進む「安倍離れ」"玉砕解散案"浮上
プレジデントオンライン / 2017年7月29日 11時15分
長期政権の道を着々と歩んできた安倍晋三首相が窮地に立たされている。首相の親友が理事長を務める学校法人「加計学園」の獣医学部新設をめぐる問題は、首相サイドの明確な説明が果たされないことで国民の「安倍離れ」が加速。内閣支持率は「危険水域」とされる2割台まで急落した。7月2日の東京都議選で歴史的大惨敗を喫した自民党は「総括」もできないままで、政党支持率も下落傾向にある。政府・自民党は8月3日にも断行する内閣改造を反転攻勢のきっかけにしたい考えだが、その先行きは決して明るくない。「国民の信頼回復に向けて努力を積み重ねていきたい」。安倍首相は7月18日の党役員連絡会で、自ら国会で説明する意向を示したが、自民党幹部の表情は硬い。その理由は、加計問題で政府の説明に納得しないとの世論が大半を占めている点にある。内閣支持率は時事通信で29.9%(15.2ポイント減)、テレビ朝日で29.2%(8.7ポイント減)と2割台に突入し、2012年末の第2次安倍政権発足以降で最低を記録。不支持率は一気に5割程度になっている。
自民党幹部の一人は「加計問題が国会で追及され始めたとき、首相官邸サイドはすぐに批判はおさまるだろうと見た。だが、それがそもそも甘かった。タイミングも最悪だった」と語る。加計問題で追及する野党は憲法に基づく臨時国会の開催を要求しているが、政府・自民党は拒否。菅義偉官房長官や竹下亘国対委員長が記者団の問いかけに「強面、ぶっきらぼうで応じた」(自民党中堅議員)ことも世論の反発を浴びた。その最中に投開票を迎えた東京都議選では、小池百合子都知事が率いた地域政党「都民ファーストの会」の圧勝を許し、自民党は史上最低の23議席。閣僚や党幹部が連日応援に入る総力戦で臨んだ結果だったが、いまだに「総括」らしいものは聞こえないままだ。
来年9月の自民党総裁選で3選を果たし、21年までの任期中に憲法改正を果たす。これが安倍首相の描いていたスケジュールであったのは間違いないが、その実現可能性は急落している。石破茂元幹事長は首相との距離を置き、「ポスト安倍」を狙う岸田文雄外相もアクセルを踏み始めているのだ。安倍首相は突如として「20年の憲法改正」を目指すと表明し、今年9月にも自民党案をとりまとめる考えを示したが、求心力を失った首相にそれだけの体力が残されているかは疑問視されている。
そこで首相周辺が練っているとされる「ウルトラC」が解散権の行使だ。内閣支持率が下落し、政界では現在の衆院議員が任期満了を迎える来年末のギリギリまで衆院解散・総選挙は行われないとの見方が強い。しかし、あと1年以上も衆院選がないとすれば、自民党内から「安倍降ろし」が起きる可能性がある。首相周辺には選挙での公認権をちらつかせることにより、当初のスケジュール通り「総裁3選―憲法改正」へ導くことができるとの声も漏れる。現行の小選挙区制度は公認権を持つ執行部が絶大な力を持っており、「安倍総裁の方針である憲法改正に賛成しなければ公認しない」と強権を発動するポーズを見せるというわけだ。
ただ、その可能性があると見た自民党ベテラン議員は「そんなことをやったら安倍個人のための自民党になってしまう。支持している国民が2割ちょっとしかいない首相が、自分の思い通りにいかないからと衆院を解散するなんて、『玉砕解散』じゃないか」と猛反発する。都議選で圧勝し、勢いに乗る小池都知事の勢力は国政に進出する準備を着々としており、仮に支持率が低空飛行を続ける中での「玉砕解散」があれば、自民党は国政でも大ダメージを受けるのは必至とみられている。このまま安倍首相に党の再建を託すか、それとも党のために降りてもらうか。09年に政権交代を許した麻生太郎首相時代の「追い込まれ解散」が脳裏をよぎるとの声は少なくない。与党内の駆け引きを横目に、ある民進党議員は「もう安倍首相は、国民がどうしてほしいかわからなくなっているのではないか。うちの蓮舫代表も同じかもしれないけど」と自嘲気味に漏らした。
(写真=時事通信フォト)
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