二階幹事長「解散総選挙は近いと考えるべき」
プレジデントオンライン / 2017年4月26日 15時15分
高い内閣支持率を維持し、「安倍一強」と言われる安倍政権を支える自民党幹事長の二階俊博氏。その存在感を増している二階幹事長に安倍政権が抱える問題を直撃した(後編)。
■憲法改正はそれほど急がなくてもいい
【塩田潮】安倍首相は昨年9月、「政治的手腕が一流」と言って二階さんを幹事長に起用しましたが、その腕前で小池さんを取り込む魂胆では、と見る人もいるようです。
【二階俊博(自民党幹事長)】こっちからそんなお節介なことはしませんよ。何でも円満にと言う人もいるけど、どっちかというと、私は喧嘩のほうが好きだ。政治って、みんなそうでしょう。
【塩田】安倍首相は憲法改正に意欲的で、本心では首相在任中の改憲実現を企図していると見られます。二階幹事長は憲法改正問題についてどうお考えですか。
【二階】これこそ広く国民の意向に従って進んでいかければならない。できるだけ多くのみなさんの意見を頂戴し、それに沿って進めていく。時間をかけて、円満にやるという揺るぎない信念で取り組んでいきたいと思っています。
【塩田】現憲法のままでいいのか、それとも変えたほうがいいと思っていますか。
【二階】現憲法は、生い立ちからいっても、ちょっとおかしい、と誰でも考えているわけでしょう。ここは変えたほうがいいと思っている点は当然、あります。議論し、改憲で行けるとなれば、その方向に行きます。ですが、無理してはいけないというときは、あえて無理して挑発する必要はないと思っています。
【塩田】安倍首相は3月5日の党大会で「自民党は改憲案の発議に向けて議論をリードしていく」と述べていますが、改憲問題で首相から幹事長への働きかけはありませんか。
【二階】そんなことはありません。
【塩田】改憲案は衆参の憲法審査会で各党が協議して取りまとめることになると思いますが、幹事長として国会の議論をリードしようというというお考えは。
【二階】まだそこに至っていませんよ。これから議論を重ねていって、落ち着くところに落ち着かせるということです。今、どうこうしなければということではない。もう少し時間をかけてじっくりやったらいいと思います。それほど急がなくていい。先にやるべき重要な課題はいっぱいありますから。自民党内の空気をいちいち調べたことはありませんが、党内の意見が一致すればその方向で行くべきですが、そうでなかったら、慌てて取り組まなければならないということはありません。
【塩田】幹事長就任後、沖縄県の翁長雄志知事と会談したという報道がありました。
【二階】私が卒業した中央大学の関係で翁長さんの兄さんと近かったので、翁長さんが知事になる前から知っていました。十数年前に「弟がいずれ政治に参加したいという希望を持っているので、その節はよろしく」と言われました。その頃から弟さんとも、ずっと付き合ってきました。なかなか立派な人だと思います。
■衆院解散は黙って見守るしかない
【塩田】現在、翁長知事は沖縄県宜野湾市の米軍普天間飛行場の名護市辺野古への移設に反対を唱え、安倍政権と厳しく対立しています。
【二階】それは政治家としての信念でいろいろとご主張されるのは当然のことで、文句をつけるつもりはまったくありません。沖縄の発展と将来を考えて共に力を尽くし合うことができれば幸いなことだと思っています。辺野古問題も、翁長さんと会ったときは挨拶代わりに話し合っていますので、私が何を考えているかくらいのことは百も承知です。この問題は、円満な話し合いができて、それが沖縄と日本のためになるという同一の考えとか、一緒に手を結んで建設的な意見を見出していく。それが政治の妙じゃないですか。これからそれをみんなで考えなければなりませんね。
【塩田】政府の沖縄の基地負担問題担当は菅義偉官房長官です。官房長官の取り組みは。
【二階】懸命に頑張っているじゃないですか。結構なことで、大いに期待しています。今は専門の担当者が取り組んでいます。委託を受けた場合はやりますけど、われわれが余計なことを言う必要はありません。日米関係はもちろん極めて重要ですが、アメリカも戦略的に全方位で見ていますので、沖縄の基地問題が思うように進まないからといって、文句をつけてきたりはしないでしょう。その間に日本が解決に努力する必要は当然あります。
【塩田】前回の総選挙から2年4カ月が過ぎました。次の衆議院解散の見通しは。
【二階】衆議院議員の任期満了まで残り2年を切りましたから、政治に携わる者、選挙の場に身を置く者として、選挙は近いかもしれないという気持ちを持って対応し、対策に努力するのは当たり前のことです。だけど、今すぐ解散があるわけでもありません。首相が決めることで、「解散はない」と言ったら、「ある」という雰囲気が出てくる。「ある」と言えば、「そんなものないよ」となるわけです。黙って見守る以外に方法はありません。
「解散はいつ」と聞いたって、首相も答えようがない。エイヤッと決めなければいけないときもあります。解散は首相の専権事項といわれていますが、それだけにご自身が背負う責任は重いと思う。こうだ、どうだと端から言う話ではない。首相が国家のために解散はこの時期とお考えになれば、その方針、哲学によって決する。解散はいつがいいとか、人気が高いときにやったらいいと言う人がいるけど、そんなものではないと思います。
