強度改ざん素材使用"自衛隊機"に重大疑惑
プレジデントオンライン / 2017年10月27日 9時15分
■フレームの強度不足で水平尾翼が変形、ひび
神戸製鋼所の強度偽装問題はついに防衛装備品にまで影響を及ぼし始めた。13日、防衛省の青柳肇報道官が記者会見で、神戸製鋼製の強度改ざんアルミ素材が航空機や誘導武器、魚雷などに使われていると認めた。
経済産業省によると、アルミ素材は三菱重工業、IHI、川崎重工業、SUBARUの防衛装備品に使用された。ここで注目すべきは、川崎重工だ。
川崎重工がアルミを大量に使用している防衛装備品は物資や車を運ぶ大型輸送機「C‒2」や、潜水艦を空中から探知するなど周辺海域を警戒監視する哨戒機「P‒1」がある。
C‒2輸送機は2000年に計画された国産機だが、開発中の機体の強度不足の発覚で、予定よりも現場配備が5年も遅れた。18年度末までに8機が実用される予定だ。その輸送力は、機甲戦力「16式機動戦闘車」を自衛隊機では唯一そのまま運べることに表れている。
P‒1哨戒機は、C‒2の兄弟機で、2機は同時に計画された。P‒1の機体重量比で約15%が共通部品で、搭載システムは品目数で約75%が共通装備されている。
C‒2は、これまでに米国、UAE、ニュージーランドから引き合いがあり、P‒1もニュージーランドや英国と交渉したとされる。日本にとって、防衛装備品輸出の切り札ともいえる。
防衛省側は特定の機体名を挙げずに、記者会見では「メーカーから『直ちに運用に影響はない』との回答を得ているが、(全容を)早急に確認したい」と述べた。しかし長年防衛省を取材してきた軍事専門家は「それで済む問題ではない」と憤る。その理由として「この2機は過去にとんでもない問題を起こしている」と息を荒らげる。
2機は開発段階で何度も強度不足の壁にあたり、その都度補強を繰り返してきた。既に述べたように、そのため開発が遅れていたのだという。まず、07年7月30日に防衛省が公表した内容によれば、地上での強度試験で、両機は水平尾翼が変形し、C‒2は主脚やその付近の胴体構造の一部が変形。P‒1は胴体の床構造の一部にひびが入り、両機体の設計が見直された。14年1月には地上試験でC‒2の機体強度を確認した際、後部の貨物扉が脱落した。これについて防衛省は「機体後部のフレーム強度不足が原因」としていた。
■虚偽データを信じた可能性は
こうした問題はたび重なる補強による機体重量の増大と引き換えに解決していったが、なぜ、ここまで当初の想定と実際の強度が違ったのか。そもそもアルミ素材の強度に問題があったにもかかわらず、神戸製鋼が示した虚偽のデータを防衛省と川崎重工が信じた可能性はないのか。この点に関して、川崎重工は、本誌の取材に「個別の機体の詳細に関してはお答えできない」と回答している。
こうした疑惑はどういった影響があるのだろうか。繰り返すが防衛省側は「直ちに影響はない」といっている。しかし「これは大嘘だ」と前出の軍事専門家は語る。理由の一つに、北朝鮮危機を目前に自衛隊の運用に問題を起こしかねない点を指摘する。
「信用できない部品や構造材が使われているとわかれば、現場としては点検の強化や頻度を増やさざるをえないし、面倒な非破壊検査をやらざるをえない」
■海外からの信用を失ってしまう
また、不安視されるのは輸出への影響だ。
「いくら独自基準で大丈夫と言っても、神戸製鋼の一連の問題がこれだけ大騒ぎになってしまっては、海外からの信用を失ってしまう。C‒2、P‒1は『前科持ち』とも言える機体だ」(前出の軍事専門家)
航空自衛隊の主力戦闘機「F‒15」の機体とエンジン、支援戦闘機「F‒2」のエンジンに使用されているチタン合金も神戸製鋼製だ。様々な素材での偽装が相次ぎ発表されたが、仮にチタン合金もデータを改ざんしていれば、自衛隊の制空権を確保する戦闘機と、対艦・対地攻撃を担う支援戦闘機が最悪、飛べなくなってしまう。
いまやこの問題について安倍政権の一挙手一投足にすべての注目が集まる。
(写真=時事通信フォト)
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