スーパードライが海外でも売れている理由

プレジデントオンライン / 2017年9月14日 9時15分

アサヒグループHD国際部門シニアマネジャーの西崎聡一さん

■クールな“辛口”その出番は必ず来る

デカデカと「辛口」と漢字で入ったジョッキ。日本発のビールの表れか?

「そうではない。日本のクールさやカッコよさを打ち出したかった。オーストラリアで暮らす人の生活の中に「アサヒスーパードライ』の出番は必ずあるはずです」

アサヒグループHD国際部門の西崎聡一さんは力強く、落ち着いた口調で説明する。

欧州でのM&Aに約1兆2000億円を投じ、本格的に世界に打って出るアサヒグループHD。オーストラリアではすでに92年から「スーパードライ」を販売してきた。グローバル展開の成功の秘訣や課題はどこにあるのか。

今オーストラリアで展開するビールは主力が「スーパードライ」で、次ぐブランドとして「アサヒ爽快」とクラフトビールがある。「スーパードライ」は日本で生産し、オーストラリアに輸出。

「爽快」は現地生産、現地販売。3.5%とアルコール度数が低く、ケアンズなどの都市がある北東部の暑い地域向けのライトビールだ。クラフトビールは買収したブルワリーで生産する。

すっきりした味わいの「爽快」や、じっくりと味わうタイプのクラフトビールは気候や土地柄、時代のニーズからの必要性がある。だがやはり営業のメーンとなるのは、日本と同じくキレがある辛口の「スーパードライ」である。

オーストラリアにはアルコールと清涼飲料を併せて営業する100人単位の部隊がある。大半が現地の人で、日本人はセールスマーケティング担当が1人だけ駐在。営業活動全体をディレクションしているのが、西崎さんだ。

西崎さんは大阪での営業を振り出しに、マーケティング、経営企画、海外のM&Aを扱う部署などを経て、マレーシアに駐在した後、2016年4月から今の部署に異動した。

「ふだんは日本にいて、2~3カ月に1~2回、1週間くらい現地に出張し、打ち合わせをしています」

■豪州では2012年から自社で直接販売

「スーパードライ」はオーストラリアで最初、現地のビールメーカー、フォスターズ(現CUB)に代理販売してもらっていたのを、12年から自社で直接販売するようになった。

「それ以降、アサヒブランドの売上数量は2桁増で推移し、2016年は約3割増、2017年も2桁増を目指しています」

オセアニア市場は2016年まで同社の国際事業売り上げ額の約6割を占める重要な市場だ。2017年からは欧州市場が加わるので、その比率はおのずと落ちるだろうが、マーケットとしては将来的にも魅力があると西崎さんは言う。

「人口にすれば2400万人程度と日本よりかなり少ないのですが、消費が旺盛な国です。アジアからの移住者も増えているので、さらにビールが伸びる市場だと思います」

現地での「スーパードライ」はインターナショナルプレミアムの位置づけで、高価格帯分野では約1割ほどのシェアがあるという。競合はCUBの「コロナ」やライオンネイサンの「ハイネケン」などの輸入プレミアムだ。

「ライオンネイサンやCUBが主力で販売している通常価格帯の市場はもちろん商いの量は大きいですが、一方で価格競争が激しい。我々はそういうメーンストリームには入っていかず、付加価値を高め、お金を払っていただけるような販促をしています」

「スーパードライ」は家庭用と業務用に分けて営業を展開してきた。

家庭向けは日本のような缶ビールが一般的ではなく、330ミリリットルのビンが主流。ビールを入れる箱の表面は光沢のある黒色で、パッケージから高級感を醸し出している。

現地では、なかなか困難な課題も存在する。例えば物流業者や流通業者の寡占化が著しいため、コスト削減の要求が通りにくいという点だ。

「オーストラリアでは、流通や物流だけでなく資材のサプライヤー(供給者)もほぼ2社で全市場の8割程度を占めています。価格交渉の余地がなく、嫌ならほかの所に行けと言われてしまうのです。1社と取引しないと市場の3割くらいを失ってしまうのでシビア」

■先駆者の葛藤、正解はこの手の中に

一方、業務用はカウンターに何種類もの生ビールが並ぶビアバーを中心に開拓。オーストラリアでは日本のように食事中にビールを飲むという習慣はあまりないので、ビアバーが主戦場となる。

「日本人やアジアの人だけでなく、ローカルの人が飲むシーンを思い描きながら営業してきました」

一層の市場拡大を目指すインターナショナルプレミアムとしての「スーパードライ」。課題として浮かび上がるのが現地生産だ。現状、日本で生産し、オーストラリアまで運んでいる。当然、それだけの時間がかかる。しかも赤道を超えるときにビールの温度が上がり、品質に影響を及ぼす。厳密にいえば、日本で味わえる「スーパードライ」ほどのフレッシュさは得られないのだ。

現地生産すれば悩みが解消されそうだが……。

「地元の人が、日本から来ている高品質ビールであると認識して飲んでくれている場合、現地生産すると『なぜ?』という反応があるかもしれません。現地生産したほうがより鮮度がよくておいしいビールになると受け入れてもらえるとは思うのですが、万が一という気持ちもあります」

オーストラリアの「スーパードライ」事業は次の一手が重要だ。

▼アサヒグループHD 小路明善社長
ビールビジネス「新時代に突入、一気呵成に攻める!」

なぜ今、海外投資したか。2つの理由がある。一つはビールビジネスのマーケットがすでにグローバル化していること。「強い競争力を持ったグローバルなプレミアムビールメーカー」が、私たちの海外事業のあるべき姿です。

もう一つが、当社の醸造技術が世界に打って出るだけの水準に達したからです。「スーパードライ」は14年、15年と2年連続で世界的なビールコンテストの金賞を獲得し、味と品質が世界に通用すると確信を持ちました。

ただし海外市場での強い競争力の発揮が必要。そのための条件が「トップブランドを持つこと」「高い生産効率と醸造技術」「事業の高収益性」「事業会社のトップの経営能力」の4つです。

当社は「スーパードライ」という国内トップブランドを持ち、高い収益性とコストダウンを実現しています。母国の市場で鍛えられた優位性は、海外市場でも生きてきます。また今回買収した欧州事業でも大変優秀な経営能力を持つ人材を確保することができました。

16年のグローバルなプレミアムビール市場では金額ベースでスーパープレミアム市場が16%、プレミアム市場が21%を占め、それぞれ年平均6.3%、2.6%伸びています。この成長市場で当社が持つ「スーパードライ」、そしてチェコの「ピルスナーウルケル」、イタリアの「ペローニ・ナストロ・アズーロ」をグローバルプレミアムブランドと位置づけ、積極的に展開し、母国以外の市場で、5年ほどかけ1.5倍のボリュームにしたいと考えています。

(Top Communication 撮影=関口達朗)

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