氏の元秘書・樋口高顕氏を擁立すると発表した。警察と関係の深い人物の息子(ボン)を擁立することで、有権者に利権の一掃を訴える狙いがあると言われている。
小池陣営の標的となっているのは、前自民党東京都連幹事長で「都議会のドン」の異名をとる内田茂氏(千代田区選出)だ。
2013年6月の都議選公示日前に、内田氏は悪質な公職選挙法違反の疑いをかけられている。自身の選挙区の千代田区内で、ビール券40枚を配布したのだ。東京地検は、「選挙に関する寄附」と認定する一方、「金額が少ない」という理由で不起訴処分とした。ビール券という事実上の金券を配布する暴挙に出ても、お咎めなしという結果に、警察が内田氏に手心を加えたのではないかという批判が出た。
内田氏と警察の関係について、都民ファーストの会・音喜多駿幹事長は、自著『東京都の闇を暴く』でこのように説明する。
「私は議員1年目に『警察・消防委員会』という委員会に配属され、都議会のドンこと内田氏とご一緒しました。(中略)私は都議会のドンの威光を強く感じたことを今でも覚えています。そしてこの警察 ・消防委員会という存在こそが、実はドンの権力を象徴するものになっています。総務委員会や厚生委員会など、東京都議会には9つの常任委員会があり、どこも議員たちは定例会のたびに質問を準備し、長時間にわたって様々な議論が行われます。ところがドンが所属する警察・消防委員会は、なんと 『慣習』として議員が質問することはできないことになっています」
他の委員会が数時間を費やす議案審査日を、警察・消防委員会は5~10分で終了。警視総監が霞が関から都庁に出勤する手間を避けるのが、慣習の理由とされているが、「国家公務員だからといって都議会が遠慮しなければならない理由にはならず、この時点で意味不明な話」と音喜多幹事長は指摘する。都民は、警察行政をチェックする機会を事実上失っているのだ。
「小池陣営は内田氏が幅を利かせる東京都の警察行政を警戒し、選挙後の取り締まりの狙い撃ちを恐れている。公職選挙法は複雑で、新人候補は違反を犯しやすい。都民ファーストの会の公認が現職や元職の議員が中心になっているのも、そのような事情があるからだ」(小池陣営幹部)
本誌では、内田氏が一部の記者だけに語ったオフレコのメモを入手した。都民ファーストの会が警視総監の長男を千代田区の公認候補としたことを問われた内田氏はこう答えている。
「うーん、警視庁はどうするんだろうね。親父(建史氏)とはね、オウム(事件)のときに補正を組んだ。資材置き場とかなんとかで、急な対応を必要としていたから、(予算を)かなり増やしてあげた。そんなことがあるから、警視庁もいろんな意味で都議会自民党を頼りにしても(らっているはずだ)……」(※( )内は編集部による補足。)
樋口高顕氏の父親、建史氏は東京大学法学部を卒業後、警察庁に入庁し、11~13年1月まで警視総監を務めた。警察官僚時代は、DNA型データベース、携帯電話の本人確認、防犯カメラを使った捜査を実施し、新しい仕組みをつくり上げてきた。その後、14年から現在までミャンマー大使を務めている。ミャンマー大使就任には、菅義偉官房長官が大きく関わっているという。
「現ミャンマー大使である樋口建史氏は、官邸との強いパイプがある。小池知事が国政へ参画していく布石と捉えていいのだろう」(官邸関係者)
公認を受けた樋口高顕氏を直撃した。
「父は出馬に反対していましたが、たった一度の人生だからと最終的に認めてくれました。また特定の個人を貶めるべきではないというアドバイスもありました。私は地元の皆さんに寄り添った政策を正々堂々訴えていくつもりです」
(プレジデント編集部=写真)
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