トヨタがそれでも業界盟主に君臨する理由

プレジデントオンライン / 2017年10月19日 9時15分

電気自動車(EV)や自動運転車の開発にIT企業が相次いで参入するなど、自動車業界は大競争時代に突入した。これまでハイブリッド車で業界をリードしてきたトヨタ自動車はいったいどう動くのか。『図解!業界地図2018年版』(プレジデント社)の著者が分析する――。

■リーマンショックの落ち込みから回復

トヨタ自動車の誕生は1937年。現在の豊田自動織機から分離独立しスタートした。販売部門の分離・再統一など80年の歴史を積み重ねた現在、年間の売上計上台数はおよそ900万台(世界小売販売台数は1000万台強)を数える。売上高は30兆円に迫り、1兆円から2兆円規模の最終利益をコンスタントにたたき出す。

世界小売販売台数こそ日産自動車・三菱自動車・ルノー連合やドイツのフォルクスワーゲンに先行を許すようになったが、財務などを含めた総合力では、自動車業界世界トップ企業を堅持。創業以来の利益の蓄積を示す利益剰余金、いわゆる内部留保は18兆円に迫る。

トヨタは2000年代中ごろに急成長し、2007年から2008年にかけてピークを迎える。

08年3月期、自動車販売台数は891万台で、売上高は26兆2829億円。自動車部門の粗利益率17.7%(原価率82.3%)、営業利益率8.8%。最終利益は1兆7178億円だった。

だが、それもつかの間、リーマンショックを引き金とする世界的な金融危機が、実体経済に波及。経営破綻に追い込まれた米国勢のGMとクライスラー(現フィアット・クライスラー)に比べれば傷は浅かったともいえるが、トヨタも09年3月期、前年とは一転して4369億円の最終赤字に転落する。

トヨタの急成長は、非創業家出身の経営陣らがもたらしたといえるが、同時に、積極経営・拡大路線にかじを切っていたことも裏目に出たともいえるだろう。北米では大規模リコール問題も発生した。

人員整理を余儀なくされた1950年前後の経営危機以来の苦境に立たされたトヨタは、豊田章男社長(09年6月就任)を中心に、経営の立て直しに取り組むことになる。創業家出身の経営トップは、十数年ぶりだった。

以後、トヨタの代名詞ともいえる原価軽減を含め、さらなる筋肉体質の強化に邁進。生産工場の新設凍結などの荒療治も実施することになる。ハイブリッド車「プリウス」の開発・販売など、エコカーでもライバル社に先行。業績の回復を実現してきた。

リーマンショック時の落ち込みは、ほぼ10年かけて回復したことは、表にあるように自動車部門の粗利益率や営業利益率などにも示されているといっていいだろう。

■ハイブリッド車市場の先細りは避けられない

日本の自動車会社の業績は為替に大きく左右されるが、自動車1台当たりの販売価格や原価、営業利益の推移も確認しておこう。

表は自動車部門の売上高や原価などをベースに示したものだが、1台販売での儲け(営業利益)は、09年3月期の5万円超の赤字から回復。「15年3月期=26.6万円」「16年3月期=29万円」「17年3月期=19.8万円」と、07年3月期や08年3月期レベルにまで戻したといっていいだろう。

トヨタ自動車は1998年にダイハツ工業、2001年に日野自動車をそれぞれ子会社化。SUBARUやいすゞ自動車にも資本参加した。17年10月にはマツダと500億円ずつ相互出資。スズキとも業務提携の方向である。

SUBARU300万円弱、マツダ200万円強、スズキ100万円と、1台平均の販売価格は各社各様だ。それら国内勢に加え、ドイツのBMWも含めれば、トヨタの資本・業務提携先の合計販売台数は1800万台を超える。

トヨタグループがしばらくの間は業界のリード役を担うかにみえたが、エコカーの本格普及や自動運転車の開発が進むにつれ、ライバル関係など業界の構図が大きく変化。米フォード・モーターが、自動車の大量生産を可能にした生産方式を導入して100余年。グーグルやアップル、マイクロソフトといったIT世界大手、さらには、EV専業のテスラや中国BYDなどを含め、これまでにない戦いの幕が切って落とされた。

トヨタにとっての誤算は、エコカーの主役がEVに移行する流れが強まっていることだ。英仏が40年までにガソリン車やディーゼル車の製造・販売の禁止方針を打ち出し、中国も続く可能性が高いとされる。以前から環境規制が厳しい米カリフォルニアでは、18年からさらに排気ガス規制が強化される。

ハイブリッド車がエコカーから除外されEVが主流になれば、ガソリンエンジンとモーターを併用するハイブリッド車でリードしてきたトヨタのアドバンテージが消える可能性も出てくる。トヨタがハイブリッド車を世に送り出したのは1997年。それから20年、2017年1月にはハイブリッド車の累計販売台数が1000万台を突破したが、販売台数の先細りは避けられないといってもいいだろう。

■自動運転車技術でアメリカの大学と共同開発

結果的に、ハイブリッド車で出遅れたことでEV開発に絞り込んでいた日産自動車や三菱自動車などと、同じ土俵での戦いになる。日産は1回の充電で走れる距離を400kmまで伸ばした新型「リーフ」の発売を、10月から開始した。

もちろん、トヨタもハイブリッド車や燃料電池車と並行して、EVでの巻き返しを図る。9月にはマツダ、それに自動車部品世界トップ級のデンソーの3社で、EV開発のための共同出資会社を設立。3社連合にはSUBARUやスズキも参加の方向で、後手にまわっていたEVでも巻き返しを図る。トヨタは20年までにEVの量産体制を整備する方向だ。

自動運転車についても、AI(人工知能)技術の研究開発を進めるトヨタ・リサーチ・インスティテュート(米カリフォルニア州)をすでに設立。スタンフォード大学やミシガン大学、マサチューセッツ工科大学などとの協力関係も構築し、開発を進めている。16年から5年間だけでも10憶ドルを投資する。トヨタグループの今後の動きから目が離せない。

(ビジネスリサーチ・ジャパン代表 鎌田 正文)

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