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米国の超エリートが書く"人生日誌"の中身

プレジデントオンライン / 2017年10月25日 9時15分

『スタンフォード式 人生デザイン講座』(ビル・バーネット、デイヴ・エヴァンス/早川書房刊)

仕事がつらい、いまの職種に満足できない……。そんな悩みを抱えたときに、どう対処すればいいだろうか。米スタンフォード大学には、そうした「人生の行きづまり」を感じる人の悩みを解決する講座がある。この学内で1、2を争うという人気講座を創設したビル・バーネット氏が、そのメソッドから「日誌」の付け方を紹介する――。

※以下はビル・バーネット、デイヴ・エヴァンス『スタンフォード式 人生デザイン講座』(早川書房刊)より抜粋・再構成したものです。

■人生を調整すれば理想に近づける

アメリカで行われた仕事に関する意識調査では、「社会人の3人に2人が仕事に不満をもっている」という結果が出ています。その不満が年々強くなってきたら、どうすればいいでしょう。今からまったく異なる仕事に転職する? 「人生はこんなもんだ」とあきらめる?

ここで提案するのは、そのどちらでもない選択肢です。筆者は、スタンフォード大学デザイン・プログラムのエグゼクティブ・ディレクターを務めています。筆者が創設したライフデザイン講座では、人生に行きづまりを感じる人々の悩みを解決してきました。いまや学内で1、2を争う人気講座になっています。

ライフデザインの目的は、人生の問題を発見・解決すること。とはいえ、人生を根本から変える必要はありません。現在の人生を調整すれば、理想に近づけることができるのです。そのためには、何が必要か? 今回は、自分にあった仕事を見つけ出す「グッドタイム日誌」という手法を紹介します。

■「仕事は楽しくなくて当たり前」?

Aさん(34歳/男性)の職業は土木技師です。働き出してしばらくは順調だったものの、結婚をきっかけに別の会社に移ったところ、事態は急変。仕事がつらくてたまらなくなりました。「どうしてこうなってしまったんだろう」と思い悩みながら朝を迎える毎日です。

Aさんの友人は、「他人の下で働くのが不満なのでは?」と独立を勧め、義父はビジネス・スクールで学び直すことをアドバイスしました。Aさんも真剣に検討するものの、実は、自分が抱えている問題がよく見えていませんでした。

「僕は土木技師として失敗したのか。我慢していまの仕事をつづけるべきなのか。仕事は楽しくなくて当たり前なんだから……」

この考えは、どれも間違っています。

「人生に行きづまった」と思うとき、問題を見誤っていることがしばしばあります。その原因は、思い込みです。どんな種類の思い込みがあるかは拙著『スタンフォード式 人生デザイン講座』(早川書房)に詳しく記していますが、ここではAさんのケースを見ていきましょう。

Aさんは「土木技師として失敗した」と思い、「仕事は楽しくなくて当たり前」と言い聞かせようとしています。しかし、どちらも大間違いです。「楽しさ」は、自分に合った仕事を見つける大事な指針です。そもそも「失敗した」というのは、本当でしょうか?

こうしたときこそ、自分の仕事を「細かく見ていく」ことが必要になります。そこで効果的なのが、「グッドタイム日誌」なのです。

グッドタイム日誌は、仕事の分類術のひとつ。「熱中」と「エネルギー」で仕事を仕分けていくのです。

1日の仕事のなかで、「ワクワクする」「集中している」「楽しい」と感じたタイミングと、そのときどんな仕事をしていたのかを記録しましょう。反対に、「退屈」「落ち着かない」と感じた仕事も記しましょう。

次に、エネルギーの流れも記録してみてください。どんなときに気力がみなぎり、萎えるのか。

■1日は「瞬間」の連続 記録することで掘り下げる

なぜ、わざわざ記録するのでしょうか。

1日が終わって帰宅するとき、「今日は最高だった」「最悪の日だ」と感想を漏らすことがあると思います。でも、なぜそう感じたのかを細かく分析することはめったにありません。1日は最高の瞬間、最悪の瞬間、普通の瞬間など、無数の瞬間の連続で成り立っています。記録の目的は、1日の出来事を細かく掘り下げ、あなたが楽しんでいる瞬間を知ることにあります。

「自分がどんな仕事を好きなのかはもうわかっている」という人もいるかと思います。でも、意外な発見も多いものです。筆者の例を紹介します。

筆者自身の「グッドタイム日誌」の例

記録から、修士課程の学生の指導で毎週クタクタになっていることに気づきました。学生のことは大好きなのに! しばらく記録を続けると、ふたつの問題が浮かび上がりました。

(1)教える環境が悪い(大学院の騒がしいスタジオ)。
(2)学生に指導がうまく伝わっていない。

そこで、教室を変更し、指導スタイルを1対1から少人数制に変え、学生がお互いに助け合えるようにしました。この変更は大成功し、数週間後には授業でしょっちゅう強い熱中状態(フロー)に入るようになったのです。

