「残業削減」にあまり意味がないワケ
プレジデントオンライン / 2017年6月26日 9時15分
経営者が、社員の組織への忠誠心を高めるため、会社への満足度を高めようとした場合、何をするのがもっとも効果的だろうか。
▼データ出所・算出方法
クチコミ評価、月平均残業時間、有休消化率は、就職・転職のための企業リサーチサイトVorkersの2017年4月時点のデータを使用。上場企業のうち、データが利用可能な1763社についてデータを分析した。
まず考えられるのが、「給与を上げること」だ。方法(1)のグラフは社員の満足度(クチコミ・縦軸)と給与(横軸)の関係を表したデータ。給与と満足度には強い相関関係があることがわかる。平均すると、平均年収が102万円アップするごとに、社員の満足度は0.1点(5点満点中)上昇する。
この結果は当然ではあるが、言うまでもなく、全社員の年収をアップさせようとすれば、追加で膨大な人件費を支払う必要が生じる。経営者としてはなかなか難しい選択肢だ。
では次に「残業時間を削減すること」の効果について考えてみよう。過労死事件などによって、過度の残業により健康を損ねる問題が指摘されており、ワークライフバランス向上を掲げて残業の削減に積極的に取り組んでいる会社も多い。残業時間の削減は、社員の満足度向上に効果があるように思える。
しかしデータは、残業時間の削減は、社員の満足度向上にあまり効果がないことを示している。方法(2)のグラフは社員の満足度(縦軸)と残業時間(横軸・右にいくほど残業少)の関係を示したものだ。両者にはわずかながら相関関係がみられるものの、社員の満足度を0.1点上げるには、平均して月の残業時間を126時間も減らさなければならない。これは、ほとんど実現が不可能だ。
ちなみに、プレジデント誌(2017年6月12日号)で、分析対象とした1763社の月平均残業時間は、43時間だったが、仮に残業時間が平均的な会社が、全社を挙げて「残業ゼロ」に取り組んで、それを仮に達成できたとしても、社員の満足度は5点満点でわずか0.03点程度しか上がらないということになる。
このように、残業の削減が社員の満足度向上にほとんどつながらない理由としては、残業に対しては残業代が支払われることも考えられるだろう。実際に、プレジデント 2017年6月12日号に掲載されている「『クチコミ評価』も『給与』も高い会社ベスト20」で、残業時間が多いにもかかわらず、社員の満足度が高い会社は多く存在する。
残業の削減は、人件費の減少につながるため、会社としては取り組みやすいが、実は社員の満足度向上にはあまりつながらないことに気をつける必要がある。もちろん社員の健康上の観点から、月に80時間を超えるような残業が発生しないよう注意する必要があることは言うまでもない。
![](https://president.jp/mwimgs/0/6/300/img_0609535a7b1c8aab7bd935f1add0b63448726.jpg)
では最後に、「有給休暇の取得率を上げる」ことの効果についてみてみよう。方法(3)のグラフは社員のクチコミ評価(縦軸)と有給休暇消化率(横軸)の関係を示したものだが、方法(2)に比べれば、強い相関があることがわかる。平均すると、社員の満足度を0.1点上げるには、社員の有給休暇消化率を25%上げればよいことがわかった(全社の有給休暇消化率平均は38%)。これは、年間の有給休暇日数を20日とすれば、年間で5日の有給休暇に相当する。
日本企業の有休消化率は、先進国各国と比べて低いことが指摘されており、経団連も2016年、観光消費の喚起を目的に、年間の有給休暇消化日数をあと「3日」増やすように提言したところだ。そしてデータからわかるのは、有給休暇の消化促進は、コストをなるべくかけずに社員の満足度を高めるためにも、有効である可能性があるということだ。
(プレジデント編集部 本西 勝則)
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