橋下徹"これが財務省書き換え問題の真相"

プレジデントオンライン / 2018年3月14日 11時15分

写真=iStock.com/FangXiaNuo

衝撃的な事実が発覚した。森友学園問題で財務省が関係する公文書の書き換えを行っていたと公表したのだ。同学園の小学校設立認可において“当事者”でもあった橋下徹氏が、安倍政権の対応はどこが悪かったかを指摘する。プレジデント社の公式メールマガジン「橋下徹の『問題解決の授業』」(3月13日配信)より、抜粋記事をお届けします――。

■不正の事実が漏れなかった財務省という組織の恐ろしさ

安倍晋三首相は忖度イコール悪という認識で、財務省組織に自分への忖度は一切なかったというスタンスで臨んだ。だからこそ「私や妻が関係していたら総理大臣や国会議員を辞める」という発言まで行った。そのことを受けて、財務省は、安倍政権と森友学園の関係性が疑われることにつながる森友学園への配慮などは一切ないというスタンスで臨むことになった。

他方、僕は森友学園の小学校新設申請を巡る問題について、「大阪府庁の職員は僕に忖度していたはずだ。ただし違法性・不正はない。それでも私学審査に不備があったことは申し訳ない」というスタンスで臨んだ。松井一郎大阪府知事にも、徹底した事実解明をお願いした。

大阪府は、ただちに関係者へのヒアンリングなどの事実調査をやった結果、僕や松井さんの規制緩和の方針を受けて大阪府私学課は森友学園の審査に臨んだという事実を明らかにした。つまり僕に忖度していたわけだ。ただし僕や松井さんが個別の指示をしたことはないことも確認してくれた。その上で私学課の審査の不備・問題点を明らかにし、それに対する対策を講じることとなった。

もし安倍さんが、僕と同じようなスタンスで財務省組織に大号令をかけていたらどうなっていたであろうか。つまりこの森友学園問題が発生した当初に、役所の忖度性質を十分認識した上で、「自分の妻が森友学園の名誉校長に就任したことが、その後の財務省と森友学園の土地取引に少なからず影響したと思う。違法性・不正はないが、この点は申し訳なかった。森友学園との契約経緯がどのようなもので、どこに問題があったのかを徹底的に明らかにする」という方針を示していたらどうなっていたか。

財務省は、会計検査院が報告したような事実を自ら報告したであろう。首相夫人が名誉校長に就任したことが少なからず影響したことも報告したかもしれない。安倍さんがこのような方針を示せば、書類やデータを徹底して廃棄するというよりも、むしろ徹底して書類やデータをかき集めて事実調査をし、どこに問題があったのかを明らかにしたであろう。そして公文書を書き換えることもなく、職員が自殺することもなかったであろう。何よりもこの1年間の無駄な国会というものもなかったであろう。

財務省は単独で書き換えをやったのか。安倍さんや麻生さん、そして政権に相談はなかったのか。相談がなければ、それはそれで相談なくこのようなことをやってしまう財務省は恐ろしい。そして幹部や複数人の職員が関与しながら、誰もストップをかけない。

財務省は軍隊的組織ともよく言われるが、徹底した上意下達。最後の最後まで不正の事実が報道機関にリークされなかった。

加計学園問題のときには、文部科学省からリークがあった。陸上自衛隊日報問題のときには防衛省か自衛隊筋からリークがあった。ところが財務省はある意味鉄壁な情報管理が行われ、違法な組織方針にすら反する者が出てこない。これは逆に恐ろしい。

(略)

安倍政権はなぜ事実をきちんと確認しようという指揮命令をしなかったのか。どう考えても、森友学園を巡る財務省の国会答弁は国民をバカにするような対応だった。あれだけ必死になって書類やデータが廃棄されたという答弁を連発しながら、関係者に確認もしないという。この財務省の対応を正すのは麻生さんと安倍さんだった。財務省はどこまで政権に相談・報告をしていたのか、そして財務省側が出してくる事実を政権はどこまで検証したのか。

