SCSK「残業月18時間」に改善できた理由
プレジデントオンライン / 2017年6月15日 9時15分
■長時間労働と取れない有休、どう解消すればいい?
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両立支援制度はたくさんあるのになぜ
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●じつは「長時間労働の常態化」が原因だった!
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IT企業には「男性が多い」「夜中まで働くブラック企業」というイメージがあるが、企業向けITサービスのSCSKは、働きやすい会社として数々の賞を受賞している異色の企業である。しかし、以前はほかの同業他社と同様の課題を抱えていた。同社を変えたのは、2013年から行っている、「スマートワーク・チャレンジ」という取り組みだ。きっかけは中井戸信英社長(現在は相談役)が「社員が疲弊していては、本来のクリエイティブな仕事ができない」と感じたことだったという。中井戸氏は長時間労働が常態化していることに着目。誰もが働きやすさを感じられる職場を目指したというわけである。
目標は「1カ月の平均残業時間を20時間未満におさめ、なおかつ年20日の有休を100%取得すること」。
「これまでも会社が残業の削減に取り組んだことはあります。でもいつも掛け声だけで終わっていました」と言うのは、入社12年目の藤岡有佐子さん(製造基盤インテグレーション部・第3課長)だ。ところがスマートワーク・チャレンジに取り組むなかで、会社の雰囲気が激変していった。定時を過ぎるとみんな先を争って帰るようになった。
「実は私の夫も同業者ですが、他社に勤めているので、『いったいどうやって残業を減らしたの?』とよく聞かれます(笑)」(藤岡さん)
SCSKが働き方改革に成功した第一の理由は、トップの本気を全社員に見えるカタチにしたからだ。毎週の役員会議では、部門ごとに役員が残業時間・有休取得の進捗状況を報告。中井戸氏からの叱咤激励は、会社のサイトで公開された。
さらに、「残業をすればするほど残業代が増える」という従来のしくみから、「残業を減らしても給料は減らない」と発想を転換。ゴールド、シルバー、ブロンズというように目標の達成度合いに応じてインセンティブとして全額社員に還元した。「残業代を減らすことが目的ではなく、社員の健康増進や業務の効率化が目的なのだから、残業代が減って浮いたお金は社員に還元しよう」というわけである。
人事グループ人事企画部ダイバーシティ推進課の酒井裕美さんは、「労働時間が短くなると、こなせる仕事の量も減り、利益が落ちることを心配する役員もいたようですが、会社トップが『一時的に下がってもいい』と言い切った。それで社員に『社長は本気だ』と伝わりました」と話す。
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目標:スマートワーク・チャレンジ20
●「有休取得日数20日」(当年度付与年休100%取得)
●「平均残業時間20時間未満」
「より効率的(スマート)に働き(ワーク)、目標(有給休暇20日取得、平均月間残業20時間未満)に挑戦する(チャレンジ)」が名前の由来。残業手当の減少が気になるが、それは目標達成時にインセンティブとして社員に還元した。
![](https://president.jp/mwimgs/0/4/450/img_04aef9adb83086c1c4ae3c00184fb73e47556.jpg)
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■残業削減のアイデアは各部署で発案!
とはいえ、部署によって仕事の中身は千差万別。具体的な残業削減の方法は各自で考えてもらうしかない。そこで会社は、残業削減のアイデアを募るコンテストを実施。さまざまなアイデアが寄せられ、各部署で自分の部署に合った残業削減施策を実行した。
立ったまま会議をする。「私は今日は早帰りの日です」という札を席に立てる。会議の資料をつくらずにすむよう、会議室にノートPCを持ち込み、プロジェクターでデータを投影する……などのアイデアを実行した結果、2年後には有休取得率は97.8%、1カ月の平均残業時間も18時間になった。しかも不思議なことに、会社の業績は落ちるどころかむしろ上がったという。
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![](https://president.jp/mwimgs/b/9/500/img_b92820f533a45108f078ea2ab044e72359080.jpg)
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なぜこのようなことが結果に現れたのか。「結局、生産性が上がったのでしょう」と藤岡さんは分析する。
藤岡さんは現在5人の部下を持つ管理職だが、もともと女性の少ない業界であるうえに、SCSKの女性社員の約7割が30代前半までに離職・転職していたため、女性管理職はほとんどいなかった。その理由のひとつに長時間労働があったことは間違いない。藤岡さん自身、この会社に入るにあたり、ある程度の残業は覚悟していたという。
「私は、残業はしないほうがいいと思いますが、若いときはいろいろな経験を積んだほうがいいし、スキルアップのためにも仕事に打ち込む時期は必要だと思います」(藤岡さん)
とはいえ、現在は業界も長時間労働から脱しつつある過渡期。どうしても忙しくて残業せざるをえないとき、藤岡さんは若い世代に、こんなふうに伝えるという。
「やらなきゃいけないときはやる、早く帰れるときは帰る。メリハリをつけて、仕事を効率的に進めよう」
(ライター&エディター 長山 清子 撮影=広川智基)
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