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橋下徹「金正恩はトランプとウマが合う」

プレジデントオンライン / 2018年4月4日 12時15分

写真=iStock.com/narvikk

北朝鮮情勢が急激に動いた。平昌オリンピックを境に南北対話が始まり、南北首脳会談、そして米朝首脳会談が実現する運びだ。北朝鮮の指導者・金正恩氏はなぜ、強硬姿勢を取り下げたのか。プレジデント社の公式メールマガジン「橋下徹の『問題解決の授業』」(4月3日配信)より、抜粋記事をお届けします――。

■金正恩が貫いた「国際政治を動かすには核兵器が必要だ」という原則

最近の激しすぎる北朝鮮情勢の動きを見ると、僕はやっぱり政治家に向いていないな~と感じるとともに、学者や専門家などの自称インテリたちの言うことは国際政治における高度な政治判断をするにあたって全くあてにならないし、やっぱり学者や専門家などではこの激しすぎる国際情勢の見通しを的確に予測することはできないな、ということを痛切に感じたね。

(略)

拉致問題は許せないし、北朝鮮国民を苦しめている北朝鮮の国内政治も放置するわけにはいかない。ゆえに金正恩を変に褒めるわけにはいかないし、彼が非人道的であることは確かだけど、日本の多くの自称インテリが罵っていたようなバカでも、幼稚でもないことも確かだろう。色々戦略的に考えながら、しっかりと戦術を実践している。

まず日本がこれから北朝鮮、金正恩と対峙するにあたって、肝に銘じなければならないことは、金正恩を、バカだ、幼稚だと見下さないことだ。少なくとも金正恩は、彼のことをバカにしていた日本の自称インテリよりもはるかに頭がいい。

金正恩は、国際政治を大きく動かすためには核兵器が必要だという原則を貫いた。

安全で安心な日本国内においては、誠意をもって話せば相手は必ず理解してくれるという大前提で、あらゆることを考える。ところが、国際社会はそんなに甘い世界じゃない。確かに、日本は素晴らしい。日本国民の教育レベルや道徳レベルは異常に高い。でも世界各国が、皆日本と同じレベルだと勝手に決めつけるのは非常に危険だ。

(略)

僕は、日本をお花畑だとバカにするつもりはない。素晴らしい国だと心底誇りに思っている。でも日本は、例えるなら、台風で海が大しけになっているときの港の内なんだよね。港を一歩外に出れば、港の内での態度振る舞い、考えは一切通用しない。

(略)

■もし北朝鮮が核武装していなかったらどうなったか?

現在、北朝鮮ほどの小国が、アメリカや中国などを動かし始めている。オバマ大統領のときは、「戦略的忍耐」というフレーズで、アメリカは結局何もやらなかった。北朝鮮を無視し続けた。ところが、北朝鮮が開発してきた核兵器と、アメリカ本土を狙うことのできる大陸間弾道ミサイル(ICBM)の完成がいよいよ間近に迫ってきた現在においては、アメリカは北朝鮮を無視するわけにいかず、動かざるを得なくなった。アメリカは徹底的な経済制裁を行いながらも、最終的には米朝首脳会談を模索するようになった。

もし北朝鮮が核兵器やICBMを保有する可能性が全く非現実的なものであれば、アメリカはここまで動く必要もなかったし、場合によっては一気に金正恩の命を奪いに行ったかもしれない。アメリカは、価値観を同じくする西側同盟諸国にとっては力強い味方ではあるけど、アメリカと価値観を共有しない国、敵対する国にとっては大変な脅威である。アメリカは、敵対する国の体制変換を、軍事力で実行することがあるからね。

(略)

こんな状況の中で国際社会を動かしていくためには、相手国に対して危機感を募らせ、動かざるを得ないように仕向けるしかない。こちらに力がなければ国際社会は相手にしてくれない。金正恩はそのことを十分過ぎるほど理解している。

ゆえに金正恩は、大国が動くほどの危機感の醸成に徹底的にこだわり、核兵器の開発にこだわり続けた。

(略)

■トランプ米大統領による「本気の圧力」が状況を動かした

金正恩はケンカの王道をよく理解している。自分たちの国の力を冷静に把握し、それに合わせての行動をとっている。大国を動かすためには自分たちがまずは力を持つ必要があること、いったんは勢力均衡を作り出す必要があることから、核兵器や大陸間弾道ミサイルの開発に力を入れ、ギリギリのところまでアメリカとチキンレースの勝負に挑んだ。最初から味方になってくれそうな強い国をあてにすることなく、自らの単独の力を蓄えた。日本がアメリカの力を笠に着るようなことはせず、中国には最初から媚びるようなことはしなかった。しかしこれ以上進むと、自分たちは負けると思ったのだろう、いったんチキンレースからは降り、米朝会談を仕掛けてきた。その前に、中朝首脳会談を実現した。

