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付箋を駆使した「100日計画」で新規顧客を獲得成功

プレジデントオンライン / 2017年4月20日 9時15分

■英語圏では英語でメモをとる

スイスに本社を置くチューリッヒ生命は、1996年に日本での事業を開始しました。当初は対面募集代理店を置かない、通信販売だけの直販スタイルでした。私は当社の日本における代表者を2012年から務めていますが、幸いなことに業績は順調です。15年度上期(4~9月)の新契約年換算保険料は前年同期比約9倍となり、下期も引き続き好調です。

その理由は新商品の投入と、販売チャネルの多様化です。当社では07年からしばらく大型商品の投入がありませんでしたが、この3年で「終身医療保険プレミアムDX」などの新商品を7つ投入しました。また、従来の電話などによる通信販売に加えて、インターネット、対面募集代理店、銀行と募集の窓口を増やしたことで、新規のお客様が目に見えて増加しました。

こうした成果の骨子となったのが、「100日計画」と呼ぶ企業変革プロジェクトです。業務上の課題を「お客様サービス」「商品」「チャネル支援」「チャネル」「人材・組織」「システム」「ファイナンス」など8つに分類して洗い出し、担当の社員たちが解決に向けて取り組みます。おおよそ100日を単位として、新商品やサービス、システムを導入し、PDCA(計画→実行→評価→改善)サイクルを回すので、100日計画という通称をつけました。

100日計画スタート時の12年4月の社内資料があります(写真を参照)。着任直後に結成した戦略策定チームとともに、業務上の課題を洗い出したものです。

彼らとの議論を整理して、PCに入力したのがこの画面です。紙のノートは介在していませんが、いわばノート上に情報を整理したようなものです。

戦略の枠組みは私の考えですが、それぞれの部門のディテールは、当然ながら業務に従事してきた社員のほうが詳しいはずです。そこで、彼らの知恵を借りながら計画立案するために、会議ではホワイトボードと大きめの付箋を用意しました。

まず、メンバーと議論するなかで浮上してきた課題や改革案を、一点ずつ付箋のうえに書き出していきます。ホワイトボードには「お客様サービス」「商品」「チャネル支援」などの枠だけを書いておき、枠のなかへ付箋を貼り付けていきます。それをもとにさらに議論を重ね、最終的に落ち着いたのが、ここにある資料のような改革プランなのです。

こうした活動のベースとして私が重視するのは、日ごろ感じたことや気づいたことを書きつけている、次のような3種のノートです。

(1)自分が受け手となる面談や参加した会議などの記録
(2)自分が送り手となるスピーチやメールマガジンの原稿やキーワードのメモ
(3)宿題や課題のTO DOリスト

たとえば(1)に記すのは、海外で行われるチューリッヒグループのトップ500人を集めた会議の内容です。世界170カ国以上に事業を展開するグループなので、グローバル会議も昨年はイタリアのローマ、今年は1月に米国のマイアミで実施しました。会議でグローバル生命保険部門のトップが話した内容などを記し、社内に向けて発表します。

国内募集代理店との交流内容も(1)に含まれます。契約獲得の成績優秀者の海外表彰旅行、参加者との会合も行いますから、その際に出た重要な意見を書き留め、改善を図ります。

気を付けているのは、英語圏でのイベントは英語で、国内のイベントは日本語で書くことです。言語は文化です。そのままの言い回しを使うことが大事だと思うのです。

■ノートやペンにこだわりなし

私は文具にはこだわりを持ちません。選ぶ基準は、あくまでも使い勝手。かつては大学ノートを愛用していましたが、現在は取引先からもらったA5判の「モレスキン」ブランドに似たハードカバーのノートを使っています。筆記具は当社の販促用ボールペン。軽くて文字が書きやすく、後尾の部分はモバイル機器のタッチペンになっています。

太田氏が愛用するハードカバーのノートと、自社の販促用ボールペン。ノートの中身は、海外で行われた会議の記録だ。英語の会議だったので英語で記入してある。

(2)について一例を挙げると、当社はダイバーシティ&インクルージョン(多様な属性の社員を組織運営に生かす)をテーマに掲げていますから、そのテーマに沿った情報があれば書き留めます。

ダイバーシティに関しては、以前からこんな考えを持っています。共働き世帯では家事時間が不平等になりがちです。総務省の調査では、共働き世帯の1日当たりの平均家事時間は、子供のいる女性が207分に対して男性はわずか十数分。多くの職場で夫に残業を強いる傾向があり、家事の分担格差を助長させているのではないでしょうか。

ですから私は、社員と食事をしながら意見交換するときはランチの場を活用し、夜の飲み会は特別な社内イベント以外は行いません。理由は、夜に付き合える人は男性に偏りがちだからです。ダイバーシティ上も問題ですし、女性に家事負担を強いる原因になりかねません。

最近では、家事に対する意識も変わってきました。保険商品でいえば、奥様が亡くなられた場合、育児や家事の負担を金銭面で保障するニーズも高くなっています。

そこで、そうした商品も発売して、ご不幸があった際に保障できるサービスを充実させました。ダイバーシティは性別だけの問題ではありませんが、消費者ニーズが多様化するなか、女性ならではの発想や視点を大切にして、人材活用につなげたいと思っています。実はその際、折々に役立っているのが、(3)のTO DOリストなのです。

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チューリッヒ生命日本代表 太田健自

1963年、東京都生まれ。米ジョージタウン大学卒、米スタンフォード大学MBA。85年ソニー入社。米系コンサルティング会社のシニア・パートナー(共同経営者)、米系生保の専務執行役員を経て、2012年よりチューリッヒ生命日本支店代表・CEO。
 

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(チューリッヒ生命日本代表 太田 健自 構成=高井尚之 撮影=永井 浩)

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