逆転サヨナラ合格へ導く「母の声かけ」5
プレジデントオンライン / 2017年12月8日 9時15分
母の念力フレーズ1:
「あなたは本番に強いから絶対大丈夫」
いよいよ12月に入り、小学6年生の「関ケ原」は目の前です。中学受験に向け、何年もかけて準備して、遊ぶのを我慢して勉強してきたわが子。その結果がもうすぐ出ると思うと、受験する本人よりも母のほうが、興奮してしまったり、不安にかられたりしていることでしょう。中学受験は、子も初めてなら、母も初めてというケースも多いに違いありません。
きっと栄養や健康、時間の管理、プリントの管理・分析など精いっぱいのサポートをしている分、わが子が緊張感のない態度を見せるとついカッとなってしまうことも増えるでしょう。気づけば、「バカ」「産まなきゃよかった」「受験なんかやめちまえ!」「こんなんじゃ、どこにも受からない!」「いくら金かけてると思ってる!?」などと暴言を吐いてしまう母も珍しくありません。
でも、ちょっと待ってください。
まだ12歳の子どもが、曲がりなりにも目標をもって頑張っているのです。学校の授業を6時間目までしっかり受けたあと、残業サラリーマンのようにとっぷり夜が暮れるまで塾で机に向かっているわけです。その後、宿題もこなさないといけないわけです。
▼母が念力で「いける! いける!」と子どもをノセる
母から見ていろいろと足りなくても、そこはぐっと堪えて、「難しいよね」「疲れるよね」「でもあと少しだね」と寄り添い、このような魔法の言葉をかけるのが正しい。
「(成績が今イチだった)模試は模試。あなたは本番に強いから絶対大丈夫」
言うまでもなく、「たった1点の差」で合否が分かれる非情な世界ですから、「いける! いける!」と子どもをノセて、念力で合格をもぎとるぐらいの強い気持ちが母親には必要なのです。
だから、「もっと前からやっていれば……」と過去を悔やんでいる場合ではありません。また、まだわからない未来(合格)を不安に思っても仕方ありません。「今を生きる」ということに親子で集中してみましょう。
そして、タイミングよく気分転換させてあげる。それが、思ってもみなかった「逆転合格」につながることがよくあるのです。
■「逆転合格」させる親は子どもを笑わせるのが上手い
母の念力フレーズ2:
「『藤井4段、参りました』は?」
おすすめは「笑い」の気分転換です。笑いは、その後の集中力を高めます。追い込みのこの時期、子どもかなりストレスがたまりますから、母の仕事は「アメとムチ」のアメの注入です。
私自身、娘と息子の中学受験のサポートをしました。その後、ブログや講演などで多くの受験生の親たちの相談を受けるようになりました。受験直前のピリピリした自宅の空気を少しでも緩めるためのアイデアをお伝えしているのですが、最近は、私考案の「藤井4段、参りましたゲーム」がとても好評でした。
ゲームのやり方はこうです。例えば、学校から帰ってきた子どもに唐突にこう聞くのです。「商店街に新しくできお店、なーんだ?」。すると、子どもは……。
「クリーニング屋?」
「ブッブー!」
「じゃ、コンビニ?」
「ブッブー!」
「は? なんなの? 早く言ってよ」
「『藤井4段、参りました』は?」
「……藤井4段、参りました」
「正解は、『家系ラーメン』でした~! 今度行こうよ」
など、なんでもいいのですが、要は身近な話題のちょっとしたクイズを出し合い、答えがわからず降参するときにこのフレーズを使う、という単純なものです。
「参りました」なんてこんなことでいちいちお母さんに負けを認めるのはまっぴらな子、「わかんないけど、別にいいや(勉強以外のことだし)」と冷めた態度を取りがちな子も、「藤井4段、参りました」といったフレーズはギャグ的な気軽さがあって言いやすいものです。「お母さんが『ドトールコーヒー』で一番好きなメニューはなんでしょう?」といった「そんなの知るか!」といった質問を振ってもいいでしょう。
▼アハハ、ワハハとあえて親子でふざけ合う
逆に、子どもから出題させる形にしてもいいです。例えば、「今日塾にすごく面白いお弁当持ってきた子がいたんだ~」なんて言われると、母親はとっても気になるもの。そこで……。
「え~? なになに? キャラ弁?」
「ブッブー」
「ちょっと早く教えてよ」
「『藤井4段、参りました』は?」
「あー。藤井4段、参りました!」
たわいない内容ですが、子どもと勉強以外の楽しい会話がなくなりがちな「今こそ」おすすめなのです。バカバカしいことを一緒に言ってアハハ、ワハハと笑う。たったそれだけで母にも子どもホッとする時間が訪れます。勉強をパンパンに詰め込むだけでは、肝心なときに力を100%発揮できません。力を出し切るには、「余白の時間」が必要です。ゲームをして「藤井4段、参りましたは?」と親子でふざけあって、力を抜く時間は子どもの心と体と頭をリフレッシュするのに十分な効果があると私は思います。
