やればできる人が最後までやらない理由

プレジデントオンライン / 2018年5月4日 11時15分

写真=iStock.com/imtmphoto

■「できる状況」でも、できない人は「できない」

仕事は優れているのに、締め切りにはルーズ。彼ら、彼女らは、どうして「できるのに、最後までやらない」のでしょうか。結論を言うと、他人から見たら「できるのにやらない」でも、その人たちにとっては「できないものはできない」のです。

まず考えたいのが、その人たちが抱える「困難」についてです。

人の抱える困難には、目に見える〈リアル・ディフィカリティ(現実的な困難)〉と、可視化されない〈エモーショナル・ディフィカリティ(感情的な困難)〉の2種類があります。「やればできる人」の不思議について考えるには、困難には2種類があること、そして両者の違いを認識することが大切です。

まず〈リアル・ディフィカリティ〉について、考えてみましょう。例えば仕事の場面で言えば、資金のショート、時間不足、資料の不備など。これらは現実的〈リアル〉に目に見える困難と言えます。反対に言えば、「経済的な余裕もある」「十分な時間もある」「資料も豊富」という状況は、困難がないように見えます。しかし、「できる状況」が整っていても、できない人は「できない」のです。なぜなら、その人たちは、感情の〈エモーショナル〉な困難を抱えているから。抱えている心理的な困難はそれぞれの人に多様で、他者からは見えないもの。周りにいる人はまず、その人が〈エモーショナル・ディフィカリティ〉を抱えているという事実を認識しなければなりません。

現実の困難と心の困難をわけられないで、手前勝手に考えている人があまりにも多い。相手に〈リアル・ディフィカリティ〉があるにもかかわらず、〈エモーショナル〉の問題にする人もいます。理屈を伴わない根性論を押し付ける、カルト集団を思い浮かべればわかりやすいでしょう。仕事で言えば、低賃金、過酷な環境のもと、精神を追い詰めるブラック企業、ブラック上司のようなものです。対して相手が〈エモーショナル・ディフィカリティ〉を抱えているのに、目に見える業務の〈リアル〉の環境を整えるだけの人もたくさんいます。これは、ガソリンがなくて動かない車のエンジンを必死に修理するのと同じなのです。この勘違いから正さないといけません。

■「公演が突然キャンセル」への反応でわかる人の成熟度

では、心理的な問題を解決すれば、「できるのにやらない人」は「すぐできる人」になるのか。それは理論の上では正しい。しかしながら、不登校や、ニートの存在から見ても、心の内側の動機づけの問題は簡単には解決できません。カウンセリングや言葉を尽くすことはできますが、どんな問題も解決できる「魔法の杖」は、存在しないのです。

ある天才指揮者は、公演を突然キャンセルしました。それでも皆がその指揮する音楽に触れたいと思い、「凡人と同じものを求めてはいけない」と、天才を受け入れました。相手に理想を求める人ほど、情緒的に未成熟です。相手に理想を押し付けて「裏切られた」と思う前に、自らが、他者の抱えるいろいろな種類の困難を受け入れられるように努力したほうが心は安定します。困難の色は一色ではありません。

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加藤諦三(かとう・たいぞう)
早稲田大学名誉教授
ハーバード大学ライシャワー研究所客員研究員。『人生を後悔することになる人・ならない人』など著書多数。

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(早稲田大学名誉教授 加藤 諦三 構成=伊藤達也 写真=iStock.com)

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