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平均年利8%超「ソーシャルレンディング」は危ないのか

プレジデントオンライン / 2017年4月29日 11時15分

「フィンテックにはさまざまな分野があるが、現状、クラウド型会計ソフトとともに市場を牽引しているのはソーシャルレンディングだ」――。3月8日、「ソーシャルレンディングサミット」を開いたクラウドポート(東京都渋谷区)の藤田雄一郎社長はこう話した。
ソーシャルレンディングとは、事業資金を借りたい企業と資産運用をしたい個人をネット上でマッチングさせるサービス。高い利回りで注目を集めるが、「どこか怪しい」という指摘もある。3月24日には、証券取引等監査委員会が、ソーシャルレンディング事業者であるみんなのクレジット(東京都渋谷区、白石伸生氏)を金融商品取引法に基づき行政処分するよう金融庁に勧告している。
事業者にとっては逆風となるが、藤田社長は「業界はまだ発展途上でありコンプライアンス態勢、業務管理態勢が十分でない会社が存在することも事実。また、ソーシャルレンディングはこれまでパフォーマンスが良すぎて、逆に怪しいという風評も生まれている。当社は中立的な立場から投資家に情報提供する日本初のソーシャルレンディング専門メディアとして業界の健全な発展に取り組んでいく」と語る。日本のソーシャルレンディングの現状と課題について藤田社長に聞いた。

■プレーヤーは25社以上に拡大する

――ソーシャルレンディングとはどのようなサービスですか。

お金を借りたい企業とお金を運用して増やしたい個人をマッチングするサービスです。一人の投資家が出資する金額が少額でも多くの投資家が集まれば数百万、数千万という金額になります。借り手が返済した利子からソーシャルレンディング事業者の手数料を差し引いた金額が投資家に分配されます。

――市場規模はどのように推移していますか。

2016年は前年比で1.7倍に拡大、参入事業者も1年で2倍の20社に増え、2017年には上場企業も含めて25社以上に拡大する見込みです。

ただ、米国と比較すると日本市場はまだまだ。日本市場は2016年、533億円(ファンド募集総額)ですが、米国では2016年には5兆円を超える勢いで伸びています。日本の場合、個人から資金を集めて企業に貸し出すことが多いのですが、米国の場合、個人から集めて個人に貸し出すことが多い。米国ではP2Pレンディングとも呼ばれています。米国で人気のあるSoFiは学生ローンの借り換えニーズに対応しています。

■平均利回りは8.15%、貸し倒れゼロ

――ソーシャルレンディングの成長が期待される理由は何ですか。

やはり高い利回りと、低い貸し倒れ発生率です。当社のWeb掲載企業18社の平均利回りは2017年2月時点で8.15%、過去3年間で貸し倒れ発生率は0%という結果が出ています。

もう一つは、日本では既存の金融機関が審査基準などで貸し出せない中小・零細企業の資金ニーズに応えている点があります。ある企業では、旺盛な資金需要に投資資金が追いつかず融資をお断りしている状況にあるそうです。

貸金業者そのものの数は数年前に比べて激減していますが、資金需要は変わらず、信金や信組といえどもその需要の全てをカバーできてはいません。

――ソーシャルレンディングの利回りが高い理由は何ですか。

低コストで運用できることですね。インターネットを活用することで人件費や地代家賃などの販売管理費を抑えることができます。また、既存の金融機関が融資しにくい短期や少額の資金需要に応えることで、財務的に健全でありながら資金調達に苦慮する中小企業に対して、既存の金融機関よりも高い貸出金利を確保しています。その結果、事業者の利益を差し引いても、5~12%と高い投資家利回りを還元することができるのです。

――一方で、ソーシャルレンディングは「何か怪しい」という人も多い。なぜですか。

業界が未成熟なことが挙げられます。多くの会社がこの数年でサービスを開始したベンチャー企業です。世間的な認知度も低く、実践している人の数もまだまだ少ないのが現状です。それに加えて利回りが良すぎることも大きな理由だと思います。実際は各事業者の努力によってパフォーマンスを出しているのですが、新規ユーザーにとっては「ちゃんとお金が返ってくるのか」という不安につながっていることも否めません。

■公平・中立の立場で業界を支援

――クラウドポートはソーシャルレンディング事業そのものをビジネスにしているわけではないのですね。
藤田雄一郎・クラウドポート社長

ソーシャルレンディングの比較サイトを展開しています。ソーシャルレンディングの事業者が20社まで増えてきて、各社がそれぞれいろいろなファンドを出しています。新たにソーシャルレンディングに投資したいと思っても、どの会社のどのファンドに投資してよいかわからないという問題が出てきました。われわれはそうした投資家に対して、中立的な立場から情報を提供していくソーシャルレンディング専門メディアを目指しています。

ソーシャルレンディング事業者が自社の商品をいいと言っても、客観性がない。私自身が過去にソーシャルレンディング事業側にいた経験もあり、その知識を基に、公平な立場で業界の発展に寄与していきたいと考えています。

――先日のソーシャルレンディングサミットでは実績を上げている個人投資家も登場して体験談を披露しましたが、実績を上げている人で特長的なことはありますか?

特徴的な点として、株やFXで過去に失敗した人が多いと感じます。ボラティリティの高い金融商品で損をされた人、向いてないなと感じた人が、より安定的に少ない手間で運用できる金融商品を探した結果、ソーシャルレンディングに行き着いたようです。経験者でも初心者でも、パフォーマンスの差がつきにくいのがソーシャルレンディングの魅力的な点です。われわれはソーシャルレンディングをフィンテックという新しい金融分野における個人の資産運用の新しい選択肢として支援していきたいと考えています。

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藤田雄一郎 クラウドポート社長
早稲田大学商学部卒業後、サイバーエージェントに入社。その後2007年にWeb構築、マーケティング支援を行う企業を創業し、2012年に上場企業に売却。2013年に日本クラウド証券の設立に参画。投資型クラウドファンディングサービスの「クラウドバンク」を立ち上げ、サービス開始から2年半で80億円の資金を集めるプラットフォームに成長させた。2016年にクラウドポートを創業。
 

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(クラウドポート社長 藤田 雄一郎、経済・産業ジャーナリスト 丸山 隆平 聞き手・構成=丸山隆平)

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