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慶應中等部が受験で"フレンチ"を出す理由

プレジデントオンライン / 2017年12月7日 9時15分

※写真はイメージです

難関中学の「社会」の試験で、教科書に答えが載っていない「社会常識」を問う出題が目立っている。慶應義塾中等部では「フレンチのフルコースの順番」、桜蔭中学では「おせち料理の『田作』の由来」が問題になった。中学受験を考えているのであれば、ファミレスだけではなく、子どもに本格的な「食」を体験させることが必要かもしれない――。

■「フレンチ」も「おせち」も中学受験では常識です

「中学受験の社会なんて、直前に知識を詰め込めば、どうにかなるでしょ」

私が代表を務める塾の保護者にも、そんなふうに考えている人は多い。背景には「早くから覚えたって忘れるものだ」という考えもあるようだ。

確かに、私が20年以上前に中学受験をしたときには、知識の詰め込みでも何とかなった。しかし、今はそうではない。試験時に初見の資料を読み取って考えたり表現したりする能力が求められる傾向が強まっており、教科書には載っていない「社会常識」が問われることも多いのだ。今回は、そのような問題を紹介していきたい。

▼桜蔭中の出題「イワシの加工品が『田作』とよばれる理由」

まずは女子最難関校のひとつと言われる、桜蔭中の入試問題(2010年)から。

<お正月に豊作を願っていたことが、おせち料理にある『田作』というイワシの加工品の名前からもうかがえます。イワシの加工品が『田作』とよばれる理由を答えなさい>

子どもたちは塾で「イワシはかつて干鰯(ほしか)という肥料にされていた」(戦国時代~近代まで、米・綿作に使用された)ことは習っている。干鰯は高級な肥料としてお金で買うものだった。それと結びつけて「イワシは田畑の肥料として使われていたから『田作』と呼ばれている」と答えられれば大正解だ。

年始におせち料理を食べる際に、ぜひ親子で名前の由来について話してみてほしい。「『年越しそば』には、長く生きられるように」、「『カズノコ』には、たくさん子どもが産まれますように」「『黒豆』には『まめに働く』『まめ(健康)に暮らす』といった願いがある」……。こうした社会常識を教えることは、教養と語彙力を高めることにつながっていく。

■慶應中等部を受験するならフレンチのフルコースを

2016年の慶應義塾中等部では次のような問題が出されている。

<おせち料理には、「昆布巻き=よろこぶ」、「数の子=子どもがたくさん生まれるように」などのように、おめでたいこと・願いごとと結びつけられている品目がたくさん含まれています。そこで、あなたがおせち料理に新たに加えたい一品を挙げ、それと結びつけられるおめでたいこと・願いごとを20字以内で答えなさい>

「新たに加えたい一品」を挙げよ、というちょっとひねった出題である。大手中学受験塾の四谷大塚は次のような優れた解答例を出していた。

(解答例1)ケーキ:景気が良くなるように願うこと。
(解答例2)カブの天ぷら:株価が上がるように願うこと。

この解答案の作成者は株式投資が趣味なのかもしれない。というのは冗談だが、正月にはぜひ、おせちを使って親子で会話を弾ませてほしい。

▼慶應中等部ではフランス料理のマナーを問う

さて、慶應中等部では同じ年、次のような問題も出題されている。

<フランス料理のマナーとして正しくないものを選びなさい。
1 皿を手にとって食べる
2 食事の合間に一息つくときは、フォークとナイフを「ハの字」にして皿の上に置く。
3 食べ終わったら、フォークとナイフをそろえて皿の上に置く>

※写真はイメージです

正解は1。この問題を私の塾の生徒に解かせたら、全員が正解した。でも、“テクニック”で解いた生徒もいたのだ。いわく、「皿を手にとって食べるのは重いからおかしいと思った」とのこと。確かに受験生としては合理的な解き方だが、2や3を知っておいてほしいというのが学校側のメッセージなのだろう。

■慶應中等部「フレンチは肉が先? 魚が先?」

次も、同じ年の慶應中等部の問題(2016年)である。

<フランス料理が出されるときの、決められた順序で正しいものを選びなさい。
1 前菜 → 肉料理 → スープ → 魚料理 → デザート
2 前菜 → スープ → 魚料理 → 肉料理 → デザート
3 スープ→ 前菜  → 肉料理 → 魚料理 → デザート>

正解は2。これも全員正解するかと思ったら、案外そうでもない。生徒に解かせたら、不正解が半分近くもいた。フランス料理のフルコースの順番は教科書には載っていない。「魚料理のほうが消化しやすいから肉料理よりも前に出される」とか「味の濃い肉料理の前に魚料理を先に出す」などと言われている。そこまで知らなくてもフルコースの順番くらいは知っておいてほしいという、「社会常識」を問う問題なのだろう。

「小学生にフレンチのフルコースを食べさせるなど、ありあえない」
「いや、慶應中等部を受験する家庭は高所得で、普通の家庭ではない」

いろいろな意見が出てきそうだが、中学受験を考えているのであれば、子どもにはさまざまな「社会常識」を教えることも必要だということだ。

▼早稲田中は「鍋で米と魚介類や肉類を炊き込むスペイン料理名」を問う
※写真はイメージです

もう中学受験の「社会」は、教科書を読んで記憶すればよい時代ではない。家庭で親から子に伝えられるような身近な食文化やテーブルマナーも問われるようになっているからだ。

ちなみに慶應のライバル、早稲田の付属・系属校で食に関する出題がないか探してみた。すると2017年に早稲田中学がこんな問題を出していた。

<鍋で米と魚介類や肉類を炊き込む、スペインを代表する料理名を選びなさい。
ア)パエリア イ)リゾット ウ)ドリア エ)ピラフ>

フレンチの慶應、パエリアの早稲田――。学校の“カラー”に合っているかどうかはともかく、受験生をもつ親としては、ファミレスやファストフードだけではなく、本格的な「食」体験できる場所に子どもを連れていくことも、親の務めと言えるかもしれない。

(中学受験専門塾ジーニアス代表 松本 亘正)

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