一瞬で人を引きつける小池知事の"言葉力"
プレジデントオンライン / 2017年6月20日 15時15分
■ポジティブさが人々に勇気やヒントを与えている
あの暑い、熱い東京都知事選から、まもなく1年になろうとしています。政党や団体の支援を受けず、たった一人で挑んだ戦いで圧勝した小池百合子・東京都知事。その言動はワイドショーの「定番メニュー」となり、いまや都民だけでなく日本のいたるところから都政に注目が集まるようになりました。情報公開による都政の「見える化」を図り、山積する課題に対して、国民が見える形で次々と切り込む「東京大改革」への期待は、7割近い高支持率にもあらわれています。
知事就任後、東京・新宿の東京都庁には、国内外から多くの方々が訪ねて来ます。そして小池知事と会い、話をされた方の多くがファンになって帰られる。「実際に話してみたら、応援したくなりました」といった話だけでなく、「自分もやる気が出てきた」「何かに挑戦したくなった」「あきらめていた夢を思い出した」などの声を残されることも増えています。
私は人々を魅了する「知事の言葉」に強い興味を持ちました。なぜ知事の言葉は人の心を動かすのか。既成概念にとらわれず、ネガティブキャンペーンにひるまず、新たな一歩を踏み出すことをためらわない。このポジティブさが人々に勇気やヒントを与えているのだと思います。就任から今日まで、印象に残った知事の言葉をいくつか挙げてみます。
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自分から求め、
チャレンジしていくしかない。
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面会や取材などで、知事がよくされる質問「キャリアのステップアップを実現してきた秘訣は?」に対する答えです。人生の転換点を「待つ」のではなく、自ら好機を迎えるべく「仕向ける」のだそうです。ただ、景気と同じで、人生にも山と谷がある。「谷」のときは自己研鑽の時間に充て、チャンスが来たら一気に踏み出す――。これが小池流。多くの人は新しい世界に飛び込むことに慎重になってしまいがちですが、知事と話した人は「ポジティブな言葉」に背中を押されるようです。
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やってみてほしい。
必ず、一歩前に出てほしい。
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知事は都職員に、こう説いています。「失敗を恐れず、行動に移すように」と。この言葉はもともと親の教えだったと言います。その教えとは、「一歩跳ぶことでひっくり返るかもしれないけれど、何もしないよりは転びなさい。痛くても必ずプラスになる」というもの。知事は、この教えを守り続けているのです。
■「政治家の仕事は、命がけでやるもの」が口グセ
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投げ込まれるかもしれない、
そのくらいの覚悟でやっている。
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「政治家の仕事は、命がけでやるもの」というのが知事の口グセです。日々、多くの難問と向き合っていますが、知事がほんの少しでも手を抜く姿を見たことがありません。分刻みのスケジュールをこなし、自宅に戻ってからも、朝まで机に向かうこともあるようです。「もうこれでよいと歩みを止めてしまうと、足をすくわれることがある。何事も最後まで、しっかりやり抜くことが大事」と言います。圧倒的な仕事の質量、それに向かう真剣さが、周りの人の心を打つのでしょう。
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でも、波紋を呼ぶくらいでなければ
改革とは言えないでしょう。
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2016年9月1日、東京都の事業や予算、組織などを総合的に見直すための「都政改革本部」を設置したときの言葉です。改革は得てして既得権との摩擦を生むもの。知事はまったく恐れる様子はなく、「こちらも『崖から飛び降りる覚悟』でやっているんです。揺るぎなく進めていきたいし、これまで見たことのない都政が繰り広げられると確信しています」と述べました。どれだけ逆風が吹いても動じず、躊躇なく改革を断行する姿を目の当たりにして、心が動かない人はいないはずです。
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できない理由を探すよりも、
どうやったらできるかを探すことに
喜びを感じていますので。
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多忙を極める知事がよく聞かれる質問、「ストレス解消法を教えてください」に対する答えです。「逆境に身をおいても『じゃあ、どうする』と考えることは楽しいし、それを切り開いていくのも楽しい。乗り越えられたら、もっと輝ける。すべては考え方一つ」と言います。また、健康維持の秘訣は、ポジティブであり続けること、くよくよしないでさっさと寝ることの2つ。普通の人が「ストレスがない」と言っても「そんなわけがない」と思ってしまうのですが、知事に言われると「そうかもしれない」と思ってしまうのです。
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ためるといっても、