会計検査院の報告書にあるような事実を、財務省自らが報告してくれば、森友学園との土地取引が異常な取引だったことは一目瞭然である。そのときに役所に突っ込みを入れるのが政治の役割である。また、あれだけの異常な国会答弁をやっているときに、残っている書類の確認はしなかったのか。システム変更でデータが消去になるというのであれば、なぜそれにストップをかけなかったのか。そもそも土地価格の算出過程をどこまで聞いて、おかしな点をどこまで突っ込んでいたのか。

これら政治の役割を怠り、財務省が暴走することを安倍政権が許してしまったのであれば、それは政権の責任である。組織がここまでのことをしておいて、そのトップたちに何の責任もないということになれば、今後、日本社会においては、民間企業の不祥事についてトップは何の責任も負わなくてよくなるだろう。民間企業の不祥事の多くは、トップの知らないところで、組織の慣行や現場の作為で行われる。しかしそれでもトップは責任を負わされる。政府というものは、民間企業に対して指導や処分をする立場であることを十分に踏まえて、民間企業に求める責任と同じだけの責任を政府は負わなければならない。

そして、安倍さんの「私や私の妻が関係していたなら総理大臣と国会議員を辞める」という2017年2月17日の発言が、財務省が暴走した根本原因だと思う。

(略)

■佐川氏の答弁に合わせた文書書き換えは安倍政権への忖度だ

3月11日(日)時点の情報でここまで書いたが、その後、衝撃的な事実がどんどん明らかになってきた。

麻生太郎財務大臣は、辞任はしない考えを示した。そして責任は佐川宣寿・前国税庁長官(元財務省理財局長)にある、と。佐川氏が辞任するときまで、佐川氏は良い人材だ、適材適所だと言っていたのに。事実調査の大号令をかけなかったのは麻生財務大臣だ。

財務省は、理財局単独の行為であり、安倍政権への忖度はなかったという認識を示した。ここまで政治に対して忖度しまくる組織であるのに、まだこのように言うか。財務省は、佐川氏の国会答弁に合わせる形で文書の書き換えが行われたという認識。佐川氏に責任の全てを押し付ける腹であろう。

しかし、今回、消された事実の中には、佐川氏の答弁に整合させたとは思えないものもたくさんある。特に政治家の名前だ。

安倍さん、麻生さんの名前は、もともと森友学園の概要説明の中で日本会議国会議員懇談会の副会長や特別顧問であることが記されていただけである。安倍さん、麻生さんが財務省に不当な働きかけをしたような事実が記載されていたわけではない。そうであれば、政治家からの不当な働きかけはなかったという佐川氏の答弁に合わせるためだけに、このような形でしか名前が出ていない安倍さん、麻生さんの名前をわざわざ消す必要はない。そのままにしていても本来何も問題はない。

しかし財務省はスーパー忖度して、安倍さん麻生さんと森友学園との関係が一切疑われないように、安倍さん麻生さんの名前を完全消去したのだ。

また、鴻池祥肇参議院議員サイドが2013年8月、森友学園の件で陳情していることが消されている。しかし不当な働きかけをしたわけではない。そうであれば佐川氏の答弁と整合させるために消す必要はない。鴻池氏は、麻生派の有力議員である。ということは麻生さんへの忖度であろう。

これら安倍さん、麻生さん、鴻池さんの名前の消去は、まさに安倍政権への忖度そのものだ。

さらに消された政治家の名前には、中山成彬衆議院議員、杉田水脈衆議院議員、三木圭恵元衆議院議員、上西小百合前衆議院議員もある。しかし、これらの者は森友学園問題で特段何らかのキーパーソンになっているわけではないし、その記載も「学園に来訪した」というどうでもいい事実である。ゆえに佐川氏の答弁に整合させるために、その者たちの名前をわざわざ消す必要もない。

にもかかわらず、なぜあえてその名前を消したのか。それは後に続く安倍さんの奥さんである昭恵さんの来訪記録を消すためである。つまり昭恵さんの来訪記録だけを消して、その他上記4名の来訪記録を残してしまうと、昭恵さんの来訪記録だけが記載されていないことがかえって不審に思われる。ゆえに上記4名の人物の名前とともに昭恵さんの名前を一括で消したのである。すなわち、佐川氏の答弁に整合させるために消したのではない。それは、昭恵さんの名前をとにかく消すために、一括で消したのであり、これは2017年2月17日の「私や私の妻が関係していたなら私は総理大臣と国会議員を辞める」という安倍さんの発言を忖度したにほかならない。