記録は毎日つけることをすすめますが、数日おきにまとめてつけるほうがラクならそれでもOKです。

記録をとったあとには、そこからわかることを考察します。振り返って、パターン、洞察、意外な点を見つけだしましょう。あなたに合っていることは? 合っていないことは? それを知るヒントになるものなら、なんでもいいのです。

Aさんはグッドタイム日誌をつけ、「自分が熱中しているタイミング」と「自分のエネルギーを高めてくれる活動」に着目しました。

すると、Aさんは難しいエンジニアリングの課題にとりくんでいるとき、自分が土木技師の仕事を楽しんでいると気づきました。

逆に、生気を吸いとられ、憂うつな気分になるのは、厄介な人物に対処したり、他人とコミュニケーションをとろうとしたり、管理業務や用事をこなしたりしているときでした。

これをもとにAさんは、自分に本当に合う物事にじっくり注目しました。それがわかると、Aさんはむしろ土木技師の仕事が好きなのだと実感したのです。嫌いなのは、人間関係の問題、提案書の作成、料金の交渉でした。

やるべきことは明白です。好きな仕事をする機会を増やし、嫌いな仕事をする機会を減らす方法を見つけることです。Aさんは周囲にすすめられるままビジネス・スクールに進学するかわりに(そうしていたらきっと大惨事だったでしょう。しかも高くついたはず)、エンジニアリングに努力を集中させることにしました。

そしていまAさんは上級レベルの土木技師・構造エンジニアとして、心から楽しめる複雑なエンジニアリングの問題にとりくんでいます。技術的に価値のあるエンジニアになったので、もう管理業務を頼む人はいなくなりました。ときには、出社したときよりもエネルギーに満ちあふれて帰宅する日もあるほどです。

■気づきの視点を得る「AEIOU」メソッド

Aさんのようにうまくいくケースもあります。ただし、グッドタイム日誌もただつけただけでは、そこから貴重な発見を引っぱりだすのは簡単ではありません。そこで、気づきの視点を与えてくれるのがAEIOUメソッドです。

・活動(Activity)
あなたはなにをしていたのか? それは決まった形式をもつ活動か? それとも自由気ままな活動か? あなたは特別な役割(チーム・リーダーなど)を果たしていたか? それとも一参加者(会議のメンバーなど)か? 

・環境(Environment)
環境は心の状態に大きな影響を及ぼす。その活動をしていたとき、どこにいたかを思い出そう。どんな場所だったのか? その場所はあなたをどういう気分にさせただろう?

・やりとり(Interaction)
やりとりした相手は人間? 機械? 新しいタイプのやりとりなのか? おなじみのやりとりなのか? 正式なやりとりなのか? 自由なやりとりなのか?

・モノ(Object)
モノやデバイスは使ったか? そのときのあなたの気分を生みだした(または強めた)モノは?

・人(User)
ほかにその場にいた人は? その人はあなたの体験にとってプラスだっただろうか? それともマイナスだっただろうか?

たとえば、会議や打ち合わせで疲れ切ってしまう人がいます。「自分は人間嫌いだから、人に会わない仕事をしたい」と願ったとしても、現実にはなかなか難しい条件です。

そうした悩みを持っていたライターのBさんは、自分の「グッドタイム日誌」をAEIOUメソッドで見ていくうちにある発見をしました。「人と会うと疲れてしまう」と思っていたけれど、会う相手が1人か2人で、一緒に何かを書いたり、新しいプロジェクトのアイデアを出し合ったりしているときは問題なかったのです(=活動)。苦手なのは、スケジュール、ビジネス戦略についての会議や、7人以上での会議でした。いろいろな意見に頭がついていかないからです(=環境)。Bさんはひとつのことに集中して働くタイプなので、一緒に作業する相手(=人)や共同作業の形式(=やりとり)によって、集中力が増したり、そがれたりするとわかりました。

苦手な会議を完全になくすことはできないとしても、調整することはできます。あまり熱中できない活動を、熱中できる活動で挟むようにスケジュールをたて、「エネルギーを吸いとる」活動を終えたときは自分にちょっとしたご褒美をあげるなどです。エネルギーを吸いとる活動に対処するコツは、その前にじゅうぶんな休みをとり、さっさと終えられるようエネルギーを蓄えておくことです。

どんな仕事や職業にも、苦しくて厄介な面はあるでしょう。ただ、仕事のほとんどに生きがいを感じないとしたら、つらいはずです。仕事は生涯の膨大な時間を費やすわけですから。

ライフデザインのモットーは、「人生に『手遅れ』も『手づまり』もない」です。ここで紹介した手法のように、自分らしい最高の人生をつくるやり方はまだまだあるのです。

(スタンフォード大学デザイン・プログラム エグゼクティブ・ディレクター ビル・バーネット)

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