【塩田】定数是正で衆議院の小選挙区が「0増6減」となり、それに伴う新しい選挙区割りの勧告案が5月頃に出るといわれています。それが解散・総選挙に影響するのでは。
【二階】まったく影響ないとは言えないけど、それだけに左右されることはないと思います。やろうと思えばやれる。安倍首相としていつでもやれるという条件を整えておく。
【塩田】昨夏、前の総選挙から1年8カ月余が過ぎて幹事長となりましたから、当然、在任中に次の解散・総選挙があると受け止めたと思いますが。
【二階】それは運命ですから、その中でつねにベストを尽くす。それだけです。
■勝てば本人の勝利、負ければ本人の責任
【塩田】次の総選挙で勝利を遂げるには何が一番、重要なポイントですか。
【二階】各候補の日頃の訓練と心構えですよ。本人がその気になって対応すれば、周りも呼応して協力してくれる。しっかりとした対応を取っていくことが大事です。自分がその気を出して動かなければ、誰もやってくれる人はいません。
【塩田】2012年の総選挙以後、自民党政権が4年余に及ぶ中で、昨年の参院選までの衆参各2回の選挙で初当選して、国会議員として野党経験がない自民党の議員が、現在衆参合わせて全体の3分の1に達しています。与党の経験しかなく、「権力病」に冒され、増長・慢心・弛緩が目立ち、一部で「自民党の劣化」を指摘する声もあります。
【二階】それ以前の人たちと比べて、どこかが劣るとか、感じたことはありません。ですが、つねに全力投球して、選挙は自己責任です。自民党の中で貴い一議席を任されていることに対する責任感を持って対応していく。勝てば本人の勝利だけど、負ければ本人の責任です。選挙によって国の政策も変わるのだから、負けた責任は、まずかったねということでは済まない。その意味でしっかり頑張ってもらいたい。
【塩田】大学卒業後、衆議院議員秘書、和歌山県議、衆議院議員という道を歩んでいますが、なぜ政治の世界に。
【二階】父が県議や村長を兼務していて、そういう中で生活してきましたから、政治に対する関心は人一倍強かったかもしれません。若い頃から、世の中、みんながもっと幸せな生活を送れるようになる方法があるのでは、という思いがありましたね。
【塩田】自分でどんなタイプの政治家で、何が一番の持ち味だと思っていますか。
【二階】いったんこれをやろうと決めたら、簡単に後へは退かない。
【塩田】舞台裏での地ならしや駆け引き、寝業も立ち技も屈指の腕と評を耳にします。
【二階】それは上っ面を見ているだけでしょう。
【塩田】長い政治生活の中で一番辛かったこと、嬉しかったことは。
【二階】政治の中でいろいろな経験をしたけど、辛いとは思っていません。一番嬉しかったのは、衆議院総選挙で初当選したときで、今も思い起こすのはそのときの気持ちです。自分の原点ですから、そのことをしっかりと憶えて、忘れないようにする。
【塩田】首相の座を目指そうと思ったことはありましたか。
【二階】まったく思ったことがない。それだけでなく、何になりたいとか、どんなポストに就きたいとか、人に頼んだりしたことは一回もないよ。
【塩田】気をつけていることは。
【二階】もうそろそろ、と言われることのないように。それははっきり心得ています。だけど、そう言われるまで政治家を続けるわけないよ。それほどいい商売じゃありません。
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自民党幹事長
1939(昭和14)年2月、和歌山県御坊市生まれ(現在78歳)。父親は和歌山県議、母は女性医師。和歌山県立日高高から中央大学法学部政治学科に進み、卒業後、衆議院議員・遠藤三郎(元建設相・旧静岡2区選出)の秘書となる。75年に和歌山県議に(連続2期当選)。83年12月の総選挙で旧和歌山2区から自民党公認で出馬して初当選(以後、連続11回当選)。自民党では田中派、竹下派、羽田派に所属した。93年に離党し、新生党を経て94年に新進党に。97年の新進党解党に伴い、自由党の結党に参加した。2000年に自由党分裂で保守党に。保守党とその後継の保守新党で幹事長を務めた。03年暮れの自民党による保守新党吸収で約10年ぶりに自民党に復帰する。小渕恵三、森喜朗の両内閣で運輸相兼北海道開発庁長官、小泉純一郎、福田康夫、麻生太郎の3内閣で経済産業相。復党後の自民党では国対委員長を経て07年に総務会長に。14年9月に再び総務会長となり、16年8月に自民党史上最年長で幹事長に就任。12年12月から二階派を率いる(党内第5位の勢力)。健康法は「目いっぱい働くこと。煙草は生まれてから一度も吸ったことがない」と語る。
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(作家・評論家 塩田 潮 尾崎三朗=撮影)
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