リストラを命じられたら、どう伝えるか?

プレジデントオンライン / 2018年1月28日 11時15分

「愚者は経験に学び、賢者は歴史に学ぶ」という格言がある。賢き先人たちは、古典の知恵に学び、ピンチを切り抜けてきた。雑誌「プレジデント」(2017年5月29日号)では、戦略書の古典「孫子」の特集を組んだ。今回は特集から、経営戦略コンサルタントの鈴木博毅氏による「リストラ」についての考察を紹介しよう――。

■説得の武器をくれるよう依頼してみるべき

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Q.社員のリストラを会社から命じられた。これまでずっと苦楽をともにしてきた仲間の悲鳴が聞こえてくる。全員を集めて伝えるべきか、残ってほしい人にまず伝えるべきか。

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A.鈴木博毅さんの回答

上と下の板挟みになる。管理職にはよくある悩みです。しかもリストラとなると、誰も進んではやりたがらない嫌な仕事です。

あなたが非常に優秀で、会社に残れることが確実で、職場の仲間を傷つけたくないというのであれば、そんな役目を引き受ける必要はないかもしれません。逆に会社を見切って自分から辞めるという選択もあるでしょう。

ただ、あなたが断っても誰かがやります。それは強引なクビ切りで、職場がズタズタになるかもしれません。それならば、会社を辞めるにしても、辛いですが自分の手でリストラを完遂させてから去るほうがいいのではないでしょうか。経験は個人的キャリアアップにも繋がります。

では、どう進めるか。まず、引き受けるにあたり、現場の説得材料として、上層部もコストカットのために血を流し苦しんでいることがわかるような情報が欲しいと会社の上層部に提案すべきです。上層部も血を流し、必死に取り組んでいる形もないまま、現場だけが泣くというのでは、感情的な齟齬が大きく、説得は難しくなります。上層部の感情を損ねない範囲で、説得の武器をくれるよう依頼してみるべきでしょう。

■『孫子』の言う「先ずその愛する所を奪え」とは

次にリストラを発表する前に、会社に残ってほしい人材と個別面談をして、会社の実情と、今後会社が何を目指していくかといった未来の展望を話しておく必要があります。会社を引っ張っていってもらわなければいけない人間を味方に引き込んでおく。

言い方は悪いですが現場を分断して、優秀な人たちが会社の味方になるような流れをつくってしまう。『孫子』の言う先ずその愛する所を奪えです。事前の根回しもなしに一律平等に情報を伝えてしまうと、リストラ反対運動など、会社にとってマイナスの方向で団結する可能性が高くなります。

実情を広くきちんと伝えるのはその後です。「最終的には、申し訳ないけれど現場の何人かが別の会社を目指してもらうことになる」と伝えたうえで、辞めてもらう人とも段階的に面談をして、物事の幕引きを図るという流れです。

さらに加えるなら、実際に去ってもらう人間と面談するときには、現場が感じている会社の問題点、改善方法を言ってもらう。つまり現場にも発言の機会をつくることです。『常々思っていたことを伝えることができた。去ることになるが、今後の会社の改善に繋がるかもしれない』という気持ちにさせることです。

強引なリストラは現場のやる気をなくしますし、こんな会社で働いていていいのだろうかと不安にもなります。

『孫子』は目の前の勝ちだけでなく、最終的な勝利を手にすることこそが大事だと説いています。人員削減がゴールではなく、仲間がリストラされてしまった厳しい状況でありながらも、業績改善の意欲が逆に高まるような状況を現場につくり出すことこそ本当の勝利です

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鈴木博毅
1972年生まれ。慶應義塾大学総合政策学部卒。経営戦略コンサルタント。著書に『実践版 孫子の兵法』『「超」入門 失敗の本質』ほか。
 

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(MPS Consulting代表 鈴木 博毅 構成=遠藤 成)

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