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"ながらスマホ"で子の芽を摘む気の毒な親

プレジデントオンライン / 2017年9月23日 11時15分

*発売中の『プレジデントFamily2017秋号』より。特集「東大生179人の小学生時代 『普通の子』が成績急上昇の秘密」で東京大学に通う学生にアンケート。その結果、彼らの親が子供の学力を伸ばすたった1つの共通した習慣を実践していることが判明。

東大に合格するような賢い子は、親から「勉強しなさい」と言われなくても自ら机に向かう。なぜここまで違うのか。今回、東大生179人にアンケートをした結果、彼らの親の9割に共通した習慣があることがわかった。それこそが自ら勉強する子に育てる秘訣だったのだ。しかし、一般の親はそれができない。元凶のひとつは「スマートフォン」だ。どういうことか。詳しく解説しよう――。

■「勉強しなさい」と言う代わりに親がした唯一の習慣とは?

「え、ウソ、そんな簡単なことだったのか!」
「たったそれだけ? それで子供が賢くなるの?」

まさに目からウロコだった。現在発売中の『プレジデントFamily2017秋号』では「東大生179人の小学生時代 『普通の子』が成績急上昇の秘密」と題した特集のトップで東京大学に通う学生にアンケートをしている。編集・取材した自分たちが言うのは誠におこがましいのだが、今回だけは言わせてほしい。この中身がめっぽう面白く、驚きに満ちたものなのだ。

東大生本人がどんな小学生時代を過ごしたかも興味深いのだが、それ以上に引き付けられるのは、「彼らの親がどんな人物か」がわかる部分だ。

今回のアンケートでは、東大生の親には共通した「1つの習慣」があることが明らかになった。それを親が実践すれば、たちまち「子供が自ら勉強する」という、日本中の子供を持つ大人が習得したいに違いない魔法の習慣だ。

さて、どんな習慣か。

親が子にわかりやすく勉強を教えてやることではない。褒めてやることでもない。教育費をかけて良い学校や塾に通わせることでもない。まったくお金もかからない。「え、本当に?」と、思わず疑いたくなるほど誰にでもカンタンにできることだった。

▼脳科学者太鼓判「○○すると子供の学力は上がる」

多くの親は子供に手を焼く。特に、勉強だ。遊んでばかりで勉強しない。本当は言いたくないが、つい口に出てしまうのが「勉強したの? 勉強しなさい!」。子を持つ親として自戒を込めて言わせていただくが、気の毒である。気持ちがわかりすぎて、つらい。しかし、これまで東京大学に合格した学生の親たちに取材すると、彼らはまるで打ち合わせでもしかたのように異口同音にこう語ったのだ。

「子供に『勉強しなさい』と言ったことはありませんね」
「言わなくても、(ウチの子は)勉強していました」
「読書に没頭して、食事の時間にもやめないので困りました」

彼らは自慢しているわけではない。それが「わが家では普通だった」とありのままを述べているにすぎない。「なぜ自ら勉強する子が育つのか?」これは編集部の長年の疑問だった。

その疑問が今回の特集で解明された。

東北大学加齢医学研究所所長の川島隆太教授に東大生アンケートの監修を依頼し、その結果を見てもらうと、すぐさまこう太鼓判を押したのだ。

「東大生アンケートの結果には、学力の源泉となる親の行動がはっきりと示されています。学力の高い子に育てるために、何をすればいいか明らかです」

東大生の親が子供にしていた習慣は、たった1つだった。それが学力向上の源泉になった。そう川島教授は断言するのだ。

■「子供の話をしっかり聞く」たったそれだけができない親

学力の源泉となる、たった1つの親の習慣。それは「子供の話をしっかり聞くこと」だ。

東大生に小学生時代を振り返ってもらったアンケートでは、「家の人にしっかり話を聞いてもらっていましたか?」という項目がある。これに対して、実に東大生の90%がYESと答えた。自由記述で答えてもらった、「親子の会話のエピソード」にはこんな実例が記されていた。

●「母親と好きなパン屋さんの話をずっとしていた」(文科3類 女性)
●「いつも何気なくした聞いた質問を受け流さず答えてくれた」(理科2類 男性)
●「くだらない僕の空想の話を邪険に扱わず何度でも聞いてくれた」(理科1類 男性)
●「学校で何かあると、母親がいつも話を聞いてくれた。その話をよく覚えていてくれて、学校から帰ると『○○ちゃん、どうだった?』と気にかけてくれた」(教育学部 女性)
●「塾や学校で教わった新しい知識を披露すると、快く聞いてくれた」(理科1類 男性)
●「共通の趣味だったゲームの話をよくしたのを覚えています」(理学部 男性)
●「読書や料理、手芸が大好きだったのですが、私が黙々と作業している間は話しかけず、私が面白かった点やこだわった点について話すときは『すごいすごい』と聞いてくれました」(理科2類 女性)

川島隆太教授は、説明する。

「私の研究室が仙台市とともに行っている『学習意欲の科学的研究に関するプロジェクト』では、仙台市に住む合計7万人の小中高生を2010年から7年にわたって追跡調査しています。この解析から明らかになったのは『家の人にしっかり話を聞いてもらった』と答えた子は、学力が上がるという真実。膨大なデータが強い因果関係を示しています。東大生の親も、子供の話をしっかり聞いてあげていた。これが学力を上げる秘密なんです」

