偉い人の目線で、要点を「A4一枚」に
プレジデントオンライン / 2017年10月23日 9時15分
■10秒で覚えられる書類は見てもらえる
上司に企画書や報告書、資料などを見せるやいなや、「何が言いたいのかわからないよ」「ちょっと違うな」などと指摘され突き返される部下。あちらこちらの会社でよく見られる光景です。多くの場合、「量が多すぎる」「字が小さすぎる」「ダラダラ書いてある」ことがその要因。中身以前の問題で相手にしてもらえないわけです。
そこで上司やキーマンに取り入ろうと思ったらどうすればいいか。「A4一枚にまとめる」「フォーマット化する」――これが答えです。ノートは、その構成を検討するために利用するといいでしょう。「読み手としての上司の立場」を意識することがカギです。
では、なぜA4一枚がいいかといえば、ひと目でパッと内容を把握できるということに尽きます。人間は10秒の間に覚えられることしか脳で処理できないと心得ましょう。A4サイズなら上から下まで目を通せば一回で理解できます。読むのを後回しにされないためにも、このことはとても重要です。
A3サイズも人気がありますが、情報量が多すぎます。ひと目で全体構成を把握することが難しい。つまり、口頭で説明をしてはじめてわかってもらえる書類となってしまうのです。またA3だと物理的に場所をとるので会議のときに邪魔になったり、折り畳んで持ちあるかなければならない煩わしさがあるなど、実用上の問題もあります。
なお、A4一枚のメイン書類に、付録資料を付けるのは問題ありません。ただし、これもポイントが明確にわかること、意味のあるものだけ添付することを意識します。
次にフォーマット化。これは、そのフォーマットを見慣れた人なら、どこを見ればいいのかがすぐにわかる点が最大のメリット。組織ぐるみで統一されていれば一番いいのですが、まずあなたの書類だけでも統一してみてください。上司は「あいつの書類なら、ここだけ見ればOK」と、見る前の段階で情報を受け入れる態勢が万全になるはず。そして何より、作り手である自分にとっても一番楽な手法です。
左ページの議事録を例にフォーマット化のポイントを見ていきましょう。議事録は若手社員に任されることが多いのですが、本来は決定権のある人物がやるべき任務。なぜなら、議事録には決定事項を記さなければならないから。会議の中でも常に決定することを意識し、議論をそこへ落とし込まなければなりません。
もし議事録の作成を任されたら、「これは管理職になるための基礎訓練なのだ」と前向きに考えましょう。いい議事録が作れるようになれば「あいつは仕事ができる」「いい新入社員が来た」と周囲の評価も高まります。
■議事録作りは管理職への基礎訓練
さて、フォーマット化の第一歩となるのが書体の使い分けです。例示の議事録では、項目名は太めのゴシック体を使い、内容は明朝体を使うようフォーマット化していますので、明らかに見分けがつきます。
議事録の冒頭には、日時、場所、出席者、議題などの「概要」を記します。これは会議前に埋めておくのが鉄則です。最も重要なのは「出席者」。議題にかかる決定をするために必要なキーパーソン全員に勢ぞろいしてもらいます。ある決定にかかるたった一人の人物がいないだけでも、その会議は意味がありません。事前に記入しておくことで、漏れがないようチェックすることが可能になります。その際、上司との相談、キーパーソンとの折衝、関連他部署との調整は避けられません。じつはこれ、プロジェクトマネジャーの仕事そのものなのです。
「概要」の下には「議事内容」を記していきます。「報告」「意見」「決定・未決」「タスクリスト」を明確に分けることがポイントです。未決も一つの決定であり、ゴールをはっきりさせるための要素。何も進めていないのと同じことの「検討中」とは違います。
議事録で最も重要なのは、タスクリスト。「タスク」「アウトプット」「納期」「責任者」を明示します。アウトプットは必ず目に見える、形ある“物”とします。これを「マーケティング調査をする」とだけ記しておくと、期限になっても「集計していません」となりかねません。ですから「マーケティング調査の報告書」とする必要があるのです。また、物を提出するのですから、その期限は“納期”と表現します。
問題となりがちなのが責任者を明記すること。ダメな会社ほど、責任者を明記することに拒否反応を示す傾向があります。一つのタスクについて必ず一人の責任者を記します。
こうした議事録を作ることができれば、たとえば会議に参加していないさらなる上役も、議事録を見て「問題なく回っているな」と、信頼してくれます。逆に議事録が誰にも読まれないようなものだと、結局、議論した内容が共有されず、あやふやなままになってしまいます。会議そのものが無意味なものになりかねません。会議の最終目的は、議事録を作って「これが決まった」と関係者が確認することです。
こうした議事録に限らず、上司に提出する書類を作る際は、上から目線で作ること。あなたの上司はその上の上司から何を言われるかを常に気にしています。「二段上から目線」の書類作りが成功へと導きます。
■よい議事録の例
[POINT 1] A4サイズでフォーマット化
議事録は早く目を通してもらうのが最優先。A4サイズだとひと目でパッと内容をつかめる。毎回同じフォーマットなら、「どこに何が書いてあるか」という構造を覚えてもらえるのでより効果的だ。
[POINT 2] ゴシック体と明朝体を使い分け
各項目名は太めのゴシック体に、内容は明朝体に統一されていると、見る側は、フォーマット化されているものだと把握しやすい。
[POINT 3] 会議の概要は事前に記入
最も重要なのは出席者。事前に記録する際、キーマンが抜けていないかの確認にもなる。また、出席者を巡って上司や関係者に相談・根回しをする材料にもなる。
[POINT 4] 報告、意見、決定・未決の区分を明確に
会議で最も重要なのは「決定」か「未決」かを明確にすること。それ以外の報告や意見も区別する必要がある。
[POINT 5] 肝心要のタスクリスト
タスクリストは会議中にホワイトボードなどを利用し、参加者全員に認知してもらう形で決定していくことが重要。議事録を改めて作らなくても、これをデジカメで撮影しメールを送れば十分ということも少なくないはず。ポイントは納期と責任者を明記すること。
■悪い議事録の例
「誰が、どんな発言をしたか」が列挙してあるだけ。読まれない議事録の典型だ。
(トライオン代表取締役 三木 雄信 構成=小澤啓司 撮影=谷本 夏)
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