■子どもは干支(えと)1回り分の人生しか生きていない
母の念力フレーズ3:
「(この本の)主人公の名前ってなんだっけ?」
もうひとつのおすすめは隙間時間の活用です。
やはり子どもですから、ゆるい時間や休み時間は必要です。私が多くの受験生を抱える母親をサポートしてきて感じるのは、デキるお母さんはそうした“修羅場”の期間に、効果的な“えさ”をばらまく策士であることが多いのです。
たとえば、漫画本。学習漫画や『ドラえもん』でもいいのですが、おすすめは、吉野源三郎さんの名著『君たちはどう生きるか』の漫画版(マガジンハウス刊)や、作家あさのあつこさんの小説『バッテリー』などの漫画版(角川コミックス)です。
中学受験頻出の作家の作品で漫画になっているものはけっこうありますし、母から見ても「中身がある」と感じる上質な漫画ってありますよね。
ただ、そういうものを、少しでも受験対策になると見て、親が「読め」と命令しちゃだめで、ただ、リビングの床やダイニングテーブルの上に置いておくのです。子どもがそれを手にとっても、母は何も言わない。見ているんだな~、ぐらいで自然体で過ごし、読み終わったら、「主人公の名前ってなんだっけ?」と雑談風に聞いてみるのです。「この話、ここの場面で盛り上がったよね~」などと一緒に内容の話ができればより楽しいものです。
母の念力フレーズ4:
「お母さんも過去問、解くよ」
要は、お小言を言う暇があったら、どうすれば子どもがリフレッシュするか考えるのです。後方支援部隊として、子どもの「手当て」をするのが任務ですが、たまには前線に立ってみるのも悪くないかもしれません。
「お母さんも過去問、解くよ」
子どもの志望校の「過去問」を解いてみるのです。ここまできたら、親も泥沼につかってみる。正解できるかどうかは関係ありません。共に脳に汗をかくのです。一緒にもがきながら、「こんな問題も解けるようになって、そこをベースに6年間さらに発展的なことを学べるなんてすてきだねえ」と子どもと話してみれば、同志的な存在を得た子どもは意気に感じてくれてもうひと踏ん張りにしてくれるかもしれません。
最後の最後、「合格していく力」は母親が作っていく。塾の力を借りながら、家族全員で合格レベルにまでぎりぎり押し上げる。繰り返しますが、子どもは12歳です。干支(えと)1回り分の人生しか生きていません。“弱者”をいい意味で化かせるために、絶対的な味方である母が最大限バックアップする。それが、中学受験というイベントなのだと私は思います。
■試験日当日は「1点もぎとる薬」で逆転サヨナラ合格
母の念力フレーズ5:
「はい魔法の薬。1点もぎとる薬だよ」
本番の試験当日。朝、子どもは食欲があまりないかもしれませんが、「はい魔法の薬。これを食べると合格するんだよ」「1点もぎとる薬だよ」と言い添えて、整腸剤などを渡すといいかもしれません。かわいいわが家の「お猿さん」には整腸剤でも、頭に効果があるかもしれません。おなかも痛くならないし、一石二鳥。あとは時の運です。
報われれば、もちろんハッピーですが、実際それがよかったかどうかは、何十年もたたなければわかりません。たとえ今回、希望通りでなかったとしても、中学受験の不合格は長い人生を考えたとき、決して悪いことではありません。それは、私だけではなく、私が相談に応じた多くの保護者の皆さんを見て、感じることです。
これだけさまざまな勉強をしてきて、何にもなっていないわけがありません。親はとかく100を求めます。でも、受験に挑戦しなければ0だった力が、20でも30でもわが子にはついたのです。
これまで私がみてきた家族でも、「わが家の受験」をやりきった親子は、合否に関わらず「楽しかった」と言う人が多いです。偏差値なんか関係ありません。残り日数はあとわずか。ぜひ悔いのないようにすごしてください。
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*発売中の『プレジデントFamily2018冬』では、本記事の語り手の鳥居りんこさんによる受験生の子を持つ母親へのアドバイスや「直前1カ月で偏差値10上がった子は何をしたのか?」など試験直前の対策記事を掲載。また、特集「算数が大得意になる」として、「算数の苦手単元のボトルネックが外れた子の秘密」「低中高学年別 わが子の計算力を緊急チェック」などわが子の算数の力がワンランクアップするヒントとなる記事を掲載している。
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(エッセイスト、教育・子育てアドバイザー、受験カウンセラー、介護アドバイザー 鳥居 りんこ 構成=鈴木理絵)
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