▼親に話を聞いてもらえた子供は「心が安定して“大化け”する」

なぜ、話を聞いてもらうと、子供の学力が上がるのか? そこには、心の安定が大きく影響を与えているという。川島教授は続ける。

「『話をしっかり聞いてもらえている』と子供が答えたということは、家族のコミュニケーションがきちんと取れているということです。私は別の研究でコミュニケーションが親子関係にどんな変化をもたらすのかも調べました。すると、当然のことですが、親子の愛着関係が高まり、子供の精神状態が安定しました。こうした親子関係にある子供は、家で安心して暮らしているから、落ち着いて勉強に取り組めるのです」

*川島教授によれば「話を聞く」といった家族のコミュニケーションが多いと、子供の自主的な学習習慣などが形成され、それによって高い学力を備えられるという因果関係がわかった。

親子の会話のエピソードを読むと、東大生の親は子供の話をしっかりと受け止めているの
がわかる。子供の言うことと聞き流したりせず、おもしろがっているのが伝わってくる。これは多くの親が意外と実践できていないことかもしれない。

まず、「家族のコミュニケーション」が心の安定をもたらす。これがスタートだ。

仙台市のデータでは、「話をしっかり聞いてもらった」子供は、「学習意欲」が力強く育っていくことがわかっている。学習意欲は、やがて「自主的な学習習慣」につながり、「高い学力」として結実する。

私たち編集部の東大生アンケートでも、「勉強をして、新しいことを知るのが嬉しかった」が84%、「知りたいことがあると、じっとしていられないタイプだった」が73%など、学習意欲に関する項目は軒並み高い割合を示した。だから、東大生は子供の頃に親から言われなくても自ら勉強していたのだ。

今回の東大生アンケートでは、子供の頃、親が勉強を見たかどうかも聞いている。結果は、東大生の親の6割が勉強を見ていなかった。

「親のやるべきことは明らかです。子供の話をしっかり聞いて、安心させてやること。それがもっとも大切な親の仕事なのです」(川島教授)

勉強に関わるのではなく、日常のたわいない話・雑談に付き合う。たったそれだけのことが子供の心と頭を育てていたのだ。

■"ながらスマホ"の親はどのように子供の芽を摘んでいるか?

編集担当者として川島教授の話を聞きながら、私はあることを思い出した。

学生時代に、心理療法の一つとしてカウンセリングを習った時のことだ。カウンセリングでは、悩みを抱える話し手に対して聞き手はアドバイスをしたりせず、途中、相手の言ったことを繰り返したり、相槌を打ったりしながら、ただひたすら話を聞く。それで果たして悩みが解決するのだろうか? と感じられるのだが実践してみると確かにしっかり聞くことができると、話し手が話す内容はどんどん前向きになっていった。

人は、話をしっかり聞いてもらえると、自分を受け入れてもらえたと安心する。すると、自ら悩みを解決できるようになっていく。人にはもともと自分で課題を解決したり、成長する力が備わっているのだ。ただし、その力を発揮するには、誰かに全面的に受け入れてもらうことが必要だということなのだろう。

学力についても、きっと同じなのだと思う。

話をしっかり聞いてもらえた子は、学力が上がるという真実。これは子供には本来、高い学習意欲が備わっていることを示している。子供が小さかった時のことを思い出せば、納得できる。なんにでも目を輝かせ、失敗しても挑戦する。これが子供の本質だ。本来備わっている力が発揮されていないということは、受け止めてくれる存在がいなくて不安なのかもしれない。

おどかそうというわけではない。親は何も難しいことをしなくて大丈夫なのだ。ただ、話を聞いてあげればいい。あなたが楽しそうに話を聞いてあげるだけで、子供は満たされた気持ちになるのではないか。

▼忙しい忙しいと言いながら、スマホでゲームやLINEする親

さて皆さんは子供の話をしっかり聞いているだろうか?

私はこの取材のあと、自分を振り返って反省した。普段の子供との会話を思い出すと、仕事から帰ってきて、あわただしく料理しながら、掃除しながら、スマホでメールチェックしながら……という「ながら聞き」が基本で、適当に相槌してしまうことも多かった。

川島教授は「スマホの登場が家族の時間を奪っています。共働きが増えて、お母さんは確かに忙しいのですが、そのなかにスマホを眺めている時間が組み込まれていたりします。子供に向き合う時間にしてほしいです」と話す。本当に耳が痛かった。そして、おそろしくなった。スマホは大人にとって、多忙な毎日の中でのオアシスだ。リラックスできる「ひとり時間」だ。しかし、「ながらスマホ」はわが子の人生をダメにしてしまうリスクもある。そのことを肝に銘じたい。

今回の東大生アンケート記事では、東大生の親が日常生活の忙しいなか、「自宅のどんな場所で」また「どんなタイミングで」子供の話を聞いてあげたかなどについても質問している。また、「最低限どのくらいの時間をかけて会話をすべきか」を川島教授にも伺っているいる。さらに、東大生のような「高い学力」に結び付けるための大切な条件も紹介している。どれも難しくない。やろうと思えば、誰でもすぐできる。ぜひ、参考にしてほしい。

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▼東大生の親は「いつ」「どこで」子供の話に耳を傾けたのか?

*東大生アンケートでは、小学生時代、自分の親がどのようにして「子供の話を聞く工夫」をしていたかも解析。「いつ」「どこで」「どのように」耳を傾けたのかといった東大生の具体的な証言は発売中の『プレジデントFamily2017秋号』をお読みください。

 

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(プレジデントFamily編集部 森下 和海)

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