そして書き換え前の文書の2014年4月28日の欄では、森友学園元理事長の籠池泰典氏側が「本年4月25日、安倍昭恵総理夫人を現地に案内し、夫人からは『いい土地ですから、前に進めて下さい。』とのお言葉をいただいた」と発言した、と記載。その上で、「森友学園籠池理事長と夫人が現地の前で写っている写真を提示」とも付け加えられていたが、この記述が削除された。

■スーパー忖度の原因はズバリ安倍さんが「辞める」と言い切ったこと

まさに森友学園問題の核心部分である。

森友学園問題は、首相夫人の昭恵さんが学園と関係が深く、その後名誉校長に就いたことが、土地の大幅値引きに影響したのではないかというものであった。

安倍さんは森友学園問題が浮上した直後の2017年2月に「私や妻が関係していたなら私は総理大臣と国会議員を辞める」と国会で言い切った。この安倍さんの発言を受けて、財務省がスーパー忖度し、この昭恵さんの名前が出てくる籠池氏の発言や昭恵さんの写真提示の記述を削除したとしか考えられない。

佐川氏の森友学園問題発覚当初(2017年2月)の答弁は、「適正な価格で学園に売却した」(2月24日)、「国会議員などの不当な働きかけは一切ない」(同日)、「処分は法令に基づき適正にやっている」(同日)「価格についてこちらから提示したこともないし、先方からいくらで買いたいといった希望もない」(3月15日)というものである。佐川氏の答弁と整合させるために削除したというのであれば、これら答弁に関連する記述を削除すればよく、昭恵さんに関する記述を削除する必要も理由もない。

佐川氏の答弁と整合させるために削除した部分もあるだろうが、安倍さんの発言と整合させるために削除したものもある。にもかかわらず、この期に及んで安倍政権と財務省は、佐川氏の答弁に整合させるためだけに削除が行われたのであり、政権への忖度はない、と言い訳する。佐川氏の答弁に整合させるためだけなら、昭恵さんの名前をわざわざ消す必要はないのだ。

そもそも佐川氏が後に客観的な事実と整合しなくなり、公文書の書き換えまでしなければならなくなるような答弁を、なぜ当初にやったのか。局長クラスの国会答弁で、しかも国会で追及されることが分かっている森友学園問題に関する答弁は、幹部級のメンバーも含めた答弁調整会議で答弁内容や答弁方針を決める。問題が重要であれば、事務次官や大臣、それこそ首相もその答弁調整会議に参加する。このような答弁調整会議の仕組みがあるにもかかわらず、佐川氏たちは何の準備もせずに国会答弁を行い、その佐川氏の間違った答弁に合わせるためだけに公文書の書き換えが行われたというのであろうか。

そんなことはない。財務省という抜群に事務処理能力に長けた組織である。佐川氏が国会答弁をするにあたって、本件土地の取引経緯は十分に確認しているはずである。そして法執行のプロである佐川氏たちであれば、今回の土地取引は、違法不正がなかったにせよ、会計検査院の報告書(2017年11月)に指摘されているように前例のない、異例づくめの特例的な契約であることは十分に認識していたはずである。

前例を究極に重んじる財務省が、本省も関与しながら、なぜ異例・特例の契約を行ったのか。籠池氏が「うるさ型」の人物で、早く土地処分を完了したかったという役所の気分もあったであろう。しかし籠池氏は、財務省との交渉において昭恵さんの名前をちらつかせており、また学園の名誉校長に就任した昭恵さん付きの秘書が土地取引に関して直接財務省に問い合わせるようになった。このような状況下では、財務省の頭に、強い政治力を発揮している安倍政権の顔は全くちらつかなかったと断言することはできないだろう。

財務省は幹部級の答弁調整会議でこのような事実を把握した上で、法令に基づいて適正な取引だったという答弁方針を決定した。財務省は間違ったことは絶対にしないというエリート集団が陥りがちな無謬性を死守するためという側面もあるだろうが、安倍さんの「私や妻が関係していたなら総理大臣と国会議員を辞める」という発言を忖度したことも間違いない。

■安倍さんは「敵」だった財務省は忖度しないと誤解した?