(略)

僕は金正恩がこのような態度を取る可能性を少なく見積もっていた。金正恩は最後は暴発するリスクが高いと思っていた。でも、金正恩は、僕が考えるほどそんなバカな男じゃなかった。きちんと降りるべきところでは降りる判断ができる思考回路を持っていた。

そのような意味では、今回、死に物狂いで北朝鮮に圧力をかけ、これまでアメリカ大統領が声を上げても中国やロシアその他の世界各国が本気で腰をあげなかった北朝鮮への経済制裁について、中国やロシア、その他世界各国を動かしたトランプのおっちゃんはたいしたものだ。中国にもバンバン経済制裁をかけていく、ある意味むちゃくちゃなこんなアメリカ大統領は、これまでいなかった。歴代米大統領や世界の国家指導者、そして政治家たちは皆、国際協調という呪縛にかかり、世界で優等生に見られることに価値を置いていた。そのような政治家には、事態を大きく動かすことはできない。きれいごとを述べるだけの優等生には、国際社会を動かせない。まさにトランプのおっちゃんだからこそ、中国やロシア、そして世界が重い腰を上げたのだ。政治家は道徳家ではない。事態を動かすことこそが政治家の使命だ。

逆に、トランプのおっちゃんを、そして中国やロシア、それに世界各国をそこまで必死にさせた金正恩の核兵器・ICBM開発戦略も、事態を動かす原因となった。

■トランプと金正恩は意気投合する!?

(略)

負ける戦はしない。力がないなら、いったん一呼吸を置いて状況の転換を待つ。

このことを僕は日本政府に対して、これまで言い続けてきたけど、金正恩はそれをきっちりとやってきた。本当に核兵器を放棄するような方針転換したのかどうか、そんなことは金正恩の腹の中の話なので誰にも分からない。普通に考えれば、そうは簡単に核兵器を放棄するわけがない。金正恩こそ、小国にとって核兵器がいかに重要かを一番認識している者だからね。しかしあれだけトランプのおっちゃんと激しくののしり合っていたのに、米朝会談を模索するということは、一呼吸置きにきたことだけは間違いない。

(略)

非民主国の軍部を抑えるのは本当に大変なことだ。あれだけアメリカに強気で迫っておきながら、米朝会談を模索できるということは、金正恩は軍部や労働党などをうまくマネジメントしているのだろう。粛清という恐怖によってマネジメントしているところもあるだろうが、それも含めて、自分が暗殺されないように何とか切り盛りしている。

そしてあれだけ激しくやり合ったトランプと金正恩。こういう関係に陥った者が話し合いの場に就くと案外意気投合するというのもケンカにおける定石だ。

世界の中で最強のアメリカ相手にあそこまでやってきた金正恩を、トランプのおっちゃんは評価すると思う。トランプはそういう人間だと思う。学者や自称インテリとは真逆の、泥臭い人間。さらに金正恩は、先日の習近平中国国家主席との会談の様子を見る限り、完全にジジ殺しだ。歳上から好かれるタイプだろう。

ということで、トランプ、習近平、金正恩は、肌合いはイイと思う。もちろんロシアのプーチン大統領も。各政府組織の担当は激しくぶつかり合うと思うが、トップの肌合いがイイことで、大戦は回避できる。

もちろん、肌合いがイイことと、金正恩がトランプのおっちゃんの言うことを全て聞くこととは別であり、核・ミサイル交渉は難航するであろう。しかしトップ同士の肌合いがイイことは、国際社会を安定させるためには非常に大切な要素だ。

付け加えれば、このメンバーには、オバマ大統領は全く肌が合わない。それは皆さん、よく分かりますよね(笑)

(略)

(ここまでリードを除き約3200字、メルマガ全文は約1万4000字です)

※本稿は、公式メールマガジン《橋下徹の「問題解決の授業」》vol.98(4月3日配信)を一部抜粋し、修正したものです。もっと読みたい方はメールマガジンで! 今号は《【激動・北朝鮮情勢】米朝会談実現へ:事態を動かすセオリー通り! 金正恩の戦略的思考は見事だ》特集です!!

(前大阪市長・元大阪府知事 橋下 徹 写真=iStock.com)

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