お金はたまりませんけれども、
政策であるとか、考えをためてきたのです。
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2016年12月22日の記者会見で「今年をどう振り返るか」と聞かれ、「10年に一度の大爆発の年。特に後半がそうだった」と答え、この10年を振り返ったときの言葉です。人生は思うようにいかないときのほうが多いかもしれません。不遇と感じるときこそ、時間をかけてしっかり勉強。そしてチャンスが訪れたら、一気に発露させる。これが小池流の考え方です。「失敗も含めて、人生に意味のないものなどない」という知事の言葉に、多くの職員や関係者が救われています。
■小手先の対策より、抜本的な対策を選ぶ
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ドンドン出していこうという気持ちです。
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2016年9月、東京都が議会でしてきた説明と違い、豊洲市場の主な建物の下に土壌汚染対策の「盛り土」がされていなかった問題を受けて、緊急会見を開いたときの言葉です。2020年東京五輪・パラリンピックの会場見直しについても、その姿勢は同じでした。膨張する五輪会場整備費の削減プランを次々に発表したのです。後から大きな問題になりそうな点は、最初に議論するのが小池流。都の幹部にも「悪い情報から共有しましょう」と語る知事。こうしたリーダーのスタンスは、ともに仕事をする人の意識を大きく変えてくれます。
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あなたは、まじめな方ね!
あら、素敵じゃない!
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都職員が知事室で報告する際、こう語りかけ、場の雰囲気を和ませます。「職員の緊張をほぐし、本来の力を出せるように」との思いからです。褒められて、嫌な人はいません。説明を終えた職員にチョコレートやマカロンなどのお菓子をすすめることもあります。現場との距離を少しでも縮めようとする知事の姿勢に、「都庁が明るくなった」という職員の声も聞こえてきます。
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上野のパンダもしております。
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2017年6月12日、東京都内で行われた婚活シンポジウムの講演会もそうでした。会場に入る前、上野動物園のジャイアントパンダの雌「シンシン」が赤ちゃんを出産したという嬉しいニュースが入ってきました。移動中に「グッドニュースね」と大喜びした知事は早速、この言葉で会場をわかせました。「さきほど、シンシンがめでたく赤ちゃんを産みました」と続け、名前を募集すると発表。さらに、改めて「子育てがしやすい東京」の実現に向け、強い決意を表明しました。そのときどきのキャッチーなニュースを取り入れ、最初の一言で関心を引き寄せてしまうのです。
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タフな印象を持たれる知事は、面会した方々から「精神力の源」を聞かれることがよくあります。これが、その答えです。「崖から飛び降りる覚悟」で挑んだ東京都知事選。当選からの約1年間はメディアが注目する中、走りっぱなしでした。「私には失うものがない。しがらみや怖いものがないから、既得権にも切り込めるのよ」と語る知事は、今日も走り続けています。
いくつか紹介してきた知事の言葉には、自らの経験に裏打ちされた、説得力がいつも宿っています。そして、どこまでもポジティブ。行動は、恐れることを知らず大胆。常に前へ進みます。その一方で「子供たちの将来のために」という目的を見失いません。世界に例を見ない「人口減少社会」に突入したこの国の首都で、必要とされているのは、どんなリーダーでしょうか。私は「小池百合子」が1つの答えではないかと思っています。「今」だけでなく「未来」への責任を持つ、「親心」のようなものを知事に感じるからです。
将来のためなら、今、ぶつかり合うことはいとわない。小手先の対策より、抜本的な対策を選ぶ。親が子供の将来を一番に考えるように。それこそが、「都民ファースト」という考え方です。今後ますます、テレビや新聞で知事を見かけることも多くなると思いますが、ぜひその言葉に注目してみてください。何かに悩んでいる人にとって、一歩前へ出るヒントが隠されているはずです。
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1976年、千葉県生まれ。成蹊高校、早稲田大学商学部卒。大学入学後に柔道に出合い、柔道部で2段取得。在学中に南カリフォルニア大学(USC)交換留学。全国紙記者を務め、2016年8月から現職。待機児童対策や女性の活躍推進、働き方改革などを担当し、政策立案への助言などを行う。近著に『小池百合子「人を動かす100の言葉」』(プレジデント社)がある。
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(東京都知事政務担当特別秘書 宮地 美陽子 撮影=原貴彦)
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