近畿財務局という財務省の地方機関が独断で財務省本省を騙し続けたという場合もある。しかしそれはそれで、近畿財務局が本件土地取引の異常性を認識しているということであり、その取引の異常性は、うるさ型の籠池氏の存在や損害賠償請求されるかもしれないというリスクに加え、昭恵さんの存在も起因したことは否定できない。本省が知らずとも、近畿財務局という財務省組織が、昭恵さんの存在を意識して前例のない異例の取引をやったことは否定できない。

仮に佐川氏が答弁調整会議において詳細な事実を把握しないまま国会答弁を行ったというのであれば、それ自体財務省の失態でもあるが、もしそうであれば、何も分からないまま、なぜあのような言い切りの答弁を行ったのか。そこに安倍さんの発言が少なからず影響したことは間違いない。

ただし安倍さんの心境もよく分かる。消費税増税問題では、安倍さんは財務省と闘っていた。財務省は内閣が倒れようがそんなことはおかまいなしに自分たちの主張を押し通す。財務省が、増税しても景気に影響がないと安倍さんに間違った説明をしたり、増税が必要という世論作りを必死にやっていたりしたことは周知の事実だ。

政治家は役所と闘う場面がある。役所も政治家の寝首を掻いてくることがある。これが政治の現実だ。だから安倍さんとしては、財務省が俺のことを忖度するわけがない、と思っているのかもしれない。しかし役所は政治的に弱い者とは闘うが、政治的に強い者には忖度する。安倍政権発足時には、最強の官庁と言われる財務省はいつもの通り政権と対峙する意気込みだったのであろうが、内閣人事局も動き出し、数度の国政選挙での圧勝という結果によって安倍政権は財務省が忖度する存在に変わったことも事実だ。

(略)

森友学園問題が発覚したときに、昭恵さんが学園と関係が深く、名誉校長にも就任していたということであれば、安倍さんや安倍政権は本件土地取引の詳細について事実調査をすべきだった。財務省が組織防衛も含めて適正な取引だったと言い続けても、そこに介入して事実確認していくのが政治の役割である。もちろん自分たちでできないのであれば、こういうときこそ第三者を活用し、本件土地取引の異常性を認識すべきであった。

何よりも財務省のあの「適正な取引だった」「書類やデータは全て廃棄した」「追加の確認をするつもりはない」という国民をバカにしたような答弁を追認し、その答弁を改めさせなかった安倍政権の責任は重い。

本来であれば、財務省は、本件土地取引の異常性・特例性や、籠池氏が昭恵さんの名前をちらつかせていたことなどを安倍政権にきちんと報告すべきであった。その報告があれば、安倍さんもあのような強気一辺倒の国会答弁にはなからなかっただろう。財務省が安倍さんにきちんと報告できなかったことも、安倍さんの「私や私の妻が関係していたなら総理大臣と国会議員を辞める」という発言が影響していたことは間違いない。

(略)

安倍さんは、昭恵さんの森友学園への関わりや名誉校長就任の失敗を素直に認め、違法性・不正はなくても財務省の忖度があったことを率直に認めるべきである。さらに自身の「私や私の妻が関係していたなら総理大臣と国会議員を辞める」という発言が、この前代未聞の公文書書き換え事件を生んでしまったことも素直に認め、謝罪反省すべきである。麻生大臣のその後の反省のかけらも見えない不遜な言動は直ちに止めさせ、安倍さんの大号令の下、強力な権限を付与した第三者に徹底した調査を行わせるべきである。決定的な証拠が出る最後の最後まで、国会と国民を騙し続けた財務省と、これまで財務省の言い分を鵜呑みにし、調査も何もやっていない今の段階で政権への忖度はなかったと言い切る麻生大臣に、調査する資格はない。

(ここまで約6600字、メールマガジン全文は約2万4000字です)

※本稿は、公式メールマガジン《橋下徹の「問題解決の授業」》vol.95(3月13日配信)を一部抜粋し、事態の推移に合わせ修正および加筆したものです。もっと読みたい方は、メールマガジンで! 今号は《【緊急増大号! 公文書書き換え問題】森友再燃! なぜ財務省は「スーパー忖度」に踏み込んだか?》特集です!!

(前大阪市長・元大阪府知事 橋下 徹 写真=iStock.com)

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